メディアグランプリ

バッティングセンターとインポスター症候群


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記事:青山 聡美(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
社会人になって20年近くたち、最近は学び直しだとかリスキルという言葉を耳にすることが多くなった。
確かに、最近の技術について、検索してすぐに意味を知ることができるが、自分では使うことはできないというものがたくさん増えている。話についていけない、自分は戦力になっていないなと感じる場面も増えてきた。
きっと、今、学び直すことが必要な時なんだろう。
 
そこで、プログラミングスクールに通い始めた。
女性向けのスクールなので、一緒に学ぶメンバーは当然女性ばかり。講師も女性。
講師の話し方も柔らかく、励ましの言葉もたくさん出る。
普段の男性に囲まれた職場とは全く違った雰囲気である。
 
一応、元プログラマーなので、講師の方がお話される基礎的な用語や考え方は理解していたつもりであった。
しかし、理解度を確認するレビューの際に、意外と自分で言語化できないことに気がついた。
当てられて、メモを見直して汗をかきながら答えている。
毎回出る課題も意外とエラーを出しながら、調べながら、あれこれ試しながら行っている。
 
駆け出しプログラマーだった頃、先輩にそばについてもらって教わったことを思い出した。
当時はググって調べる、専門書を買って調べるというよりは、周りの先輩たちに教わることが多かった。
当時私の周りにいた先輩たちは、みな専門の学校を出ていて、社会人になってからプログラミングを始めた私はただただ先輩たちの言うことを聞いて、仕事をしてきた。
今思えば、初心者の私が仕事を遂行できるよう、周り道をせずに真っ直ぐ進めるようになんとかしてくれたのだと思う。
もともと、プログラミングとは、唯一の正解があるわけでもなく、あれこれやって見ながら自分なりに答えと思うものを導き出していくものだ。
今、改めてそれを体感している。
まさに学び直しだ。
 
さて、みなさんは「インポスター症候群」と言う言葉をご存知だろうか。
インポスターとは、詐欺師と言う意味で、インポスター症候群とは客観的に成功している事実があるのに、当の本人は、能力不足だと思い込む心理状態のこと出そうだ。
能力が高い女性に多いようで、社会的に成功をおさめている有名な作家や学者もこの状況に陥ったようである。
その結果、必要以上に働いて、燃え尽きてしまったり、可能性を潰してしまったり、ひたすら落ち込んで人生を楽しめなくなる、といったことが起きるということであった。
チェックリストを読むと、私もインポスター症候群になる傾向があるようだ。
私だけではない、周囲にもそのような人が多いと思う。
 
講義の中で、この「インポスター症候群」に触れたことが、その日はずっと頭から離れなかった。
なぜ私はプログラミングを改めて学ぶことにしたのか?
自分の職業について、どうも名乗りと実際にやれていることが違うな、周りを騙しているなと感じたというのが最も大きな理由かもしれない。
周りはすごくできる人たちばかりなので、彼らと比べてしまい、自分に足りない部分を補わないと! という気持ちが走ったと思う。
ああ、足りない部分を補うということでは、このライティング・ゼミもそれか。
 
インポスター症候群と向き合うには、自分が知っていることで、相手も知らないこともたくさんあるということをちゃんと理解すること、自分のこれまでやってきたことをちゃんと見つめることが大事、ということであった。
幸い、私にはふりかえりの習慣があるし、できない自分だからこそ、できる人にはわからない気持ちがわかる、ということもわかっている。
いつの間にか、向き合える考え方を身につけてきたのだなと気がついた。
そして、周りができていて、自分ができていない、というインポスター症候群の片鱗は、新たなスキルを身につけよう、学び直そうというモチベーションに一部つながっていることもわかった。
詐欺師ではいたくない。でも、燃え尽きたくもない。
 
学び直し。最初は古い考え方に囚われてしまった人向けの言葉なのだと、敬遠していた。
でも、いつの間にか、固執していなくても、時代についていけなくなった自分がいて、劣等感から、思い切って打席に立ってみた。
最初はひたすら空振り、でもだんだん目が慣れてきてボールにかするようになってくる。
なんだか学び直しはバッティングセンターのようだ。
気がつくと、夢中になっているし、汗もたくさんかくし、打てると気分が良い。
インポスター症候群に背中を押され、学びの打席に立ち続けたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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