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素人による本気の余興 〜嵐・Happiness編〜


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:井上遥(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
結婚式の余興をやることになった。昨年の秋のことである。
 
新郎から「余興をやるから協力してほしい」とグループLINEに投稿があったとき、私は「ついに来たか……!」と身震いした。というのも、新郎は常々「結婚式では絶対に余興をやりたい。みんな協力してくれな」と言っていたからだ。余興=素人がゆる〜くスベるイベント、という偏見を持っていた私はあまり乗り気ではなかったが、友人たちは「任せとけ」「何やる?」と本気モード。さすがにここで「クイズ大会とかでいいんじゃないの」と無粋なことは言い出せない。私も「いっちょ……やったりますかァ!」と気持ちを固め、作戦会議が開始された。
 
 
 
演目はこうだ。
① 新郎+友人一同が覆面とマントで正体を隠し、登場
② 歌い、踊る
③ 歌声と踊りから新婦に誰が新郎かを当ててもらい「真実の愛、ここにあり!」と会場に知らしめる
④ HAPPY END!
某動画配信サービスの人気番組丸パクリではあるが、なかなかいいアイデアだ。ド素人集団が余興をそれなりに見れるものにするなら、とにかく歌うか踊っていればいい。無理に会場の笑いを取ろうとしてとんでもない空気を生み出した挙句、司会の「素敵なパフォーマンスでしたね〜」という誰もが一瞬で嘘とわかる一言を聞くのは御免被りたい。
 
さて、肝心の歌う曲である。誰もが分かる曲がいい、内容も明るいものがいい、歌うパートが別れているといい、ダンスも簡単なものがいい……。夢はどんどん膨らんでいき、LINEの通知は鳴り止まない。ひとしきり各々の要望が出揃ったところで、「嵐の『Happiness』はどう?」と友人の一人が言った。膨らみ続けてパンク寸前となった夢を現実のものとして着地させるのに文句なしの選曲である。満場一致で決定した後、新郎が「じゃあ、Aさんは歌が上手いからサビのパート」「BくんはAメロのパートね」とテキパキ役割分担を進めていく。その流れは順調そのものであった。
 
そしていよいよ自分の番が来る。「じゃあ、あなたは……」さあ、どのパートが割り当てられるのか。マツジュンのパートだったらちょっとカッコ良すぎるかな〜〜〜でもオオノ君のパートは荷が重すぎるって〜〜〜とファンからしたら「何様?」と言われることこの上ない妄想を繰り広げていると、ヒュポッと通知音とともにメッセージが届いた。
 
 
「歌の途中のラップをよろしく!」
 
 
――Happinessに、ラップパートは、ない――。
 
 
初めは「あ〜はいはい、そういうジョークね? 『コラコラ〜〜! Happinessにラップパートはないデショ??』っていうツッコミ待ちね?」と思った。そう考えるのが自然だろう。しかし「Cは2番から歌い出す感じで!」「やっぱ新郎がサビを歌うのがいいんじゃない?」と何事もなかったように会話は続いていく。どうやら全員本気でHappinessにラップパートがあると信じて疑っていないらしい。
 
ここから「あのォ、ラップパートってなくないですか……?」と切り出すのは盛り上がりに水を差すようで忍びない。ことの成り行きを静観していると、なんとそのまま「じゃ、あとは各自練習しといて! 式の前日にみんなで合わせよう!」となり、解散となったのである。
 
何度も「嵐 Happiness 歌詞 ラップ」で検索してみるも、該当する情報はついぞ得られなかった。Google大先生にも分からないことがあるのかもしれないと思い、Twitterでも「嵐の『Happiness』にラップパートってありますか?」と投げかけた。しかし誰からも返答は来ず、自他ともに認める嵐ファンの友人から「いいね!」が一つ寄せられただけであった。何が「いいね!」なのか、理由を聞かせてほしい。頼むから。
 
 
 
