メディアグランプリ

ネット通販でアカウントを乗っ取られてドローンを買われた話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小畑 泉彦(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「お買い上げありがとうございます」
メールチェックをしていた私の手が止まった。送信元は見慣れないショップ名だ。はて、何か買ったっけ? 通販サイトでの買い物は日常の一部になっているが、自分が利用した店を簡単に忘れたりはしない。記憶をさかのぼってみたが、やはり身に覚えのないショップだった。
 
店側の誤送信の可能性もあるが、アカウント乗っ取りで高額な買い物をされてしまうという怖い話もよく聞く。恐る恐るメールを開いてみると、悪い予感は的中してしまった。
 
「商品名:ドローン 金額:6万円 配送済み」
 
やられた! 私は戦慄した。酔っ払ってもうっかりドローンを買ったりはしない。他人事だと思っていた乗っ取りが我が身に起こるとは。どのアカウントだろう? よく利用しているサイトにログインしてみると、確かに先ほどの店から購入した履歴があった。なんてこった。
 
すぐにパスワードを変更し、他の記録も確認したが被害はこの1件のみだった。それにしても6万円……それだけあったらドローンが買えるじゃないか(買われている)。とにかくこの状況をなんとかせねば。私はショップに問い合わせてみることにした。
 
アカウントを乗っ取られたこと、この買い物は自分の意思ではないこと、できれば返金して欲しいことを伝えるメールを送ると、すぐに同店のカスタマーサポートから返信があった。客商売はスピードが大事だ。
 
「まずはお使いのアカウント運営会社に問い合わせてください。事実確認が取れ次第対応させていただきます」
 
このショップのサイトで直接クレジットカードを利用した訳ではなく、決済代行アカウント(最近よくある○○Payの類)を経由して購入されているため、簡単には対応できないということらしい。次に乗っ取られたアカウントの運営会社に問い合わせを送ったところ、こちらもすぐ返信があった。やはり客商売はスピードが大事だ。
 
「当社では決済の代行のみをしているため、請求の停止や支払いの拒否はクレジットカード会社に直接相談してください」
 
たらい回しにされている感覚はあったが、カード会社に連絡するため再び購入履歴を確認したところ、私はカード情報に違和感を覚えた。
 
この番号のカード、持っていたっけ……?
 
財布から引っ張り出したどのカードとも番号が一致しないのだ。犯人が私のアカウントを使って自分のカードで決済した? いやそうではないだろう。恐らく私のアカウントを乗っ取った上で、さらに別の誰かのカード情報で決済したのだ。何のために?
 
状況を整理するとこの二重構造は実に巧妙な手口だった。まずカードの持ち主に決済が行われる。しかし直接ショップのサイトでカードを使用したのではなく、他人(私)の決済代行アカウントで処理されたため、明細には店名ではなく「提携サイト」と表示される。これではどこで何を買ったかすぐ特定できない。一方、決済代行アカウントの持ち主である私は購入内容を特定できるものの、自分のカードではないためカード会社に問い合わせられないのだ。カードの持ち主が気づいて請求を停止すればよいが、明細をチェックしない人ならこのまま引き落としが実行されてしまうだろう。私自身に金銭的被害は無いが、これでは犯人の思うつぼではないか。
 
ちなみに購入情報には配送先住所が記載されており、他人のカードで購入された6万円のドローンは愛知県某市のアパートに送られていた。Googleマップに入力すると実在する場所だ。いっそ刑事ドラマのように乗り込んでやろうか。事件は現場で起きているのだ。しかし犯罪組織のアジトだったりしたら身の安全に関わりかねない。私は正義の鉄槌を下すことができず、やり場のない怒りに身もだえた。
 
その後のカスタマーサポートとのやりとりによると、最近この手の被害が増えており対応に手を焼いているとのことだった。ネットで気軽に買い物ができる便利な世の中になった反面、その仕組みを悪用するダークサイドの連中もいるのだ。
 
結局、カードの持ち主に連絡を取る手段がない私の事件は迷宮入りしてしまった。総務省の「不正アクセス行為の発生状況」によれば、令和2年における不正アクセス行為の認知件数は2806件とある。これは実際に被害届が受理されたものが中心なので、今回のように闇に埋もれたケースも含めるとかなりの数になりそうだ。
 
事件を解決できなかった無力な私にできることといえば、これを読んでいるみなさんへの注意喚起くらいである。ぜひ今後は使用しているパスワードをこまめに変更し、クレジットカードの利用履歴に怪しいものがないかチェックする習慣をつけて欲しい。こうしている間にも不正は行われているかもしれない。カード利用が多い人にとっては面倒なことだが、このような被害を未然に防ぐことができるなら、私の経験も少しは報われるというものだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-08-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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