メディアグランプリ

「服選び」は自分と向き合うことである


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:深谷百合子(ライティング・ゼミNEO)
 
 
少し前、衣替えをした。衣装ケース2箱にパンパンに入っていた夏服を、ひとつひとつ取り出して眺めてみる。胸元や裾にフリルをあしらったブラウス、小さな花柄のシャツ、迷彩柄のTシャツ……。タグがついたまま、一度も着たことのない服もある。そのひとつひとつは、過去の自分が選んできたものだ。なんでこの服が欲しいと思ったんだろう? 今まであまり深く考えたことはなかったけれど、それぞれの服を手に取った時の気持ちを思い返していた。それらのほとんどは、「着心地がよさそう」とか「洗濯がしやすそう」というような機能的な面から選んだものではなかった。色が好きとか、デザインが好きという理由で、ほとんど衝動買いに近い形で買ったものだった。
 
そうした服たちを並べてみると、私が人からどんな風に見られたかったのかが見えてくる。私は「可愛らしく」見られたかったのだ。フリルをあしらったものや、リボンのついたもの、花柄がちりばめられたものなどがそうだ。そうかと思えば、「カッコよく」見られたい願望も持っていたようだ。迷彩柄のTシャツとか、まっ黒のシャツとかがそうだ。統一感はないのだけれど、ただ一つだけ言えることは、「可愛らしい」のも「カッコイイ」のも、どちらも「自分にはないもの」だったということだ。自分にはないものだから、それを服で補おうとしていたのかもしれない。けれども、いざ着てみると似合わない。自分は気に入っているのだけど、何となくしっくりこないのだ。年齢を重ね、体型も変わるとますます似合わなくなってくる。そうして段々と出番を失った服たちが、大量にタンスの肥やしとなっていた。服は溢れかえるほどあるのに、いざという時に着る服がなかった。
 
そういうわけで、この夏に着る服をプロの力を借りて選ぶことにした。パーソナルスタイリングというサービスだ。パーソナルスタイリングというと、自分に似合う色を診断してくれたり、骨格からどんなラインの洋服が似合うのかを診断してくれたりするサービスを思い浮かべる人が多いかもしれない。でも、私が受けたのは自分の「外見」から判断するものではなかった。この先どんな自分で在りたいのか? どんな自分が、どんな人たちと、どんな場面にいるのか。それを徹底的に考える。ただ可愛く見られたいとか、カッコイイ女に見られたいという次元の話ではないのだ。私は思いつくキーワードを書き出しながら、どんな自分でありたいのかをまとめていった。
 
私は、「面白いと思ったことを自分の言葉で表現する人でいたい。そして、黒子的な役割ではなく、自分が表舞台に立っていたい」という本心を包み隠さずパーソナルスタイリストに伝えた。そして同行ショッピングの日を迎えた。
 
ショッピングの日、パーソナルスタイリストが提案してくれた服は、どれも自分では手にしたこともないような服だった。
 
「まずこれね」と言って手渡されたのは、鮮やかなブルーのワンピースだった。ブルーは、子どもの頃に親から「顔映りが悪い」と言われていたから、自分には似合わないと思っていた。半信半疑で試着をしてみると、これが意外と似合っていた。子どもの頃は病弱で顔色が悪かったから似合わなかったのかもしれないが、子どもの頃に言われたことを何十年も疑いもせずにいたなんて、なんだか滑稽だ。
 
「これはね、一番のオススメなの」と言って手渡されたのは、紫や赤、茶色などの様々な色の柄が入ったワンピースだった。つるんとした手触りで体になじみ、女性の大人らしい雰囲気のデザインだった。華やかな中にも大人の落ち着きのある雰囲気だったのだが、私は何となく心がざわざわしていた。「もし予算の都合で、候補の服の中でどれかを諦めるとしたら、これかな」という気持ちがしていた。「これ着てみたい!」というワクワクするような気持ちが湧かなかったのだ。
 
でも、「一番のオススメと言われたものをやめるのもどうか」と思い、買うことにして家に帰った。そして、家でもう一度着てみた。鏡の中に映った自分は、その服がとても似合っていた。「大人の女性の女っぽさ」を醸し出すワンピースをじっと見ていて、ふと気づいた。きっとこれが本当の「私らしさ」なのに、今までは自分では認めたくなかったのだ。だから、その対極にあるような「可愛らしさ」とか「かっこよさ」を求めていたのかもしれない。このワンピースを試着した時に感じた、ざわざわした気持ちは、今までの自分のなりたかったイメージから変わることへの恐れだったのかもしれないな。
 
「人は変わりたいと思っていても、今までの慣れ親しんだ状況からなかなか抜け出せないというけれど、その変化に対する恐れや違和感を乗り越えたら、新しい自分になれるよ」
鏡に映っているワンピース姿の「少し先の未来の私」が、そう語りかけてきた。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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