メディアグランプリ

普通のおじさんのお弁当が教えてくれること

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ウチヤマトモコ(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
私にはとても好きな本がある。「おべんとうの時間」というタイトルで写真家とライターのご夫婦が日本全国で老若男女がおべんとうを食べているところを撮影しインタビューしたものだ。たしかシリーズで2も出ている。最初は図書館でふと目に留まって借りたのだが、とても気に入って何度もそこで返しては借りなおしていた。何年か後に古本屋でたまたま見つけて迷わず手に入れた。それ以来、何度となく見返している。読むとほっこりと心が温まり明日も頑張ろうという気持ちになるのだ。
その本に載っているのは特別なおべんとうではない。卵焼きがあって焼鮭が入って、昨夜の残りものの煮物があって彩りにプチトマトが入って、みたいなごくごく普通のおべんとうだ。それを真上からドーンとアップで撮っている。レシピブックに載っているような、どうやって蓋閉めるの? みたいな立体感も、もちろん出来立てのシズル感もない。写真映えとはかけ離れている。
インタビューを受ける人も、いつもの仕事場でいつもの食堂で仕事着のままの姿だ。普通のおじさんがムスッと突っ立っていたり、おにぎりにかぶりついている。けれども何度見ても見飽きないのはなぜなのだろう。
インタビューの内容も至って普通。ドラマチックで泣ける話や爆笑エピソードもない。誰が作ってくれたか、なんでこのおかずが入っているのか、子供のころどんなおべんとうを作ってもらったか、その日の仕事内容は何か、などがその人の語った口調そのままに方言を交えて淡々と書かれている。
平凡なおべんとうを食べている普通の人たち。でも本の中にいるその人は、家族や職場の仲間に囲まれて毎日の仕事に力を尽くしていてとても幸せそうに見える。仕事は大変かもしれないし、家庭内で悩みもありそうだけれど、こんなおべんとうを毎日食べられているのなら大丈夫なんじゃないかと思えてくる。
写真や文章を目で追いながら、まるで自分がその場で一緒におべんとうを食べて昼休みを過ごしているような気持ちになってくる。そしていつの間にか頭の中で自分のストーリーを語り始めていることに気が付く。
 
今日の私のお昼はお弁当じゃなくてラーメンです。韓国の辛いインスタントラーメン。最近は韓国料理にハマっていて韓国式のゆで豚を作り置きしてあるので、チャーシューの代わりにそれを入れて野菜もたっぷり入れて食べるんです。コロナの影響で在宅ワークが増えて家で食べることも多くなったので節約と健康のために自炊を心掛けているんですけど、意外と忙しくてこんな食事の時もあるんですよ。
子供のころから料理が好きで、まだガスレンジに手が届かないころから踏み台に上って母の手伝いをしていました。実際は危なっかしくて母が冷や冷やしながら見守ってくれていたんだと思いますけど、自分としては母を助けているようなつもりだったんです。高校生の時には、姉の分までお弁当作りは私の役割でした。
今日はね、お客様の対応が立て込んでいてって言い訳するわけじゃないんですけど失敗してしまって……。
 
などと頭の中で仮想インタビューに答えながら自分自身を客観的に観察しているのだ。
仕事であんなことがあった、こんなに大変だったと思っていても、いつかこんな風にインタビューされることがあったら今の苦労もエピソードのひとつになっているのかもしれない。そして他人から見たら、お昼に大好きな韓国ラーメンを食べている私はただただ幸せそうに見えるのかもしれない。
誰にも会わず何の変化もない一日を過ごして自分だけが世界から忘れ去られたような気持ちになった夜、あるいは仕事で失敗して落ち込んで悲劇の主人公になりきって帰ってきた時、私はこの本を開く。
思い通りにいかないこともあったけど、今日は温かいごはんを食べて美味しいと思うことができた。他人に自慢して見せられるようなお洒落でヘルシーなご飯じゃなくても、私の身体はちゃんとエネルギーを吸収して喜んでいる。それを確認するために、普通のおじさんたちのおべんとうの時間を一緒に体験するのだ。
明日も仕事に行っておひるごはんを食べよう。何を食べてもどこで食べても、一緒に食べる人がいてもいなくても、とにかくそれができれば大丈夫なのだと、この本の中のおじさんたちが教えてくれている。
 
 
 
 
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2022-09-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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