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メディアグランプリ

絵が苦手な男のアートセラピー体験記


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小畑 泉彦(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 

「用意する物は、画用紙・クレヨン・ハサミ・のりです」
幼稚園児の荷物ではない。れっきとした大人(45歳)が準備した物である。友人が主催する「アートセラピー」の体験会で使用した備品だ。
 
セラピーとは薬や手術などによらない心理療法や物理療法のことだ。最近は○○セラピーの類が増えてきたように思う。アロマセラピー、アニマルセラピー、森林セラピーなど、ネットで検索すると世の中は実に多くのセラピーであふれている。今回体験したアートセラピーは、文字通りアートを通じた療法だ。
 
アートと聞いてすぐ思い浮かべるのは「美術」ではないだろうか(他にもアートの名を冠した某引越業者や、X JAPANが1993年にリリースした「アート・オブ・ライフ」という1曲で29分もある大曲を連想してしまうが、本稿では関係ない)。私は中学生時代、美術の成績がいつも悪く、アートと自分は縁のない世界だと思っていた。
 
一方で近年「アート思考」や「アート経営」など、学問やビジネスの世界でもアートという言葉をよく聞くようになった。アートは意外と私たちの日常に近い存在なのかもしれない。
 
体験会はテーマに沿って思ったこと、感じたことを自由に表現するという内容だ。もし画力を数値化できるとしたら、私のそれは全国平均を下回るだろう。しかしそんな絵心皆無の諸氏もご安心あれ。アートセラピーに絵の上手・下手は一切関係ないそうだ。何を描いても否定や批判を受ける心配はないし、炎上することもない。心理的に安心した状態で臨むことができる場で、主催の友人を含めた三人で取り組むことになった。
 
今回は「ビジョンの木」というテーマで、単に画用紙に絵を描くだけでなく、それをハサミで切ってみたり、のりで貼ってみたりして立体的に表現してもOKだという。自由度はかなり高い。てっきりハサミは証拠隠滅で画用紙を切り刻むためのものかと思ったが違うようだ。
 
最初にまず「種」を描くことになった。木が主題だが、その元となる種を描くのだ。私は種と聞いた瞬間に梅干しの種が頭に浮かび(前日飲み屋のシメに梅茶漬けを食べていた)、画用紙いっぱいにそれを模した絵を描いた。このサイズの梅干しがあるとしたら遺伝子操作かマッドサイエンティストによる狂気の研究しか考えられない。ちなみに私以外の二人は色鮮やかで独創的な種を描いていた。同じテーマでもこうしてアウトプットが異なるのは面白い。お互いに感想を述べてフィードバックし合うことで気づきも多く得られるのだ。
 
次はその種を植える「土」を描くというお題だ。私は画用紙を茶色やそれに近い色をふんだんに使って埋め尽くした。だって土だし。この発想の貧困さが私らしい。他の二人は土という前提にとらわれずに多くの色を配したカラフルな絵を描いていた。私は自分の発想の貧しさに赤面、いやむしろ顔が土気色になりそうだったが(飲み過ぎて肝臓が弱っている可能性)、ここは自由な場だ。それぞれの土があってよいのだ。
 
そして最後のお題。これまで描いた「種」を「土」に植え、そこに咲く「花(木)」を描くという総仕上げである。
 
花か……
大学時代のバイト先でギャルっぽい女性店員がポスターを作るときに花の絵をよく描いていた。あの感じにしてみよう。曖昧な思い出の曖昧な解像度で頭に浮かんだ花を参考に手を動かす。花びらの色は可愛らしくピンクで決まりだ。
 
クレヨンに手を伸ばしかけて私はハッとした。ピンクが無い。通販でケチって安い12色セットにしたのがよくなかった。でもここは絶対ピンクにしたい。思い出はセピア色ではなくピンク色なのだ(いやらしい意味ではなく)。
 
「しまった。ピンクが無い……」とつぶやくと主催の友人が「クレヨンは色を重ねられるんですよ」と教えてくれた。どれどれと、赤と白のクレヨンを重ねて塗ってみると、本当にうっすらとピンク色になった。クレヨンに触れたのは幼少期以来だったが、重ねることができるとは知らなかった。
 
こうして無事にピンクを配色した花を描くことに成功した私は、先ほどの「土」と今回の「花」を合体させた作品に仕上げた。みんなそれぞれ個性的な花を完成させていた。ここまでの時間は約90分、あっという間だった。すっかり夢中になっていたようだ。パソコンやスマートフォンに触れずこうしてクレヨンと画用紙で過ごす時間もたまにはいい。ある種のデジタルデトックスとして、これだけでもセラピー効果はありそうだ。
 
思えば私はいつから絵を描くことを避けるようになったのだろう。学校ではどうしても評価の枠に組み込まれてしまう。そういう場所なので仕方ないが、そこで苦手意識を持ってしまう人も多いのではないか。本来絵なんて自由に描いてよいのだ。心のままに。ありのままに。みんな違っていい。
 
あなたも今度の休日に画用紙とクレヨンを手に取ってみてはいかがだろうか。まだまだ先の見えないコロナ禍だが、絵を描くことで気持ちが少しでも晴れやかになればそれはあなたにとってのセラピーになるかもしれない。

 
 
 
 
***
 
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2022-09-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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