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「女として欠陥品」というコンプレックスと向き合ってみた結果、出会えた素晴らしい世界


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中村まりこ(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
人はだれでもコンプレックスがあるものだと思う。
それを乗り越えたり、克服したり、受け入れたりしながら、
前に進んでいくのだろう。
 
わたしは中学生の頃から持ち続けているコンプレックスがある。
どうやったらその思いが癒せるのか。
それは溶けない永久凍土の氷の杭のごとく、わたしの心に突き刺さり続けていた。
 
そのコンプレックスは、
「女として自分は欠陥品である」というものだ。
 
誰かから言われたわけではない。
ただ、自分が勝手にそう思い込んでいるだけだともわかっている。
もしかしたら、時代のせいもあるかもしれない。
いや、それも時代のせいにしたいと思いたいだけ。
 
「そんなの全然気にする必要ないよ」と何度も言われているし、
自分でもそうなのだろうと頭では理解しようとしているが、
心は全く受け入れられなかった。
 
女として自分が欠陥品だと思い込んでしまったのは、
中学2年生のときにある病気にかかったことだった。いわゆる膠原病の一種だ。
その病気は突然発症し、何が原因かもわからずだった。
 
その時に担当医から言われた言葉が、
わたしのコンプレックスの始まりだったことには間違いない。
 
「流産しやすい」
「妊娠したときに、合併症をおこしやすい」
 
中学生とはいえ、月経もあり、女性として生殖機能は働いていたので、
すぐに妊娠の可能性はないにしても、0%ではないから伝えてくれたのだろう。
 
この時の「流産しやすいのか」と正直愕然とした。
 
自分も両親と同じようにいつかは誰かと結婚をし、子供を産み育てるだろうと。
勝手に思い描いていた未来をつかむことが、わたしにとっては難しいことのように感じてしまった。
 
とはいえ、まだこのときは焦りなどもなく、若干、心にしこりが残る程度で、
まずは病気を治すために処方された薬や漢方を飲みながら定期検査を受けていた。
 
そんなわたしに追い打ちをかけコンプレックスを確固たるものにしたのは、
大学生の頃に婦人科にかかったときだった。
もともと月経症状が重く、生活に支障をきたすことが多かった。
それが20歳をこえても続くのはおかしいと、母に連れて行かれたのだ。
 
案の定、婦人科の病があった。
わたしの子宮は内膜症患っており、卵巣はチョコレート嚢胞になっていて、
挙句の果てに、卵巣と子宮が癒着しているという状態だった。
 
その時に婦人科の担当医に言われたのが、
「妊娠がしづらい身体」ということだった。
 
さすがに涙がとまらなかった。
 
自分が女という性を受けて、生き物として生まれ、
役割・使命でもあると思っていた子を産むということそのものが、
できないかもしれない。
 
「妊娠がしづらい」うえに、「流産しやすい」なんて。
 
そんな女として使えない(と思っていた)わたしを、
誰が必要とし愛してくれるのだろう。
 
「わたしは女として欠陥品だ」
 
無意識的に誰から言われたわけでもなく、
わたしは自分をそう定義づけていた。
そこから、子供ができにくいわたしなんて、愛される資格はないと
恋愛も一歩引くようになってしまった。
 
自分を肯定するかのように仕事に打ち込むようになり、
「お前、男みたいだな」なんて言われるほど、仕事をしていた。
女として欠陥品なのだから、男性並みに頑張らないとといけないと思ったのだ。
 
友人や周りの同僚が結婚をしていく中で、
ひたすら働いた。
多少の色恋もあったが、長続きはしない。
わたしは怖かったのだ。
単純に子供が産めないかもしれないということで捨てられるのが。
勝手に捨てられることを前提としていたのだから、うまくいくはずもない。
 
少しすると周りに子供が生まれ始めた。
自分は産めない欠陥品だと、
まざまざと突きつけられているような、
まるで断頭台に登っているかのような心地である。
 
いつしか、友人たちのSNSは子供のことばかりになっていった。
自分にはない未来だと、どこかで悲観し冷めた心で見ている自分がいた。
そして、子供を授かっている友人を羨ましくも妬ましく思っていた。
 
自然と一人でいる時間が増えた。
単純に周りが子育てもあり、
独り身と遊ぶ時間がなくなってきていたというのもある。
仕事も行き詰まっていた頃だったので、
もう、お先真っ暗というどん底感の中にいた。
 
この先ずっと一人だったら?
病気になったら?
いつまで仕事をつづけたらいいのか?
そんな負の無限ループの中で、溺れかけながら。
 
そんな時だった。
起業をした友人に、友人のコンサルをしているという方を紹介いただいた。
宿命をみたりするものの、とことん自分と向き合うことを大切にしている方だった。
 
そして、その出会いは衝撃をわたしにもたらしたのだ。
その方はわたしよりも女として壮絶だった。
 
流産の経験は1回ではなく子供は産めなかった。
無職で住所不定になったこともある。
離婚もした。
いまは起業をして起業家や経営者のコンサルをしていて、
たくさんの人と出会い、
出会った人たちが全員愛おしくて、
子供がいなくても今がとても幸せだと言う。
 
自分の中の概念が崩れていく瞬間だった。
女として子供を産まない選択もあるということを
この時はじめて気がついたのだ。
そう、「女は子供を産まなくてはならない」と思い込んでいたのだ。
 
自分で自分を決めつけてがんじがらめにしていただけだった。
「産めない欠陥品の女」と勝手に悲劇を演じていただけだったと思わされた。
わたしより大変な経験をしている人は世の中にたくさんいるし、
むしろ、子宮もある、卵巣もある、月経もまだある、
女として何か問題でも?と言われんばかりだ。
 
「子を産む」ということに対して、
私は何もアクションをしていないではないか。
そもそも、このご時世、子供は産まなくても、育ての親にはなれるかもしれない。
女として、産まなくても母親にはなれる可能性もある。
そもそも人間を産まなくても、
パートナーと会社を起こすということでも、
子を産むような体感になり、愛を注げるのではないか。
 
選択肢はいくらでも自分の目の前に転がっている。
そう気づいたとき、目の前がぱぁっと開けたように感じたあの瞬間は、
ずっと忘れないだろう。
 
そして今、私は、この天狼院のライティング・ゼミを受けて、
「書く」ということに出会った。
今まで、「書く」ことは苦手だと思っていたのに、
思いの外、「書く」ということがとても愉しい。
 
この「書く」という行為は、
「産む」という感覚に似ている気がするのだ。
そして、産み出した文章は「育てる」こともできるし、発信することもできる。
友人たちがSNSで子供をUPするように、私は「文章」をUPできるのだ。
自分が産み出した「子」として記事や文章を出すのだ。
 
もうこうなってしまったからには、
私はこの先も「子を産む」ということは選択しないだろう。
 
「記事を世に出す」、「文章で作品を産み出す」ことを知ってしまったから。
 
子と向き合うように、
自分の文章や、自分の内面と対話をし、
見えぬ読み手の期待や読んだあとの未来をを推察しながら、
ときには人の作品に感動したり、僻んだり。
「書く」という「産み」、「育て」の世界。
 
子供が産めなくても、女として欠陥品であっても、「産み育てる」ことはできるのだ。
 
わたしは、これからもいろんなものを産んでいこうと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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