着物と出会ったことで人生が変わった
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:加藤栄里(ライティング・ゼミ6月コース)
人生が変わったきっかけの一つに着物がある。
成人式の時に着物を着なかった私が、今着物を着て楽しんでいる。
そして着物に関する仕事もしている。
着付けを教えたり人に着物を着せたり、着物のイベントを運営したり、着物にまつわるいろんなことをやっている。
伝統的なものだから着物を残そうとか、そういう大それた思いは実はない。
着物って面白い、ただそれだけで着物に関わっているといっても過言ではない。
こう書くと着物にどっぷりのように見えるが、元々着物には興味がなかった。
成人式の時には振袖を着なかった。
みんなと同じような派手な着物や髪型をするのが嫌で、派手なワンピースを着て出席したくらいだ。
人と同じ格好をするのが嫌だったというのが一番だ。
そんな私がなぜ着物に興味を持ったのかというと、洋服に困ったからである。
20代半ばに友人の結婚式ラッシュが続いて、着る服に困ったのだ。
ひらひらのワンピース姿が似合わず自信を持てない。
ヒールの靴が痛い。
流行の服をそんなにいくつも買えない。
アクセサリーをどうしていいか分からない。
個性が迷走する。
いろんなことに悩んでいた。
そんな時、友人が結婚式の二次会に着物で出席した時の写真を見せてくれた。
そこには私が知っている着物は写っていなかった。
シンプルな色でとてもスッキリモダンな着物姿が目に入り、
「こんな着物があるんだ?!」とびっくりした。
一瞬で「着物を着たい!」と心が変わったのだ。
そこから本屋で着物の雑誌を買って情報収集をした。
どこで着物が買えるのか?
どこで着物が着られるようになるのか?
着物について色々知りたくなった。
ちょうどアンティーク着物の雑誌が創刊された事もあり、探していた情報がすぐ入ってきた。
また、着物の写真を見せてくれた友人のおかげで着付け教室も見つかり、早速通うことになった。
そこから私の着物生活はスタートした。
今思えばここが人生が変わったタイミングである。
実は実家に着物がたくさんあった。
それまで知らなかったのだが、母親が嫁入りの時に持たされた着物がたくさんあり、母とは似たような体型なのでほぼ全部着られる。
買わなくていいならラッキーだ。
実家は遠方だったので、ひとまず着付け教室に通うための着物は近くの伯母から借りることができた。
父方の祖母が和裁士であったり、母方の祖父がかつて帯屋さんで仕事をしていたりと着物のつながりも判明した。
そうしていつの間にか着物が趣味になり、着物友達もできた。
夫との出会いも着物がきっかけだ。
着付けも納得がいくまでいろんな着付け教室に通い、図書館で片っ端から着物の本を借りて読んだ。
知れば知るほど着物の世界は奥深い。
とにかく楽しくてのめり込んでいった。
着物の検定試験を受けたり、着付け教室で免状をもらい、着付け教室が開講できるまでになっていた。
見た目の形は同じなのにそれで個性が出せる着物を着るのが楽しかった。
コンプレックスだった体型を着物で隠せるというメリットもある。
結婚式に着物を着ていくと喜ばれるし、自分もテンションが上がる。
そういう感動体験が忘れられなくて、こんな楽しい着物、もっとたくさんの人に知って欲しいなと思うようになったのだ。
着付け教室を開講してみると、着物を着たいという方とたくさん出会うことができた。
着物に興味を持つきっかけは人それぞれ。
いろいろなきっかけがあって、着物が自分で着られるようになるといいなあ、と着付け教室に通うことを決める。
洋服とは違うちょっとめんどくさそうな着物。
着物に興味を持って自分で着て出かけてみたいと思うだけでも、今は珍しいのではないだろうか。
自分が着物を着ていると着物の珍しさに気づかなくなってしまうが、実際には着物を着る人はどんなにいない。
実際街を歩いていても着物の人と出会うことはほとんどない。
京都でも観光客やレンタル着物の方以外の着物の人に出会うことは珍しいくらいだ。
なんとなく着物っていいなと思っても、自分で着られるようになって、さらに月に一回だけでも着て出かけるというのはなかなかハードルが高いのである。
それは私が身をもって体験してきた。
着付け教室に通って着付けを覚えたものの、着物を着れない時期も長くあったのだ。
仕事が忙しくて毎日ヘトヘトだと、休みの日は寝て過ごしたい。
着物自体にエネルギーがあるのか、体や心の調子が悪いと着物を着れないのだ。
それでも着物が嫌になることはなく興味が尽きず、いつの間にか仕事にしている。
着物を広めたい、着物に関するイベントがしたい、とぼんやりした考えは着付け講師という切符を手に入れてさらに加速した。
着付け教室や出張着付け、レンタル着物店や着物メーカでのアルバイト、着物イベントの主催。
地元でもない土地でコネもなかったが、とにかく私にできることをやっていたら着物の人と認識されるようになった。
色々なつながりができて着物業界の方や同業の方のお手伝いをするようにもなった。
着物を着ていることで、個性も自信もなかった私の印象を変えるものになったのは間違いない。
着物が共通言語だというだけで人のつながりや世界が広がった。
この2年はコロナ禍で着付けの仕事が減り、勤めていたレンタルのお店が閉店した。
ガラッと仕事の形は変わった。
普段の生活で必要とされていない着物に関わっていることで悩みも増えた。
ただ着物に関する興味は尽きていない。
着物の仕事を始めて今年で8年。
自分の可能性はまだまだある。
着物でチャレンジできることもまだまだある。
さらに自分の世界を変えていきたい。
まだ着物に出会っていない誰かの世界も着物で変わるかもしれない。
着物はそのくらいの力があるものだと思う。
***
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