断捨離は小芝居
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事::伊佐野 貴子(ライティング・ゼミ6月コース)
「いつかこの魔窟のような部屋が片付くことはあるのだろうか……」
突然やってきたニューノーマル。
我が家の生活も大いに変わった。
外出自粛の煽りを受け、家に篭る日々。夫は在宅勤務、子供はオンライン授業を余儀なくされ、狭い家ながらもそれぞれ場所を確保してなんとか家の中だけで日常生活を送っている。
問題は私の場所だ。空いている場所といえばダイニングテーブルか寝室なのだが、ダイニングテーブルの少し先に夫の仕事場所が確保されているのでほぼ同じ空間、確実にお互いを侵食する。寝室で寝ながら勤務するわけにもいかない、確実に寝てしまう。
万事休すかと思いきや残る選択肢は1つある。玄関近くの「物置と化した部屋」だ。
この部屋は入居当初15年前からずっと物で埋まっており、服やカバン類、使わなくなったおもちゃやサイズアウトした服、家電の空き箱、謎の棚、ネット通販で衝動買いした「座ってゆれるだけで痩せる椅子」「乗ってブルブル震わせるだけで痩せる台」などの健康器具(お約束通り三日坊主で痩せてはいない)、果ては恐ろしく重たい謎の車のサスペンションまで、普段使いしているものからガラクタと化したものまでがひしめき合っている。
「魔窟」「ジャングル」と称されたこの部屋についに手を入れる時が来たか。今まで幾度となく片付けにチャレンジしてきたが、中途半端で結局あっという間にリバウンドしてきたこの部屋。できれば目を背けたいがそうもいかない。もう後がない。
「いつやるの?今でしょ!」と自分を鼓舞しその魔窟に足を踏み入れるも、何をどうして良いか分からない。どこから手をつけていいかも分からない。突き当たりにあるギュウギュウの押し入れまでの間にも、沢山のガラクタに見えるモンスターたちが道を塞ぐ。無理、やっぱり無理。
入ってはげっそり、入ってはげっそりを繰り返した結果ふと気がついた。この迷宮をクリアするには私の冒険者レベルを上げれば良いのではないか?そうだ、整理収納アドバイザーの資格を取って体系的に学んでからにしよう!
究極の逃げ口上とも取れる資格取得のひらめきだったが、天からのお告げと信じすぐ申し込む。するとすぐ通信教材が届いた。希望者の熱が冷めないうちに教材一式を即日手配する、さすがです。
「整理収納アドバイザー」と聞くと、常に家はキレイでセンス溢れるステキな人が、より高みを目指して取得するものかと思っていた。気軽に申し込んでみたものの、家の中に迷宮がある人はそもそも対象外なんじゃないかと恐る恐る教材をめくってみた。
すると意外にもその内容は「片付けられない人」の心にも寄り添うかのごとく分かりやすく、なんと3冊の教本のうち最初の1冊はほぼ片付けの「意識づけ」に充てられていた。そのキーワードは
「整理なくして収納なし」
どきっ
整理とは、要・不要を区別すること。いわゆる断捨離と呼ばれる部分にあたるが、まずこれをやらずして収納はできませんよということだ。確かにこれまでの私は、収まらないモノたちが捨てられず、クリアケースなどを新たに揃えてそこにグイグイ突っ込んで安心していた。ダメなんだろうなと分かっていたが改めてダメだと分かると妙に納得してしまう。
なんとなくモノを持ち続けているのではなく、それが「何のために作られたのか」という本質に沿って使っているのでなければ、そのモノたちはそこに居続ける意味はない。服は着るために、おもちゃは遊ぶために作られた。今の私には放置されているだけのモノたちとしっかり向き合うことが必要だ。
そこでまず、魔窟の一角にある収納ケースの中のものを出してみる。いつか着るかもと思って着ていない服や、いつか使うかも、読むかもと思ってとっておいた箱や本たち。この子たちに心の中で心を込めて話しかける。
「買った時にワクワクさせてくれてありがとう!」
「うちにいる間私を楽しませてくれてありがとう!」
「あなたのおかげでこんなに私は助かったよ、ありがとう!!」
やや小芝居気味に感謝の気持ちを伝える。たまに声にも出す。
そうすると思いのほか罪悪感なくどんどん手放せて、その一角はすっきりときれいになった。すると不思議な達成感に包まれ、部屋全体がきれいになってそこで気持ちよく過ごしている自分や家族の姿が具体的にイメージできるようになったではないか。魔窟だったこの空間は楽園だったのか。
教本には「まず小さなところから成功体験を積み重ねよう」と書いてある。なるほど確かにその通り。そして一番大切なことは、整理してきれいになった後にどうしたいかという「その先の目的」を明確にすることであることを知った。まずは「この部屋を在宅勤務用に使いたい」という用途としてイメージしつつも、その先に「家族全員が気持ち良く過ごせる」「モノを探すという無駄な時間が減り余暇が増える」「無駄買いがなくなって貯蓄ができるようになる」などの自分にとっての「理想の生活」が見えてくる。聞いてみて「ふむ」と思うのと、実際やってみて「ふむ!」と思うのとは大きな差がある。
さらに驚くことに、ひとつひとつ感謝して手放すと、これから家に迎えるモノを吟味しようという気になる。本当に自分が気に入って使うモノは、私の生活を心地よくしてくれるに違いない。
追われてやる整理と理想を追う整理は心持ちも全く違う。整理収納の道はまだまだ奥深いが「自分の心地よさ」を追求すればおのずと道は見えてくるのではないだろうか。一度収納したらそれで終わりではなく、どんどん見直すことも重要だという。心地よさもブラッシュアップしながら、楽園目指して小芝居を続けていきたい。
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