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バーでカッコつけマンはもったいない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:カッコつけウーマン(ライティングゼミ8月コース)
 
 
重い扉を開けると、カランコロン、と音がすると同時に、
 
『いらっしゃいませ』
 
と素敵な笑顔でマスターが迎えてくれた。
 
いつも行くお気に入りのバーは本当に居心地が良い。お酒を注文し、煙草に火をつけ一服していると、マスターがシャカシャカとカクテルを作り始めた。私の注文したお酒ではない。ウイスキーのソーダ割をお願いしたはずだ。
 
 
 
『お隣のお客様からです』
 
 
カウンターの横で素敵な男性、もといイケオジが私に軽く挨拶をする。
 
『これは……?』
 
『恋が始まるカクテルです。ぜひ、あなたに飲んでいただきたくて』
 
みたいな事を私は経験した事はない。現実は最初の3行までだ。
お酒が好き。酒場が好き。素敵なバーテンダーさんの仕事を見るのは大好きだ。
 
人それぞれにバーの利用の目的は様々だ。バーで働き、バーで飲んでいると様々な人に会う。
その中で私がもったいない、バーをうまく活用できていない。と思う人が時々いる。
 
かっこつけマンである。
 
カッコつけに飲みに来る人を否定はしないし、
格好いい自分に酔いたい日だってある。だけどもし無理して格好つけて飲んでいるのだったら、とても勿体無いことだ。
新しいお酒との出会いが遠のいてしまう。
 
例えばの話だが、格好をつけて決まった銘柄のウイスキーしか飲まない人がいたとする。
もちろん自分の好みや落ち着く味という定番がある人も多いのだが、
自分はお酒に詳しくない、という事をバーテンダーに知られたくないから。という方もいる。
なので知っている銘柄しか注文しない。それはとても勿体無い。
 
だが知らないものに手を出すのは、なかなか勇気のいる事だ。
そんな時こそ、ぜひバーを活用してもらいたい。
 
飲んだことはないが気になるお酒を自分で試しに一本買うのはハードルが高いかもしれないが、
バーなら気軽に一杯飲んで試せるのがいいところだ。
気になるからと飲んだことのないウイスキーを1本買って飲んでみたものの、
好みが合わなくてほぼ丸々一本眠らせておくのは避けたいだろう。
 
ネットで検索すればいくらでも出る情報だって、
お酒のプロから直接生きた知恵を含めて聞く知識はまた全然違うものだし、そういった知識も一緒に飲むことによって味わいが違うことがあるから面白い。
 
 
世界には様々な人種がいるのと同様に、お酒にも様々なものがある。
 
ウイスキーでいうなら、作られた国で味が全然違う。原料や使う水が違うからだ。地球はとんでもなく大きいので地域でとれやすい原料や、水の特徴がある。
例としては日本の水は基本的に軟水だということは、これだけミネラルウォーターが世間に普及しているから知られているかと思うが、
それも細かく地域で分けるとまた場所により味が違う。地域で取れる原料の味が違うから、
出来上がる物もまたそれぞれ味が違うのだ。
 
色々と飲んでいくうちに最初は慣れなかったり味の違いがわからなくても、
初めて飲むものを色々と口にすることで舌が鍛えられていき、今まで知らなかった味を舌が覚えていく。
そしてほんのわずかに感じる味の違いや香りに気づくことができるようになり、
飲んだことのあるお酒の中にも、また新たな味わいを発見できる。
 
 
なぜここまで断言できるかというと私の実体験だからだ。
私もカッコつけマンだった。いや、カッコつけウーマンだった。
お酒はもともと飲めなかったのだが、飲めるようになりたくて最初は無理して飲んでいた。
戦後すぐの生まれの父の影響で、ビールと日本酒のみだ。
 
ほぼ同じ銘柄しか飲まなかったので、たまに違うものを飲んだとしても味の違いがわからなかった。お酒はすぐに好きになったけれど、様々なものを試してこなかったから、舌が鍛えられてこなかったのだ。
 
その私が縁あってバーで働くことになる。
 
ウイスキーなど飲んだことがなかったし、カクテルは女子が飲む甘いお酒。という偏見の塊で見ていた。
 
初めて飲んだウイスキーの水割はセメントのような味がして美味しくなかった。セメントを食べたことはないが、そういった感想だった……。自分で初めて作った素人のウイスキーの水割なので美味しいわけがない。
今思い出しても恥ずかしい話だが、その私が様々なウイスキーに挑戦していった結果、好きになるまでにそんなに時間はかからなかったから不思議だ。
色々なものを飲んでいくことで経験値を積み、知らない間にレベルアップしていた。
 
カクテルに関しては、本当に美味しいカクテルを飲んでこなかった、というのもあった。
美味しくない印象だったのだ。とはいえ仕事でカクテルを覚えるのだから飲まない訳にはいかないと腹をくくって飲んだカクテルは、とても美味しかった。
同じカクテルも作る人によって味が違い、その違いもまた奥深くて面白い。
 
美味しいお酒も、そうでないお酒も、色々と飲んでみる事で様々な味を知ることができた。
有名店の美味しいジントニックも、信頼するマスターのマティーニも、自分で作ったセメント味のウイスキーの水割の失敗作も。たくさん飲むことで舌が鍛えられた。
 
もしカッコつけウーマンのまま、
 
『自分、ビールと日本酒しか飲まないんで』
 
というスタンスだったら、いろんな味に出会う機会を逃してしまっていただろう。
そんなもったいない事、今では考えられない。まだまだ私の知らない味が沢山ある。
 
ぜひ、バーに行ったら飲んだことのないものを試してみていただきたい。
重い扉の先に、新しい世界がありますよ。
 
 
 
 
***
 
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2022-10-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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