結局そのまま私は「Happinessのラップパート担当」という幻の役割を任せられたまま式の前日を迎えることになる。その日、我々は新郎が宿泊しているホテルの一室に集まっていた。仕事が長引いた私が最後に入室すると、すでに私を除く全員で歌やダンスの振り付けの確認をしており、その完成度はお世辞にも高いとは言えないものの、新婦はじめ会場の皆さんを本気で楽しませたい(もしくは失態を晒したくない)という気迫が満ち満ちている。
 
「いい感じじゃ〜ん」「覆面被ってると、結構声がこもっちゃうな」「サビ前のとこ、もう一回振り付け確認していい?」と盛り上がっているところで、今、ここしかない! と一世一代の告白を伝えるかの如く切り出した。
 
「あのさ……。ラップパートって、なくない?」
 
「いや、そ〜なんだよね!」
 
新郎の思いのほか明るい(正確には、軽い)返答に「ですよね〜〜〜!」と安堵すると同時に、「するってえと、私の役割は一体?」という疑問が浮かび上がる。
そして、次の言葉に私は面食らうことになる。
 
 
「だからさ、司会やってくれない?」
 
 
エッ?!??!!
 
てっきり私は余興中の司会進行も式場のプロがやるもんだと思っていた。どこまでも受け身思考であるが、こればかりは私の考え方が正しいであろう。そうじゃないですか? 余興の歌やダンスがグダグダなのは百歩譲って「やあやあ、若者たちが頑張っているゾ」「微笑ましいことネ」で済まされるが、進行のグダグダは「マジで何?」というストレスしか生み出さない。何より後のプログラムに影響を与え、万が一、式の終了時間が後ろ倒しになったら延長料金という金銭が絡む尻拭いが発生しかねない。
 
しかし一方で「イケる」という確信もあった。学生時代、サークル活動の一環でイベントの司会進行役を務めたことは何度かあったし、何より司会用の台本があるはず。今となっては正真正銘幻のパートとなった「Happinessのラップ」を任された結果、前日まで何の練習もしてこなかった私にとっては、歌やダンスをこれから一晩かけて練習するよりもよっぽど楽なように思えた。
 
「オッケー。台本は?」
 
時間はないが、やるしかない。
腹を括って新郎に告げたその瞬間、私は今後こそ正真正銘面食らうことになる。
 
「ないよ〜」
 
“ない”ーー……?
 
「アドリブで、いい感じによろしく!」
 
“アドリブ”で“いい感じ”にーー……?
 
 
 
結論から言うと、余興は大成功を収めた。
皆様の期待を裏切って申し訳ない。
 
一晩かけた台本作成と猛練習、グタグタを温かく迎え入れてくださった参列者の皆様、新婦の機転、とりあえず流しておけばいい感じになる嵐のHappinessなどなど、成功要因が奇跡的に重なった上での大成功であった。大勢の前で歌とダンスを披露した新郎+友人一同は、それはそれは満足げであり、司会の務めを全うして憔悴しきった私を気づかう者は誰一人していなかった。式が終わり、会場を後にするところで参列者の一人に「余興の進行、上手でしたね」と声をかけていただいた時は思わずぎゅっ……と熱い抱擁を交わしたくなったが、「とんでもないです。新郎新婦が喜んでくれてよかったです」と大人な対応をした自分を誰か褒めてほしい。
 
 
 
その後も何度か結婚式に参加しているが、今では余興をやるところはほとんどない。あっても精々、新郎新婦へのメッセージVTRやビンゴ大会のようなちょっとしたゲームである。
そうした式に参加するたびに「人生一度の晴れ舞台の前日に、血眼で練習する新郎や友人はいなかったんだな」とホッとする。
そして心のどこかで、ほんのちょっぴり、確実に後悔することが目に見えているのにも関わらず、「また余興やりたいかも……」と思う自分がいるのだった。
 
 
 
 
***
 
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2022-10-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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