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メディアグランプリ

愛と悲しみのAmazonレビュー


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:吉田鉄馬(ライティング・ゼミ6月コース)

 
 
あなたはAmazonで購入したものに星をつけたことがあるだろうか。
あの1〜5段階評価で星をつける、例のアレである。
Amazonでは購入した品が届くと、しきりにレビューを書くよう促してくる。
私はかつて、何度かその催促に従って星をつけた。
皆さんもそんな経験が一度はあるのではないか。
 
そこで、皆さんに1つ質問がある。
「その時、あなたは星を何個つけましたか?」
星3つ? それとも星4つ?
我々が何の気なしにつけているこの☆の数が、裏でとんでもない不利益を日本にもたらしていることを、あなたは知っているだろうか。
 
「とんでもない不利益だなんて大げさな。単なる星の数でしょ?」と思ったそこのあなた。では、あなたに聞きたい。Amazonレビューを投稿した際に、あなたは星をいくつつけただろうか。
 
「え、普通の使い心地だったから“☆3”だよ」
そんな言葉がどこからともなく聞こえてきた。実際、これと同じような☆のつけ方をした人もいるのではなかろうか。
 
だが、実はこの思考こそが諸悪の根源なのだ。
どういうことか説明しよう。
日本人の多くは、中学・高校と5段階評価に慣れ親しんできたせいで、
「5:極めて優秀なものにしか与えられない
4:5までは届かないが、平均的な出来栄えから秀でているものに与えられる
3:製品やサービスがこちらの望むどおりのものだった場合に与えられる
2:こちらの期待をやや下回ったものに与えられる
1:こちらの期待に全くそぐわないものに与えられる」
このような思考法になっていることが多い。どうだろう、概ね合っているはずだ。
 
日本人はこの思考法に則り☆の数をつけるため、星平均が“3〜4”の間に落ち着くことが多い。“☆5”の製品があれば、それはよほど優れた製品なのだと思うだろう。
 
一方、欧米諸国での星の数の付け方を見てみよう。
驚くべきことに、アメリカ、イタリア、イギリス、オーストラリア、カナダでは“☆5”が圧倒的に多いのだ。と言っても、これは彼らが、極めて性能の良い商品やサービスに囲まれて暮らしているというわけではない。何ならその点に関しては、日本の方がよほど恵まれているとも言えるだろう。
 
では、この差はいったい何なのか。それは、“☆5”という評価をどこに置くかに関係している。欧米諸国では、「製品やサービスがこちらの期待どおりに行われる場合、“☆5”をつけるケースが多い」。ただそれだけのことだ。
日本では“☆3”に該当するようなものでも、彼らにとっては“☆5”なのである。
 
例えば、彼らが何の変哲もない扇風機を購入したとする。スイッチを押せばファンが回転する、いわゆる一般的な扇風機だ。一通りいじってみて、問題なく使うことができれば彼らは“☆5”をつける。
仮に不満点があったとしても、機能として問題なく使えているなら“☆5”。不満点はコメントに留めておいて、“☆5”という評価は揺るがない。
 
一方、日本人の場合はどうだろう。扇風機が扇風機の役割を果たしただけでは“☆5”をつけない。ユーザーの期待を上回る何かがないといけないのだ。だが、そうなってしまうと、扇風機のように機能が限定されたアイテムは永遠に“☆5”をもらえないことになってしまう。
それに少しでも不備があれば減点方式で星の数が引かれ、少し油断するとレビューが“☆2”で溢れることになる。
 
「これは欧米人と日本人のメンタリティの違い・文化の違いなのだから、両者を尊重しあえばいい」
綺麗事を言うとこんな感じにまとまるのだが、そうは問屋が卸さない。
この両者の考え方の違いが、我々の知らぬ間に、日本にとんでもない不利益をもたらしているのだ。
 
どういうことか説明しよう。
今や、グローバル企業の間で日本人のレビューが異常に辛いことは有名になっている。そのため、ある製品を販売するときも「日本で販売したらレビュースコアを下げられるから、出さない」という選択肢を取る企業が増えてきているのだ。
企業側の視点で考えてみると、わざわざ手間暇をかけて日本向けに翻訳作業をしたり仕様を微調整したところで、日本人は“故意に”レビュースコアを下げるという“荒らし”行為をしてくる存在だ。
全世界の人間が見られるレビュースコアが日本人によって不当に下げられてしまうと、製品の信頼性に疑問を持ち、買い控える人々が増えてくる。
なので、日本のマーケットという目先の利益を優先するよりも、日本を無視して世界のマーケットで高レビューを稼ぎ続けた方が、最終的に自社の利益に適う。
このような考え方が、グローバル企業の間で浸透しつつある。もはや日本人という存在は、「サイレントクレーマー」に過ぎないのだ。
 
私はテレビゲームで遊ぶのが趣味なのだが、テレビゲーム業界はモロにこの煽りを受けている。グローバル展開するはずのタイトルが日本だけ未発売という出来事に、この数年で何作出会ったことか!
悲しいことに、日本以外のアジア諸国ではちゃんと販売されていたりするのだから、日本の嫌われぶりが際立ってくる。
「単に日本のマーケットが小さいから無視されたんじゃない?」と考えた方。
甘い。
残念なことに、日本よりもよほど小さなマーケットしかない国ではしっかりと販売されている。これで日本の嫌われぶりにご納得いただけただろうか。
 
「日本人の“☆3”が、欧米諸国における“☆5”にあたるという認識を企業側に持ってもらえればいいんじゃないか」
そう考えた方もいるだろう。
だが、グローバル企業はグローバル企業であるがゆえに、自社の製品・サービスへの評価基準を国ごとに変えるなどという七面倒くさいことはしない。「日本だけ特別にしろ」は一切通じないのだ。
つまり、この問題を解決するには、我々日本人が歩み寄るしかない。
 
しかしそうは言っても、日本人だってそう簡単に変わることはできないだろう。
そう。実はこの問題、解決策がないのだ。日本人が愛を込めてつけた“☆3”のレビューは、グローバル企業から蛇蝎のごとく嫌われ、ますます日本離れが加速していく。そして気づけば販売対象地域から日本がどんどん外される。何よりも一番悲しいのは、英語ができない日本人はその事実に気付いていない。
 
だが、ある面でこれはこれでアリかな、とも思う。日本という国の異常性が世界に受けていて、海外に住む方々がこぞって日本に来たがるという不思議な現象が起きているのだから。
こうなればとことんまでアンチ・グローバルを貫き、「あの国の連中は、星のつけ方さえも狂ってやがる」と好奇の目を集めるのも悪くないかもしれない。グローバル企業の製品やサービスが国内展開されなくとも、大量の外貨を稼ぎ続けることはできるだろう。長い目で見れば、そちらの方がよほど国益に適うはずだ。

 
 
 
 
***

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2022-07-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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