【期間限定】宮島で70年に1度の体験をしに来んさい！
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか？賞を取れるのか？プロも通うのか？〜
記事：赤羽かなえ（ライティング実践教室）
コロナも2年以上経つと、その前の観光地がどんな様子だったかというのを忘れているものだ。
やけに車が混んでいた。
午前10時過ぎ、通勤ラッシュはひと段落したはずなのに、宮島に向かう道は渋滞していた。
まさか、アレに人が殺到していたりして……。
せっかく宮島に行くのに今日の目的が果たせなかったらどうしよう。
ノロノロとしか動かない車の列をちょっと落ち着かない気持ちで眺めていた。
「渋滞していたね！ 駐車場もハイシーズンの値段だった」
「平日なのに、スゴイ人だね。やっぱり人が戻ってきているねえ」
「そう言えば、今日休みにしちゃえば連休になるのか。だから子どもが沢山いるんだねえ」
フェリーの乗り場で友達と集合して、ファミリーがゆったりとフェリーに向かっていく横をすり抜けながら、出発口まで歩いていく。
ここ2年はフェリーもガラガラだった。
客の私としては、フェリーをチャーターして富豪気分で乗ることができたけれど、フェリー会社からしたら、200円もしない料金で貸し切りにされたらたまったものじゃなかっただろう。
世界遺産の宮島も、コロナのあおりを大きくくらっていた。
加えて、宮島はこの時期にもう一つ不運があった。コロナが世界中を駆け巡る半年ほど前に、大規模改修工事に入ったのだ。70年ぶりとのことらしいが、宮島のシンボルが工事の覆いに隠れてしまったのはとても残念な光景だった。
県外出身者の私は、友達が広島に遊びに来ると、必ず2つの世界遺産である原爆ドームと宮島を案内する。
フェリーに乗って海風に吹かれながら赤い大鳥居が近づいてくる様子はとても圧巻なのだ。それなのに、なんとその大鳥居が引きこもってしまったので、案内していても魅力半減だった。近づいても覆いに隠れている姿を少し残念そうに眺める様子に、広島を代表して謝りたい気分になってしまったくらい。
そんな大鳥居の覆いが、ついに外れた。
ニュースにも大きく取り上げられて、嬉しい限りだった。
その上、大鳥居のある厳島神社が、とあるサービスをしてくれるというニュースを見つけて、それに行きたいと宮島に向かったのだ。
大鳥居は、満潮になると、海の上にたたずんでいる。海水があるので、船に乗らなければ近くに寄ることができない。
海水がある状態でも工事作業ができるように、海岸から大鳥居まで工事用の足場が組まれている。その足場を解体する前に、一般客に開放してくれているのだ。
時間帯は、午前9時から正午まで、1日3時間のみ。期間は、2022年11月27日まで、なんと無料。これを逃したら、あと数十年は海の上を歩いて鳥居に近づくという体験はできない！
そんなニュースを見て思い立ってすぐに宮島に行ける立地に住んでいるのが嬉しい。
遠くから鳥居を見ると、その足場を渡っている人達は、まるでファッションショーのようだった。鳥居に向かってモデルのようにランウェイしていくのだ。ワクワクしながら私達もそのランウェイに参加した。
近づくと、目に鮮やかな朱色を塗られてリニューアルされた鳥居の大きさに圧倒された。前を歩いていたおじさんが、宮島マニアで、嬉しそうにうんちくを披露してくれる。マスクでもごもごとしゃべるから、内容は良く分からなかったのだけれど、広島人の気安さも久々で嬉しくなってしまう。
「しかし、せっかく来たのに残念だったよねえ！」
「あの足場、渡る意味がなかったもんねえ」
渡り終わってから、私達は苦笑いをするしかなかった。
想像したイメージでは青空の下、海の上を颯爽と歩くところなのだけれど、運悪く私達が行った日、その時間帯は見事な干潮だったのだ。
潮が引くと、砂地が出てくるので、実は大鳥居の下まで歩きで行けてしまう。なので、ランウェイはただ気分を味わいに行っただけ。
もちろん、事前に干潮だというのを調べてからいったので、仕方がないと分かっていたのだ。万が一に間違えて奇跡が起こらないかなあなんて思っていたんだけれど、さすがに無理だったなあ。
それでも2時間ほど、宮島を散歩しながら帰りのフェリーに乗り込んだ時には、清々しい気持ちでいっぱいになっていた。
宮島に久々に活気が戻ってきた。まるで鳥居が隠されていたタイミングを狙ってコロナ禍があったようだった。ノーマスクでの元の状態というわけにはいかなかったけれど、宮島ににぎわいが戻ってきたのはとても嬉しいことだ。このまま少しずつ活気のある宮島になりますように。
ぜひ、美しくなってお目見えした大鳥居を見に宮島においでてください。今の時期は紅葉も美しいんじゃけえ。
どうせなら、今だけじゃけえ、70年に1度あるかないかの海上を渡る体験をしてみんさい！
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