メディアグランプリ

何故か頭から離れないあの映画のワンシーン


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記事:園田夢実(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「これ以上私のできることを奪わないで!」
 
私は小さい頃から筋金入りのテレビっ子。
ゲームはあまりやらないし、マンガもあまり読まず、テレビを観る時間が長かった。
色んな番組を観るというよりは、好きな番組やハマった番組を何度も繰り返し観るタイプ。
中でもドラマは特別だ。
一度ハマったら、セリフを覚えられるくらいに何度も観てしまう。
 
特に長い間好きだったドラマが、とある病院でドクターヘリに乗り様々な命に向き合う医者を描いたあのドラマだ。
こんな美男美女のお医者さんしかいない病院なら、いくらでも入院したいなあ、なんて思いながら観ていた。
このドラマもやはり何度も繰り返し観てしまう。
毎週録画をしておき、次の回が放送されるまでに3回は観てから次の回を観る。
だいたいドラマは1クール3か月だから、3か月で全話3回ずつ観ることになる。
それくらいこのドラマにはハマってしまった。
 
そして数年前、ついにこのドラマが映画化した。
映画化が発表されたときのあの喜びを何と表現したらいいのだろうか。
公開までだいぶ長い時間があったが、スケジュールには公開日を入れていた。
そしてついに映画は公開。公開日から数日後、映画館であのドラマを観ることができる喜びと、もうこれで完結してしまうんだという寂しさを胸に抱えて、私は映画館へ向かった。
 
開始5分で涙が出始め、そこからエンドロールまで涙が止まることはなかった。
最初から最後まで私にとっては感動的で心が震えるような素晴らしい映画だった。
しかし、あるワンシーンだけが頭にこびり付いて離れなかった。あの時放たれたあのセリフが、どうしても頭から離れない。
 
「これ以上私のできることを奪わないで!」
 
末期がんで入院中の若い女性が、ベッドから立ち上がってふらつきながらトイレに行こうとしている。
それを看護師が手伝おうとしてその女性の手を取った。
すると彼女は看護師の手を振り払いながらこう言い放ったのだ。
 
体が衰弱していくたびに、それまでは当たり前にできていたことが一つずつできなくなっていく。
トイレに行くことすら自分でできなくなってしまうことに、彼女は大きな悲しみや苦しみを感じたのだろう。
 
私の頭にはこのシーンがずっと残っている。
その時はなぜなのかわからなかったけれど、ある出来事を通して私はなぜこのシーンが私の頭に残っているのかということがわかった。
 
3年程前の私が大学4年生だったとき、当時私は実家で両親と兄姉と、そして母方のおばあちゃんと一緒に住んでいた。
おばあちゃんは確か私が中学生くらいのときに、体を悪くしたため一緒に暮らすようになった。
たまにふらつくこともあるので少し危なっかしいけれど、基本的に自分のことは自分でできるおばあちゃん。
まだボケてもいないし、最近の若者の流行をテレビで勉強してはいつも私に披露するおばあちゃん。
そんなおばあちゃんが、ある日家族みんながいるリビングにやってきて、「テレビの録画のやり方を教えてほしい」と言ってきた。
私は録画のやり方を紙に書いて、おばあちゃん一人でもできるように教えようとした。
するとパパは「そんなの作ってもどうせできないから、録画したいときに声をかけてもらえれば代わりにやるよ」と言った。
私はこのとき、なんだかものすごく心がざわついた。
イライラという感情なのか、モヤモヤという感情なのか、黒い糸がぐちゃぐちゃに絡み合っているような感覚だった。
 
このとき、あの映画のあのシーンを思い出した。
 
そうか、私は人からできることを奪うことが心の底から嫌いなんだ。
できること、やりたいこと、挑戦したいこと、それらを人から奪うことが、私は大嫌いなんだ。
頑張ってやろうとしている人がいれば、それを応援したい。
その邪魔は絶対にしたくない。
私はこのことをそれまでは全く認識していなかったし、考えたこともなかった。
だからこそ、あの映画を観たときに、私の心の中を映像化してくれたあのシーンが頭から離れなくなってしまったんだ。
 
そういえば、好きな歌もおんなじだ。
私の好きなアーティストの特に好きな曲は、私の心を映していて、聴くといつもその歌詞が頭の中で勝手に文字起こしされる。
 
きっと映画や音楽だけではなく、アニメやマンガ、本でもきっと“頭にこびり付いて離れない”というものが人それぞれにあるだろう。
自分自身の心を映したものが、きっと人それぞれにあるだろう。
 
よく自己紹介をするときに、「好きな映画は~です」とか、「好きなマンガは~です」という話をする。
ただの話題作りのためのものだと思っていたが、これはその人の心の中を知るきっかけになる、最上級の自己紹介だったんだ。
 
私の大好きな人たちは、みんなどんな映画、歌、アニメ、マンガのシーンが好きなんだろう。
今度お茶でもしながらじっくり聴いてみよう。
 
 
 
 
***

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2022-06-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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