本屋は「危険な沼」だった
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:深谷百合子(ライティング・ゼミNEO)
久しぶりに本屋へ行った。が、これがいけなかった。
欲しい本を買うのに本屋で探す時間が惜しくて、最近はネットや電子書籍での購入ですませていた。欲しい本だけピンポイントで買って画面を閉じる。それで終わりだ。余計な時間もお金もかからない。しかし、本屋はマズイ。目当ての本だけ買うつもりだったのに、ついうっかり店内をウロウロ回遊してしまった。その結果、1冊だけ買うつもりが10冊になり、散財する羽目になった。
散財も痛いけれど、本が増えるのは更に痛い。物を減らそうと頑張っているというのに、こんなに本を買ってしまってどうするんだ……。タイトルだけメモして、電子書籍で購入したらよかったんじゃないか。本屋からの帰り道、そんな自責の念が湧いてくる。
でも、「これはやっぱり紙の本で読みたい」という本に出会ってしまったのだ。その本は、一度電子書籍で読んだ本だった。本を読んで、「ここは自分に必要だ」と思うところが何か所もあった。電子書籍も、紙の本でいう「折り目」にあたる「ブックマーク」という機能がある。マーカーで印をつけることもできる。でも、「気になったあの部分をもう一度読み返したい」と思う時、ブックマークの数が多いとなかなか探し出せない。それがとてもじれったい。
紙の本だったら、何度も繰り返し開いたところは「クセ」がつく。それに、自分の体が覚えてくれるようになる。「大体このあたりに書いてあった」と、まるで地図のように「位置情報」として体が覚えていくのだ。
読書ノートに気になったところを書き出しておけば、電子書籍でもいいじゃないかと思ったこともある。でも、やっぱり違うのだ。気になっていたページを開いた時の、「あぁ、ここ、ここ。この一文にガーンってなったんだ」という感動は、読書ノートだけでは味わえない。
そんなことに気づいてしまって、やっぱり紙の本を買おうと近所の本屋に出かけたのだ。
目当ての本を手にとった後、同じ棚を見渡すと、気になるタイトルの本がいくつかあった。パラパラとページをめくってみる。「これは手元に置いておきたい本だ」と心が動く。何冊か見比べてみて、「何度も見返すだろうな」と思う本を選ぶ。どの本も、今の自分の仕事に必要な本だった。
ビジネス書の棚の横は実用書が並び、そこから更に先に進むと専門書のコーナーがある。自然科学、電気・電子、環境、建築などの理工書が並んでいる。
「以前はよくここで電気や空調に関する本を買ったな」と懐かしく思いながら本棚を眺めてみた。
30年ほど前、全く知識も経験もない仕事に変わったとき、不安を口にする私に上司はこう言ってくれた。
「原理原則は本が教えてくれる」
だから分からないことに出会うたび、私は本を買って勉強をした。でも仕事も変わった今はもう、この本棚に並ぶ本を読むことはない。そう思いながら本棚を眺めていたら、ものすごく気になるタイトルの本が数冊、目に飛び込んできた。どれも動物の謎に迫る本だ。「なぜ動物は迷わずに道をみつけられるのか?」とか、「カラスはなぜ遊ぶのか?」とか、別に知らなくてもいいことなのに気になる。知らなくてもいいことだけど、知っていたら楽しそうだ。
さらに横の棚に目をやると、これまた思わず手にとりたくなるような表紙の本がある。中を開くと「リトマス試験紙の製造工程」や「ピンセットの製造工程」などがマンガで描かれている。思わず、「へぇ」の連発である。萌える。立ち読みだけでは物足りない。
「あぁ、もうこれも、これも買ってしまえ!」
そうして気づくと購入した本は10冊になっていた。
本屋に行かなければ出会わなかった本。それは、私が自分で気づいていなかった「私の好奇心」に気づかせてくれた。昔、インターネットなどなかった頃、私にとっての情報源は本屋だった。その後、インターネットが使えるようになってからも、何かに悩んでいたり、解決したいことがあると本屋に行った。だから、自分の本棚は、私のこれまでの人生の「悩みと不安の歴史」そのものだった。マネジメントに悩んだ時に買った本、自分の進む道に迷った時に買った本、中国語を上達させたくて買い漁った本……。それらは全て、目的があって買った本だった。
でも、本屋でふと気になって手に取った本の中には、自分の悩みや不安とは関係のない本もある。「なぜ、この本を?」と思う。何だかわからないけれど面白そうだと感じたり、知りたいと思ったから手にとったというだけだ。でも、そこから見えてきたのは、自分の気づいていない自分の一面を、本を通して知ることができるということだ。これは色々なジャンルの本が一堂に集まっていて、なおかつ、ザッと見渡せる本屋だからできることだ。
そういうわけで、私は本屋の楽しみ方を見つけてしまった。お金のかかりそうな「危険な沼」だ。でも、自分がどんな本に心が動くのかを観察していけば、まだまだ知らない自分を発見できる。自分の本棚も「悩みと不安」だけでなく、「好奇心や嗜好」で満たされていったなら、今よりもっと人生を楽しんでいる自分になっているに違いない。
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