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時空を超えて届いた『君の名は』の招待状【ネタバレ注意】


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記事:赤羽かなえ(ライティング実践教室)
 
 
※一部ネタバレにご注意ください
 
きっかけは、1枚のはがきサイズのカードだった。
夫の部屋に無造作に置かれていて、その鮮やかな色が目に留まって、ふと手に取った。
 
『新海誠IMAX映画祭』と縦書きの明朝体の文字が目に入り、絵が新海作品であることを確認して、納得した。そりゃあ、美しいわけだ。
 
カードには3作品の映像が切り取られて載っていた。11月の新作公開に向けた記念イベントなんだな。
 
結局、『君の名は』を見逃したんだよなあ……。何年前だっけ。あの時は、友達が息子を連れて行ってくれたんだった。『すごいおもしろかった!』って興奮しながら帰ってきたのに、息子が話すあらすじがあまりにも意味不明であきれてしまった。そのせいだったか見なくてもいいかなと思って、なんとなく気になったまま放置していたな。
 
夕食の時に、「そう言えば、『君の名は』を見てきたんだけど、やっぱりIMAXはいいなあ」と夫が言い始めた。作品じゃなくてIMAXを褒めてない?! と心の中でツッコミを入れる。
 
「うん、『君の名は』は、めっちゃおもしろかった。あれ、見たのは小学2年生くらいだったかな」中2の息子が夫の言葉に答えた時、箸が止まってまじまじと息子を見てしまった。
 
「もう、そんな前だった?」「うん」「嘘だぁ」
 
そんなやり取りをしていたら、夫が、スマホに目を落とし「2016年らしいよ」と口をはさんできた。
 
怖っ、もう6年も経ってるのか。気になっている気持ちはいつまでも新しいのに。長女がちょうど学校の秋休みで暇だと言っていたし、見てみようか。
 
開始時間ギリギリに映画館に滑り込む。座席に座った瞬間にIMAXシアターの恩着せがましい自己アピールが始まった。IMAXは元気な小学生男子みたい。確かに臨場感があってすごいと思うけれど、やたらめったら自画自賛してくるのがちょっぴりウザイ。
 
でも、実際に始まったら、やっぱりIMAXで見てよかったと実感する。夫の言い分が腑に落ちた。少しずつからくりが解き明かされながら、時には騙されながら、深く話の中に入り込んでいく。その過程に、IMAXの臨場感のある音響と画像は大いに役に立ってくれた。
 
いい映画を見終わった後は世界観から抜けきれなくてボーっとする。そんな心地よさも感じながら映画館を後にした。
 
なんで、今さら『君の名は』を見ることができたんだろう。でも、今のタイミングが一番しっくり来た。ちょうど自分が過渡期に来ている実感がある。夏くらいから、いつまでに○○をするという形でもう少し先の目標を沢山書き出す機会があったり、自分の未来を描き出そうという講座を受けたり、今ではなくて未来に向けての目標を意識する機会が多くなった。6年前の上映時を振り返ってみると、当時は末っ子を妊娠していてその時を生きることが精一杯だった。仮に息子が気の利いたあらすじを言ってくれて映画館に足を運んだとしても、この映画を全然違うように受け取っただろう。
 
すっかり『君の名は』の世界に迷い込んだような感覚になる。印象的なセリフに『寄り集まって、形を作って、捻れて絡まって、時には戻って、また繋がってーそれが“結び”、それが“時間”』という言葉があって、それが私の時間の中にも起こっている気がする。
 
なんで、あの時は見に行かなかったのか、なんで、今見に行けたのか。
 
今回は、夫からの話を聞いて、たまたま娘のお休みが重なって予定が空いていたから見に行けた。でも、それって本当に偶然、なのか? もしかしたら、時間も場所も超えて関わることもないはずの人が、今の私に『君の名は』を見てほしいって願ってくれていたりして……。
 
ふと妄想しながら苦笑する。そんなわけないじゃん、ただの新海監督の新作のプロモーションだよ。そんなのわかってる、そんなの分かっているんだけど、私も、過去や未来の時間の中を生きているんだから、そんなことがあっても面白いんじゃないかって思ってしまう。
 
『君の名は』を見ながら、哲学者森信三さんの「人間は一生のうちに逢うべき人には必ず逢える。しかも、一瞬早すぎず、一瞬遅すぎない時に」という言葉を思い出した。私の周りには、一生すれ違うこともない人も沢山いるけれど、そういう人達も、もしかするとお互いに知らず知らずのうちに人生に影響し合っているかもしれないし、必要だったら時空も飛び超えて会うこともできるのかもしれない。
 
映画でフィクションの話なのは分かっている。でも、細くてはかない縁の糸が沢山繋がり合って、今の自分の元に映画の招待状が届いていた気がした。手元にもらったポストカードをもう一度眺めた時、不意打ちに涙がわきあがった。私も、まだ見ぬ誰かのもとに『君の名は』の招待状が届くようにそっと祈ってみよう。
 
 
 
 
***
 
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2022-10-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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