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年に一度、鹿児島の森の中で行われる「良き隣人たちの祭典」


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記事:福島かざり(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
鹿児島県南九州市でGOOD NEIGHBORS JAMBOREEと書いて、グッドネイバーズジャンボリー。通称、ジャンボリーと呼ばれる年に一度のイベントがある。
 
公式サイトには、「森の中の廃校で行われる、みんなでつくる文化祭」と書いてあるが、私はその雰囲気から勝手に「良き隣人たちの祭典」と呼んでいる。
 
2010年から始まり、2022年10月15日で13回目の開催となった。
 
私がジャンボリーを知ったのは、大学生活を送っていた2014年ごろ。誰に教えてもらったかは覚えていないけれど、年に一度、鹿児島の森の中で音楽や食事を楽しむフェス的なイベントが開催されているという話しを聞いたことがあった。
 
当時はどちらかというと引きこもりがちな生活をしていたので、「わざわざ人の多いところ行くなんて……」と大して興味も湧かず、よくある世間話のひとつとして自分の中で消化していた。
 
それから5年後、紆余曲折あって同棲中のパートナーの発案で、南九州市に引っ越すことになった。南九州市は川辺(かわなべ)、知覧(ちらん)、頴娃(えい)の3町が合併して生まれた市で、私が暮らしはじめたのは頴娃という町。ジャンボリーが開催されているのは、隣町の川辺だった。
 
大学時代はひきこもりがちだったけれど、数年の社会人生活の中で外に出る機会も増えていた時期だったので、せっかくなら! とパートナーと一緒にジャンボリーに出かけてみることにした。私が引っ越した2019年は、ジャンボリーが10周年を迎えるアニバーサリーイヤーだったようで、ゲストとして小泉今日子の出演が決まっていた。
 
初めてジャンボリーの名前を耳にしてから5年後。
現地に到着した私は、その特別な空間に夢中になり、あっという間に好きになった。
 
ジャンボリーが開催されるのは、1990年に廃校となった小学校の建物と校庭。見下ろすように森が四方を囲んでいるせいか、昼夜の寒暖差がとても大きくなる。私が遊びに行った年は雨が降っていて、帰る頃には鼻水を啜るほどの寒さになっていた。
 
校舎は木造のものが残されていて、中に入ると独特の懐かしさに包まれる。校庭にはシンボルツリーとして親しまれていたであろう大きなクスノキが立っていて、子ども達の学舎だったころの雰囲気が感じられる。
 
会場には老若男女、さまざまな人が足を運んでいるようで、「人口3万人ほどの南九州市にこんなに人が集まるのか」と感心するほどだった。
 
出店のフードも種類豊富で、見た目も鮮やかで楽しいものばかり。ワークショップやアクティビティも選びきれないほど用意されていて、文化祭と呼ぶには充実しすぎているような。こんな素敵な催しが森の中で10年間も行われていたなんて、驚きである。
 
中でも心を奪われたのは、屋外ステージで変わるがわる出演するアーティスト達の演奏。青空の下で聴く音楽はどれも心地よくて、運動不足の体が自然とリズムを刻み、気づいたら隣の彼と体を揺らしあっていた。
 
そんな中、度肝を抜かれたのが民族楽器を中心としたパーカッショングループotto(おっと)と、ヴォイスグループorabu(おらぶ。鹿児島弁で叫ぶという意味)がひとつになったotto&orabu(おっとアンドおらぶ)というグループの演奏。
 
YouTubeで検索してもあまり出てこないが、過去にはファッションブランドnico and…で、菅田将暉と小松菜奈が出演する広告に使われるなど、知る人ぞ知る素敵なアーティスト集団である。
 
ピアノや木琴にヴァイオリンやチェロ、よく見ると見たことない形の楽器も混じっている。不揃いのようで調和があり、かと思えば耳が痛くなるほどの大きな音が奏でられ、これまで聞いたどの音楽にも当てはまらない不思議な演奏が続いていく。
 
歌詞はなく、顔をさまざまな色に塗ったorabuが叫ぶ声は言葉のようであり、言葉じゃない。何か意味があるのかもしれないけれど、それを知っている人は聞き手の中にはいないのではないだろうか。
 
文字通り、度肝を抜かれた。こんな風に文字で書いておきながら身も蓋もないが、あれは生で見ないと感じられない種類の感動を秘めている。
 
事実、ジャンボリーの演奏を聞いてあっという間にファンになった私は、別の会場のライブにも足を運び、CDを購入した。「あの演奏を家でも聞ける!」とウキウキして流したCDは、生の演奏とは比にならなかった。メロディーは同じで、CDなりの聞き応えはあるけれど、生の迫力には到底追いつかない。体に伝わる音の響きが違うのだ。
 
残念ながらコロナ禍に突入した2020年、2021年はotto&orabuの出演は無く、個人的に少しだけ物足りないジャンボリーだった。
 
そうして、コロナも落ち着きを見せ始めた2022年。
直前でotto&orabuの出演が決まり、慌ててチケットを購入した。あの感動をもう一度味わいたい! と意気込んで、出演の6時間前から会場入り。今年のフードも美味しいものばかりで、楽しい6時間を過ごすことができた。
 
ベストボジションを確保しようと、演奏の1時間前から場所を取り、待ちに待ったその瞬間。
 
いつか見たテレビで「フジロックのために1年間働いている」と話していた人がいたけれど、まさに私もそんな気持ちだった。
 
今時廃校利用なんて珍しくないかもしれない。けれど歌詞のない、不揃いだけど耳触りの良い演奏に包まれた1時間は、絶対にここにしかないと言い切れる感動だった。
 
電波も届かない鹿児島の森の中で年に一度行われる、良き隣人たちの祭典。
 
ジャンボリーで過ごす一日が残りの364日を支えている……はちょっと言い過ぎだけれど、来年のカレンダーの予定はすでに一日埋まった。
 
 
 
 
***
 
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2022-10-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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