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動物が苦手な私に馬が教えてくれたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:板井さやか(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
私は動物が苦手だ。
ペットである犬、猫、小さいハムスターから動物園にいる大きな動物たちも区別なく恐れている。
子供時代に向かいの家に10年以上いたビーグル犬は2~3回しか触ったことがなかったし、
同級生の家で生まれたばかりのまだ目も開いていない子犬に会った時も、手のひらに乗せているだけでパニックになりそうだったほどだ。
今でこそ、小さな室内犬は触れるようになったが、どんなに小さくても怖いものは怖い。
そんな私が乗馬を体験することになった。
 
過去にも1度だけ乗馬体験をしたことがあるが、その時は手綱を牧場の人が持ち馬をひき、ゆっくりとパドックの中を1周する、ただお客さんとして馬の背中に座っているだけのものだった。
しかし、今回は自分で手綱を持ち、パドックから飛び出し、森でトレッキングするものである。
 
乗馬体験の地は馬産地として有名な北海道日高地方である。
訪れた乗馬クラブには約15頭の馬がおり、それぞれの厩舎には名前、品種、性別、毛色、生年月日、両親の名前など個人(個馬?)情報が全開の紹介看板があった。
 
馬たちはそれぞれに個性があり、乗馬体験が始まるまでの間「この子は毛並みがきれい」、「この子は目がかわいい」などと感想を言い合う。
しかし、内心私は非常にビビっていた。
当たり前だが、馬が大きいのだ。
正直、想像していた1.5倍は大きい。
「こんなに大きい言葉の通じない生き物に自力で乗るなんて無理……」と始まるから泣きそうだ。
 
そんな自信喪失した状態で乗馬体験はスタートした。
まずは、相棒になる馬を決める。
私を乗せてくれるのは「シチーさん」という馬だ。
シチーさんのお父さんはG1日本ダービーで優勝したことのあるキングカメハメハさんである。
子どもであるシチーさんも立派な競走馬で、総収得賞金は2億6,000万円と日本人の平均生涯年収を稼いでいるという。
まさにサラブレッド。
 
相棒が決まったら、インストラクターに手伝ってもらい鞍に座る。
視界が高い!
馬の背中の高さが約1.5メートルもあるので、私の頭は地上2メートル以上の位置にある。
その間も馬は左右に揺れたり、頭を振ったりするのでグラグラする。
何もしてないのに、もう怖い!
 
馬に乗ってもすぐに森には出られないので、まずはパドック内で進んだり止まったりする練習だ。
進めの合図は足でお腹の横を軽く蹴る、止まれのときは手綱を引きましょうと車座の状態で教わる。
ここで相棒のシチーさんが突然前に進み出した。
教わったことを思い出し手綱を引くと、今度は前を向いたまま後ろに下がり続けている。
パニック!
インストラクターに言われた通り手綱を緩めると止まってくれた。
前途多難である。
 
乗馬クラブの馬たちは頭が良いので、列になった時に前の馬についていくよう訓練されている。
パドックの中を列になって何周かした。
ここで同じグループだった体験の人が「怖い。もうダメ、やめる」と震える声でギブアップした。
正直、私も同じ気持ちだ。
恐怖心が大きすぎて、できることならギブアップしたい!
でも「父も楽しみにしていたし、今日は早起きして遠いところ遥々やって来たし、体験料金も安くはない」と自分に言い聞かせる。
 
いよいよパドックを出て森の中でのトレッキングだ。
自分ではそんなつもりはないのに、外からは緊張してガチガチなのが丸見えだったようで、
先頭を行くインストラクターからも後ろの馬に乗っている父からも「力を抜いてー、リラックス!」と何度も言われる。
パドックの外に出ても、相棒のシチーさんは前を行くスギノさん(サラブレッド。乗っているのは母)の後ろを静かについて行く。
なんと賢いのだろう。
言葉で「前の馬について行ってください」と言わなくても、ちゃんとお願いしたことをしてくれるのだ。
しばらく乗っていると、冷静になれて「こんなに頭のいい馬に私が何かをする必要がない」ということに気付いた。
突然やって来た体重50kgの知らない人間を背中に乗せて、30分もトレッキングするなんて偉い!
私の気持ちは「怖い」という恐れから、「すごい!」という馬に対する尊敬に変わった。
そして「私が馬に乗っているのではなく、馬が私を乗せてくれている」と思うようにしたら、一気に気が楽になり、乗馬が楽しくなった。
森の木々や周りの景色も楽しめる余裕が出てきた。
倒れた木を飛び越えるリズム、下り坂上り坂でのスピードアップ、前の馬と離れた距離を縮めるための駆け足、馬のその瞬間の状態を一緒に体験することはとても幸せだった。
人間ひとりでは決して経験できないその高さや速さだけでなく、動物が持つ能力の高さを知ることができた。
そうか、動物は人間ひとりでは経験できない何かを知っているのか。
 
動物が苦手な理由には、言葉が通じなくて意思疎通ができないので怖いというのもあった。
私はシチーさんと「はじめまして。よろしくね」と「ありがとう」以外の言葉は交わさなかったが、言葉がなくても敬意を持つことで伝わったことがあったと思う。
それぞれの動物はきっと人間が経験できない何かを知っているはずだ、今度動物に会うときは「私の知らないことを知っている生き物」という敬意をもって接してみようと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-09-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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