メディアグランプリ

コンチキチンで始まる京都のうだる夏


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記事:油井貴代子(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「あの黄色いのは何?」
一緒に歩いていた友人に聞かれ、私にとって見慣れた景色がそうでない人もいるのだと気が付いた。
 
7月は京都にとって祇園祭という大きな行事がある月だ。
全国的に知られる祇園祭は、鉾の巡行だけがクローズアップされ、宵山や宵々山と巡行当日だけがお祭りと勘違いしている人が多いが、7月1日から31日までの一ヶ月間が祇園祭である。
とは言っても、お祭りに関わっている地域以外に住んでいる私は、同じ京都市内に住んでいるにもかかわらず、さほど祇園祭に詳しいわけではない。ただ、この時期になると毎日のニュースで流れてくる映像や、実際に営業車の中から見る風景からお祭りを感じ取ることが多い。
 
私は毎日営業車で京都市内を走り回っている。マットやモップなど、掃除用品のレンタル業者である。7月に入ると、京都市内の室町や新町界隈では、電柱の上に黄色い網が施される。あのゴミバケツに見える「変圧器」や電線部分に黄色い網をかぶせ、鉾建てや巡行の際の接触事故を防止するためだ。友人の言った黄色いものとは、この網を指していたのである。通りがこの景色に変わると、「あぁ、お祭りの季節なんだな」と感じるのだが、それは私にとって少し億劫な季節でもあった。
 
京都の道は細い。大体の道が一方通行で、車も一台しか通れない道が多い。その細い道に鉾が建つ。それは車を「とうせんぼ」してしまうのだ。鉾建てが始まると必然的に通行止めが始まることになる。それもかなりの距離で通行止めになるものだから、車を停めた場所から荷物をもって、徒歩移動せざるを得ない。最近では駐車監視員の目を気にしながら、猛ダッシュで車から往復することも多くなった。雨が降っていたり、晴れていればかなり気温も高く、苦痛でしかない。また、観光客も増えるため自然と他府県からの車も多くなるのも、仕事には支障が出る。いつもより時間に余裕をもって、お客様と時間の約束をする必要があるのだ。
けれど、鉾を建てる職人さんの動きを見ることは楽しい。信号待ちの車の中から、縄をぐるぐると巻いて木材を組み立てていく様を眺める。また商店の軒先には鉾をあしらったうちわや絵葉書、ミニチュア品などが並び、この季節ならではの楽しさもある。
祇園囃子の練習が聞こえたりしたら、それはもうテンションが上がる。京都の中心街である四条通りでは、7月に入ると提灯がずらっと並び、BGMも祇園囃子のコンチキチンが一日中流れている。だがやはり生演奏は格別だ。鉾の中で、実際にコンチキチンを練習している場面に出会うと、すごく得をした気分になるものだ。
 
コロナ前は、海外からの観光客もピークに達し、異常なほどの人が京都の街に溢れかえっていた。今年の祇園祭は三年ぶりの巡行で、前祭が三連休ということもあり人出は多くなると思うが、以前に比べればやはりゆったりと見れるのかもしれない。祇園祭は前祭が17日、後祭が24日で全体を2つのグループに分けて巡行する。だが、稚児の乗る長刀鉾など有名な鉾は17日に巡行することや宵山宵々山も15日16日になるため、人気は前祭であろう。巡行当日は朝早くから良い場所を取るために人が集中する。稚児が見せるくじ改めの儀式や、四条河原町での辻回しといわれる方向転換を見るために多くの人がひしめき合うのだ。また、お金を払って観覧席を取る観光客も多い。
 
私も何度か巡行を見に行ったことはあるが、猛暑の中での巡行観覧は体力的にも無理があるため、いつもすいている場所を選んで観覧することにしている。鉾さえ選ばなければ、どの角でも辻回しを見ることができるのだ。
鉾はくじの順番通りに、縦の細い道から横に交差する大きな通りに出てくる。この時に必ず辻回しが見れるのだ。前の鉾が通った後に必ず観光客も移動するため、角の一番よく見える場所を陣取ることができる。そこでゆっくり辻回しを堪能できるのだ。道に並べた竹の上に水をまき、先頭の掛け声と扇子の動きに合わせて方向転換していく。見事に直角に曲がり切った鉾へ、沿道からは大きな拍手が沸き起こる。
 
鉾を見送った後は、その細い道を北へ向かって歩くことをお勧めする。
鉾は大きな通りを一周し、元の町内に戻ってくる。細い道から出発した鉾は、また細い道に戻ってくるのだ。道の両側から迫る屋根にぶつからないように、鉾の屋根に乗った人が足で屋根を蹴ったり棒で押したりしながら、上手に鉾を操っていく。そして、大きな鉾がゆっくりと目の前を通り過ぎていくのだ。ぎしぎしと車の軋む音を感じることができ、豪華なゴブラン織りの飾りを目の前で堪能できるのは、この細い道ならではだと思う。
 
ただ、一つだけ注意をしておきたいことがある。
京都は暑い。祇園祭が終わると夏本番といわれるが、今のご時世ではコンチキチンとともにうだるような夏が始まる。熱中症にはくれぐれも注意をしながら祇園祭を楽しんでいただきたい。
 
 
 
 
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2022-07-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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