メディアグランプリ

僕が写真を撮る理由。


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記事:関田 信吾(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
写真との出会いは大学に入ってからだった。
当時は身の回りでTwitterが流行りだしてから2,3年くらい経っていた。
中学生のときから僕も含め、身の回りの友達もほとんどが携帯電話を持っていた。その頃は友達と遊ぶ約束をするために電話をしたり、好きな女の子とアドレスを交換してメールをして楽しむ、といった使い方がもっぱらだった。それが高校生になっていわゆるガラケーからスマホに買い替える人が徐々に増え始め、僕自身も高校2年生のときに両親にスマホを買ってもらって、少しずつアプリいろんなアプリを使うようになってきた。そして大学受験が終わってあとはもう卒業を控えるのみという頃に、友達に勧められてTwitterを始めたのだ。友人や自分の興味のあるアカウントをフォローしていれば、様々な情報が流れてくる。
たまにタイムラインにふと表示される綺麗な星空や風景の写真を、なんとなく「いいな」と思って眺めている自分がいた。ただ、良くも悪くも当時はその程度にしか思っていなかった。
 
いつか自分も綺麗な写真を撮ってみたいなという漠然とした思いが強くなったのはそれから約2年後。いろいろな偶然が重なったことが引き金となった。
その年、大学で体育会の活動に明け暮れていた僕は、練習中に大怪我をして手術を余儀なくされ、しばらくの間プレーができない状況に陥った。一時とはいえ、今まで部活に注いでいた情熱のやり場を失った僕は、何か打ち込めるものがないかを探し始めた。今まで読みたくて時間がなかった漫画を片っ端から読み漁ってみたり、退屈で見向きもしていなかった大学の勉強に少しだけ力を入れてみたり。だけどどれも長くは続かなかった。
 
そんな中で、その年の夏に公開された映画が「君の名は。」だった。のちに全世界興行収入が日本アニメとして過去最高を記録することになる大ヒット映画である。一度映画を観てそのストーリーの面白さに魅了され、一人で映画館に2回目を観に行くほどだった。
そして何よりも絵が綺麗だ。実在する新宿の映画の中での風景は、浪人していた頃によく見ていた実際の新宿の景色よりも一層輝いていた。こんな風に自分の作った綺麗な景色で人の心を動かすことができたらどれだけいいか、と作者の才能をうらやましいと思った。ただ、生まれてこの方、絵を描いたりといった芸術的な才能はまるでなかった。学生の頃から美術の成績は良くても「3」だ。自分が何かを創作するなんて、と諦めているどころか何か芸術作品をつくってみようなんて気さえ起こしたことがなかった。
 
夏休みに「君の名は。」を映画館で観た後、偶然にも後期の授業で取っていた社会学の講義で、「君の名は。」をテーマにした回を受講した。そのときに、自分にも何か作品をつくることができるのではないかという可能性に気付くことになる。
 
講義の内容は、「君の名は。」がメガヒットしている要因を社会学的な観点から考察する、というものだった。そこで、教授が「君の名は。」のワンシーンでありそうな1枚の写真をスクリーンに投影した。夜に1台の飛行機が滑走路に着陸しようとしている瞬間の写真だ。この世のものとは思えない、それこそ創作なんじゃないかと思うくらい美しい写真だった。画面は滑走路のライトやその背後の夜景など、色とりどりの光にあふれ、主題となる飛行機の機体はただならぬ重厚感と存在感を放っている。聞くとこの作品は、教授の知り合いの写真家の方が撮った写真だそうだ。全く絵の才能のない自分でも、写真であれば人の心を動かすことができるような作品を生み出すことができるかもしれない。そう考えた僕は、怪我の際の手術で得た保険金の一部を握りしめ、家電量販店へと向かって一眼レフカメラを購入した。これで絵が下手で万年美術の成績が振るわなかった自分でも芸術作品を生み出すことができると、自分の新たな可能性に心が躍った。
 
写真を撮るということはぬりえをすることと似ていると思う。
写真もぬりえも、題材は決まっている。写真であればその決まっている題材、すなわち被写体をどんな角度から取って、何を主題として切り取るか、そして切り取った瞬間をどのようにレタッチして見せるかにはその人の個性が出る。ぬりえも同じだ。決まっている絵柄をどのような色で塗るのか、あるいは絵柄の周囲に別の絵を描き足していくのかといったところに文字通りその人の「色」が出る。
写真とは、絵を描いたり芸術が苦手な人でも気軽に取り組める、自己表現の方法なのではないかと思っている。
 
何においても、自分のアイデアや考えたことで人の心を動かすのは難しいことだなと思う。
難しいからこそ、それができたときには達成感があるのだろうし、観た人の心を揺さぶるような芸術作品を生み出すことができるなんて本当に素敵だなと思う。綺麗な絵を描くことはできないが、写真なら絵が下手な自分でも人を感動させるような作品を生み出すことができるかもしれない。これが僕が写真を撮る理由だ。
 
絵みたいな写真を撮りたい、と思いながらいつもシャッターを切っている。
 
 
 
 
***

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2022-07-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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