メディアグランプリ

カラフルなバルーンに誘われて、衝動買いしてしまった高額商品についての話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:岡部 みほ(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「オッケーでした! 契約します!!」
OKサインを掲げた私を見て、イケメンのお兄さんは少し驚いた表情で、でも嬉しそうな顔で私を迎えてくれた。
 
その日は、母がコーヒードリッパーが欲しいというので、某大型ショッピングモールに出かけた。
諸々の用事を済ませ、さて目当てのものを探しに行こう! という時に、子どもたちが目を輝かせ、あれ欲しい!!! とアピールを始めた。
 
ショッピングモールといえばかなりの頻度で目にする、カラフルな細長いバルーン。
そのバルーンは、剣や銃、犬やくまなど、子どもたちの興味をそそる形に変身し、手招きをしている。
そして背後には、セールス臭漂う若くてイケメンのお兄さんたち。
 
例にもれず子どもたちがあれ欲しい、という。
いつもなら、ちょっとの嘘と笑顔でお兄さんをかわし、風船だけもらってくる。
今回も、風船で剣を作ってもらっている間だけ、と話を聞いていた。
すると、お兄さんの口から、ずっと気になっていたワードが飛び出した。
 
「水道水を入れて使う浄水器型のウォーターサーバーです」
 
浄水器型?!
 
ウォーターサーバー、とだけ聞けば聞き流していたかもしれない。
というのも、10年ほど前ウォーターサーバーを使っていたことがあったのだが、水の入ったタンクが重くて取り替えが大変だったこと、ゴミの処理もかさばって大変だったこと、そして水の受け取りの手間があったことで、早々に解約していたのだ。
しかし『浄水器』というワードが出てきたことで、私のスイッチが入った。
 
そう、私は、ずっと浄水器が欲しかった。
朝一杯の、身体を目覚めさせるための、水道水が、どうしても不味くて、息を止めて飲んでいた。
かと言ってペットボトルの水を買うというのも、ウォーターサーバーを使っていた時と同じような理由で、却下になっていた。
 
お兄さんの説明は、私の購買意欲をくすぐった。
フィルターで水を濾過するタイプだから水道水でOK!
冷たい水からお湯、熱湯、そして常温水まで出る!
フィルターは半年にいっぺん自動的に送られてくる!
 
説明を熱心に聞き始めた私の横で、水好きの息子はもう3度目の水のおかわりをしている。
 
私の心の中では、もう、この、フィルターで水道水を濾過してくれて、朝一杯の水を息をしながら飲ませてくれる、このサーバー君を家に迎え入れることがほとんど決まっていた。
 
契約しちゃおうかな〜! と思ったその時、横で話を聞いていた母から、冷静な一言が飛んでくる。
「Mくん(旦那)に確認したほうがいいんじゃない?」
 
そうだ。それもそうだ。
いくら、1日あたりの使用料が缶ジュース一本より安いとしても、5年間払えば大きな出費だ。
説得しなければ。
 
水を何度もお代わりし、風船でも遊び飽きた16キロの息子が、私の腕の中で眠ったことを、腕の痺れが知らせた。
 
カフェで一休みしながら電話をかけることに。
仕事中の旦那に、無事電話はつながったものの(今思えば仕事中に、相当面倒くさい電話だっただろう)案の定難色を示された。
そう、私の旦那は、「ここの地区の水道水は美味しいよね!」という、水道水愛好家だったのだ。
旦那にしてみれば、蛇口をひねれば飲める水が出てくるのに、わざわざお金出す必要ある? それも10万以上? という感覚だ。
まぁそれはそれで、当然の考えである。
 
あくまで冷静に、私自身が良い! と思った点を淡々と伝えた。大抵いつもここでアツくなって、話し合いが終了になる。本気だからこそ、冷静に、プレゼンした。
 
一度電話を切り、少し調べてみるとのことだった。
その間、アイスが溶け切ったイチゴのパフェを一口食べた。
 
「いいんでない?」
案外すぐに折り返された電話で彼はそう言った。
「カップラーメンすぐ食べれそうだし」
完全に納得はいってなさそうだったが、そう言って、購入の許可が下された。
 
私の、冷静な熱意が伝わったのだろうか?
あんまりにあっさりと許可が下ったからか、今度は私が少し不安になってくる。
こんな高額な商品、衝動買いしてもいいものだろうか……
 
 
 
でもこの買い物は、衝動買いなのだろうか?
 
 
 
今まで、水道水を美味しく飲むための、あらゆる手段はやってきたつもりだ。
煮沸。冷やす。レモン水。汲み置き。
どれも長続きはしなかった。
ペットボトルの水、浄水器、ウォーターサーバー……いろんな可能性を検討したけど、これだ! というものに出会えなかった。
結果、息を止めて水道水を飲む方法で落ち着いていた。
 
ここまで、十分検討していたのではないか?
金額的なところの比較はあるかもしれないが、これだ! と思う方法に出会えた、今この時が買い時なんじゃないだろうか?
これは衝動買いとは言わないのではないか?
 
 
こうして、コーヒードリッパーを買おうとしたら、10万越えのウォーターサーバーを購入してしまったのであった。
ちなみに大きな決断をして疲れ果て、ドリッパーは買わずに帰宅となりました(母よ、ごめん……)。
 
 
 
数週間後、美味しいお水をいつでも提供してくれる相棒が我が家へやってきた。
サーバーくんは、予想通り家族の人気者になった。
難色を示していた旦那は、あると飲んじゃうよね〜と何度も水をお代わりして飲み、コーヒーメーカーの水もそちらから汲み、コーヒーの味も変わった! と、なかなかハマっている様子である。熱湯も出るので、普段買わないカップラーメンもスタンバイして、夜鳴きそばを楽しみにしている様子である(なんだかんだで一番楽しんでる!?)。
息子や娘は、ドリンクバーのように喜んで楽しみながら水を飲んでいる。ちなみに初日は夜に水を飲み過ぎた息子が、ベッドで大洪水を起こし、旦那に「水飲みすぎだよ……」と呆れられていたけど。
そして私は、朝、息をしながら水を飲める喜びを噛みしめている。
長い間悩んでいた問題が解決されて、堰き止められていた川が、流れ出したような感覚である。
 
衝動買いのようで衝動買いではない高額な買い物は、家族の生活と身体に潤いを与えてくれた。
A4用紙一枚の空間にたたずむ相棒よ、今日も美味しい水をよろしくね。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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