メディアグランプリ

保育園は親子の学び舎


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Pauleかおり(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
大きな移動式オリのような乳母車の中に、柵をつかんでたつ数名の幼児が入り、それを保育士さんが推し散歩している姿を見たことあるだろうか?
まだ長く歩けないような小さな子達は、そうやって外に連れて行ってもらえるのだ。
 
あのオリのような乗り物、子供たちからすると楽しかったりもするようだが、どうも大人から見ると動物のように扱われていて、かわいそうに感じる人も少なからずいるらしい。
 
ある日のこと、生後10ヶ月の息子がそれに乗せられ散歩している姿を社宅ママが見つけた。
「あんまりにもかわいそすぎて、連れて帰りたくなったわよー」の一言。
 
主人の会社の社宅で暮らす、共稼ぎの私たちにとって、保育園はありがたい。一方、社宅内ママたちは、小学校上がるまではお勤めしない派が主流(30年前)で、保育園にやることの是非を問う話題が頻繁に出た。
 
「小さいうちは親の愛情が大切。愛情がもらえずかわいそう」
「他の子に手がかかったりで忙しいと、ほったらかされる」
「一斉に同じことを要求されるから、我慢させられ、子供の心が伸び伸びしなくなる」
 
「でも、保育園行ってる子って、しっかりしてる子多いと思わない?」
たまにプラス面を言う人もいるが、最後は決まって
「そうそう、ずる賢くなるのよねー」
「競争意識すごくて、負けてないわよね」
と、結局、保育園育ちはよろしくないレッテルを張りたがった。
 
主人の実家は新潟の農家。田舎の考え方からも、農作業なら仕方ないけど、しばらく仕事はお休みしてもいいんじゃない? とか、仕事はいつでもできるけど、子育ては今だけだよ。など、ここでも保育園に入れることには、風当たり強かった。手抜き育児に見えたようであった。
 
子育ての経験もないし、先輩お母さんからの言葉はとても重く、心揺れる日は多々あった。
どうしてもやらなきゃいけない仕事なんて、子育て以上にあるのか?
保育園に通った子供は、愛情不足になるの?
そもそも、保育園で育った子ってダメなの?
 
今でこそネットの時代になったから、検索したら迷いもなかったかもしれない。
しかし、今から30年前は、本か、身の回りの人の話しかない。
情報が限定的になるから、常に自問自答の日々。
 
選んだ道は、生後2ヶ月から小学校上がるまで保育園へ預け、仕事と家事を頑張った。
 
一歳前のとある日のこと。
「窓からママの姿を探していたのよねー。ママが迎えにきたよー』 という先生の声。
先生の言葉とは裏腹に、帰りたくないと泣き叫び、抵抗され、手こずった。
なんとか無理矢理乗せた自転車からは、のけぞって落ちそうになる。
最初は優しく「そうか、そうか、嫌なんだよね。でもおうちに帰ろうね」 声をかける。
 
左右に激しく暴れる息子で、ハンドルを取られる自転車、こっちが泣きたい!
やっとの思いで家に着く。
息子は、滝のように流れる涙と、額からは大汗で少ない髪がびっしょり、鼻からはドロドロの鼻水の嵐。
私の耳はキンキン、仕事の疲れに青い打ちをかけるようなこの状態に、限界がきた!!
 
「いい加減にしなさーーーーーい! もうあんたなんて、ここでずっと泣いてなさいーーーーー!!!!」
真っ暗な寝室に放り込んで、ドアを閉めた。息子を閉じ込めてしまった。
 
私は、部屋に押し込んだまま、晩御飯の準備をしたり、家事に追われ、時間と格闘していた。
もう嫌だ! どうしてうちの子はこうなるんだ? これっていつまで続くんだ? 助けてーーー!
 
ドアの向こうは気狂いになる程泣き叫び、しゃくりあげる音の合間に、途切れ途切れに聞こえる「マ、マ……」
だんだん声はかすれ、しゃっくりの音だけに。
ついには、声もしなくなっていた。寝てしまったのだ。
 
周りの人たちは、「きっと一緒にいる時間が少ないから、愛情不足なのよ」
やっぱりそうなのかな?自分を責める日々。
いっそ仕事やめて、保育園辞めさせ、思う存分一緒にいる状態にするべきなのかな……
 
そんな時、お母さんのようなベテランの保育士さんがいった。
「愛情は時間の長さじゃないよ。少しの時間しか一緒にいられなくても、その時ぎゅーっと愛情たっぷり凝縮できれば、何も心配いらないよ」
「反対に少しの時間しか居られないと思うからこそ、精一杯できることがあるんじゃない?」
 
そうだ! 大切なことは時間の長さじゃない。
ごめんね、ごめんね、時間に追われて、時間のせいにしていただけだね。
 
涙の跡がついたあの日の寝顔の風景がよみがえる。
私の頬に大粒の涙が、ポロリ、ポロリ、流れた。
 
以来私は、次の日も、その次の日も、問題が起きるたびに、先生達からの魔法の言葉に力をもらって育て上げることができた。
 
他にも、育てる上での、遊び方のヒントや、食事の時の状況作りや、寝かしつけたりの時間にしたら良いことなど、たくさんの学びをもらい、また実行できる後押しもたくさんもらった。
 
保育園によっては、保育方針や方向性や先生方の思いなどにはそれぞれ違いはある。
それでも、心細くなる親の気持ちに寄り添ってもらえたり、子供の年齢時期によって必要な対応の仕方、子供との接し方などの教えには違いはない。
もしあの時、親子2人の時間ばかりの生活をしていたら、もしかしたら、私は虐待している親になっていたかもしれない。
保育園は子供のためだけのものではなく、手探りな親にヒントや知恵をくれて、健全な親でいられるよう助けをくれる場であったと、感謝している。
 
もちろん、子供達にとっても、長い時間寝食を共にする活動からたくさんのことを学べる。
母親や家族とは違った形の愛情も知ることになる。
年齢が上になれば、下の子達に面倒を見ることも教えられる。
遊びのこと、道具の使い方、衣服着脱の手伝い、挨拶の仕方、などなど。
大人の口出し、手出しを受けることなく学べていく。
 
保育園は預かって、面倒を見てくれるだけのところではなく、親も子供もしっかり学びがもらえる素晴らしいところ。これからも多くの人が安心できる保育園が増えてほしい。
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2022-07-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事