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メディアグランプリ

麦茶のような、初デート。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:比留間詩織(ライティング・ゼミ6月コース)

はじめてのデートは甘酸っぱいレモンというよりも、麦茶だった。
レモンのような爽やかさはないけれど、飲み物の王道。安心・安定の味。
でも少しだけ隠し味に塩が入っていたかもしれない。
私の予想していた「普通のデート」ではなかったから。

相手の男の子とは中学3年生のころから知り合いだ。出会いはクリープハイプのライブ。モッシュで潰れかけていた私を助けてくれたのが、彼だった。
ライブの帰りにお礼を言って、仲良くなった。それからお互いの友達を含めて何度か遊んだ。私は女子校で、彼は男子校に通っていたから、学校で会うことはなかったけれど楽しかった。

毎日LINEをして、ライブで会えば話す。たまにグループで遊びに行く。そんな関係は中学を卒業しても続いた。高校生になってお互いアルバイトや部活で忙しくなったけど、時間を見つけては好きな曲を教えあった。幸せだった。恋愛って楽しいと思った。付き合いたいと神さまにおねだりした。

高校の卒業式の翌日「東京タワーに登りたいんだけど、着いてこない?」と言われたとき、ほっとした。やっとデートに誘ってくれたことに。出会ってから約4年。待ちわびたお誘いだった。デート、と言われてないけれど、これはデートだと思い込ませた。東京タワーって王道のデートスポットだし。

なにより、はじめて2人で出かけるし。

さり気なく好きな服装を聞いて、新しい洋服を買いにいった。Googleで「可愛くなる方法」と検索した。あまり意味なかったけど。必死でいかに可愛く見えるかを研究した。
彼に、いつもよりかわいい私を見せてどきどきさせたかった。もしかしたら告白されるかもしれない、とどきどきしながら眠りについた。

そして迎えたデート当日。いつもより早く目が覚めた。わくわくしながら着替えとメイクをする。自分史上最高のかわいさで家を飛び出した。
どきどきとわくわくが混ざって不安になりながら待ち合わせ場所に向かう。到着すると、既に彼が居た。約束の時間の30分前なのに。楽しみすぎて早く到着してしまったらしい。「彼も楽しみにしている」という事実に安心して笑ってしまった。今日はいつもと違う、2人きり。お互い平静を装って東京タワーへ向かう。

お花見のシーズンだからか、平日にも関わらずチケット売り場は混んでいた。並びながらお互いの近況を話す。チケットがもうそろそろ買える、となった時

「俺、高いところ苦手なんだよね……」

と言われた。高い所苦手なのに、なぜ東京タワーに誘ったのだろう。1番上の展望台は止めておこう、と思いながら
「どのくらいの高さから苦手?」

と聞く。

「5階くらいかな」

まさかの5階。東京タワー、無理なのでは。本当になんで東京タワーに誘ったのだろう。

「今から別のところ行かない?」

と提案するも

「男なんだからこれくらいしないと」

と謎な理由で却下された。意味がわからない。正直登れたからといって、男らしさがあると私は思わないし。事前に高い所が平気か聞いておくべきだった、と後悔する。でも展望台に誘っておいて、高い所が苦手な人っているのだろうか。
意外と登ってみたら平気かもしれない、とかすかな望みを胸にチケットを買う。

後悔した。
やっぱり登らないで違うところに行けば良かった。景色を全く見ない様子を見てそう確信する。なんとか一緒に周ろうと

「手、つないであげるから景色を見ない?」

と誘うと

「付き合ってないのに手はちょっと……」

と、奥手なのを発揮してくれた。ここで。
結局1人で景色を眺める羽目になった。全く楽しくない。彼は窓から遠く離れた所で、ニコニコしながら立っている。何が楽しいのかわからない。「景色を見ながら告白されちゃうかも」という淡い期待は、15分で消えた。

降りたあとは、東京タワーの周りを散策した。桜を見ながら公園を歩く。お互いに土地勘がないから、同じ道を何度も往復した。彼と2人きりで歩いている、という事実に少し緊張する。カフェに入ろうか相談されたけれど、真正面から彼を見るのがなんだか気恥ずかしくて断ってしまった。

同じ道を2時間往復して夕焼けが見えてきた頃、駅の近くの公園に入った。ベンチに座った途端

「渡したいものがある」

と言われた。夕焼けの中、2人きりの公園。いよいよ告白か、と思わず身構えてしまう。そんな私に彼はSHISHAMOのTシャツを渡してくれた。

「これ、欲しいって言ってたよね」

拍子抜けした。そうだ、彼はこういう人だった。ムードとか、そういう曖昧なものよりも、自分の感情に素直で、まっすぐで、ちょっとズレてる。私はそういう彼が好きだったんだ、と気づかされる。「告白されに来たのではなく、彼と楽しむために出かけている」という当たり前の事を思い出した。
なにより、私の話を覚えていてくれたことが嬉しくてたまらなかった。

もう少し一緒にいたいけど、今日は帰っていいかもしれない。そう思っていたのは相手も同じだったようで、Tシャツを渡されてからは、あっさりと解散した。寂しい感情よりも満足した気持ちでいっぱいだった。告白されなかったのはちょっと悲しかったけれど。

はじめてのデートは、思い描いていたものよりも、ずっと穏やかだった。ときめきもあるけれど、いつもの日常のようで。飲み物に例えるならば、まさに麦茶。日常にあって、味もまろやかで。誰もが飲むと安心するような味。でも今回は隠し味に塩が入っていた。塩が味を引き立てるように、彼のセンスがこのデートの時間をより楽しくしてくれた。
彼とこれからもこういう時間を過ごしていきたいと思った。

その後、彼は私のはじめての恋人になった。

***

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2022-06-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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