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メディアグランプリ

ぶらり破天荒旅のススメ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:村田あゆみ(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
ホテルの旅は心地よい。
きれいな部屋に美味しい食事、プールやラウンジで優雅な時間を過ごす。ホテルスタッフの丁寧な対応にちょっとセレブ気分を味わうこともできる。
ホテルステイはいささか高い宿泊料と引き換えに、安心と快適さを保障してくれる。それは安心という名の普遍性、不変性とも言いかえられるだろう。
 
20代の私は旅行と言えばホテルに泊まるものだと思っていた。
10代までの家族旅行では親の会社の保養所にしか泊まったことがなく、それ以外の旅行と言えば修学旅行か合宿しか知らなかった私にとって、社会人になっても旅行と言えばツアー旅行であり、予定の組まれた研修旅行だったから、ホテルに泊まることはイコール大人の証しだったのだ。
チェックインをすると荷物はカートに載せられてベルスタッフが運んでくれる。コンパクトながらスプリングの効いたベッドとピンと張られたシーツは、それだけで快適な眠りを予想させてくれる。電話一本で必要なものも届けてもらえる。時に大奮発してクラブフロアに宿泊すれば、ラウンジでアフタヌーンティやカクテルタイムを満喫することだってできる。
 
大人って、ホテルって、かっこいい!!
こうして私はホテルの魅力にどっぷりとはまっていったのだ。
 
ところが、ところがである。
転職して出会った同僚がめっぽう破天荒な人だった。数カ月に数日ある午前上がりの勤務の日、とりわけそれが金曜日だったりするとたいていお声がかかる。
「ちょっと温泉行こうよ」
職場のロッカーには手ぬぐいと簡単な洗面用具を常備するようになったのは、このお誘いのためだ。車で1時間も走れば有名な温泉地があるという恵まれた立地だったから、仕事上がりに本格温泉でちょっとひと風呂浴びてくるなんていう贅沢ができたのだ。
日の高いうちから露天風呂で眼前に広がる山なみをボーッと眺めるのは、何とも言えない至福のひと時。出たり入ったり、入ったり出たりしながら日が沈むまで温泉を味わい尽くす。
当然のことながら、そうするとお腹も空くし喉も乾く。湯上りに飲むコーヒー牛乳は美味しいけれど、大人が欲するのは泡の出るアレである。しかし、アレに手を出せば帰れない。すると、破天荒な彼女は慣れた手つきで携帯を操り、近場の空き宿を見つけてくる。かくしてわれらは着替えもろくに持たぬままかりそめの宿へとハンドルを握るのだった。
お察しのことと思うけれど、当日、それも夕方になって予約を入れる飛び込み宿泊だ。あたりもあれば外れもある。旅というのは安心安全で快適なものだと思っていた私には何とも刺激の強い行き当たりばったり旅だった。
おしゃれな外観で「あったりー!」と喜んだのもつかの間、通されたのは別館のきしむ床とすり切れた畳のかび臭い部屋だったなんていうこともあった。そんな時もビール片手に、今回は外れだったと笑い合えばどうってことない武勇伝の一ページに早変わり。民宿の看板を目当てに飛び込んだら、すでに廃業していて老夫婦がご厚意で泊めてくださったなんてこともあった。
ガラポン抽選みたいなこの旅は、先の読めないどきどきと思いがけない人との出会いを教えてくれた。不変性なんてどこにもなければ、可変性も通り越した未知との遭遇の旅だった。
 
それから数年後、そんな破天荒な旅の魅力を知ってしまった私を、さらに破天荒にさせるサービスがスタートした。後に民業圧迫とも言われて様々な規制がかけられたairbnbの登場である。
たくさんの写真は安心を担保してはくれるけれど、行ってみるまでどんなところか分からない。オーナーに全く会わずにステイ先を後にすることもあれば、どっぷり親しくなって帰郷後も連絡を取り合うこともある。千載一遇の出会い、もしくは出会いのない旅は、結婚し、子どもも生まれて、さすがに当日空き宿を探すことができなくなった私には新たな刺激的な旅の始まりだった。
 
とりわけ、子どもたち2人と1か月半の親子留学に出かけたニュージーランドでの、2カ所のステイ先は不思議でユニークな家族との出会いとして、私たちの心に深く刻まれている。
ひとつは小さな女の子のいる中国人家族のいる家庭。母国の教育に不安を感じて移住してきたという。家では中国語、幼稚園では英語の生活をする女の子とバイリンガルなママ、中国語しか話せないパパの3人家族。日本から予約した時は英語名のホスト名だったから、お会いするまで中国人家族だということを知らなかった。「中国人なのに英語を話す」不思議な人たちと、まだ幼かった子どもたちの目には映ったようだった。
そして、もうひとつのステイ先はお城のような家に住む現地人ファミリー。広大な敷地には馬に羊、ニワトリにアルパカまで飼っていた。そして、30代の息子2人とシニアのご夫婦、養子に迎えたという日本人の男の子が暮らしていた。このファミリー、20年ほど日本にいたということで息子たちは日本語ぺらぺら。「わぁ懐かしい! コロコロってまだあるんだね」と息子の持っていたコミック雑誌に感激していた。「英語人なのに日本語を話す」不思議な人たちと、英語人と家族の日本人の男の子。先の中国人家族とも違う新たな家族のあり方に、子どもはもちろん、私もいろいろ考えさせられた。
 
移民国であるニュージーランドらしい2家族との出会いは、ホテルに泊まっていたらなかった出会い。こんな出会いがあるから、破天荒な旅はやめられない。
長かった行動規制もようやく解けたことだし、この夏は少し大きくなった子どもたちを連れて、行き先のないブラリ旅をしてみようかな。
 
「もしもし、今日これから泊まることできますか?」
 
 
 
 
***
 
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2022-06-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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