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初体験の文学フリマは、「握手会」だった


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記事:大橋秀喜(ライティング・ゼミ 10月コース)
 
 
「ここは、握手会だなあ」
文学作品の即売会「文学フリマ」に初めて行ってみたら、そう感じた。つい先日の11月20日、東京都内で開催された文学フリマ東京。サッカー場のような広すぎるスペースに、渾身の小説、エッセイ、評論がずらりと並ぶ! たくさんの読書好きが、手に抱えきれないほどの本を買っていく。ふと、ある疑問が浮かんだ。文学フリマは、なぜ人々をこんなにも夢中にさせるのか? その答えはすぐに分かった。作者がつくった本を手渡しで受け取った瞬間、私は作者と「握手」をしているのだった。
 
20日の東京は、あいにくの雨。東京モノレール「流通センター」駅から、大勢の人が、雨に濡れながら急いで「東京流通センター」に入っていく。きっと「雨に濡れても構わない!」と思える、夢中になる何かがあるのだ。公式の発表によると、今回の来場者数は出店者・来場者を合わせて、なんと7445人! 文学フリマ史上最高の数字を叩き出したという。さて文学フリマは、何がそんなに良いのか、何が人々を夢中にさせるのか、と聞かれれば、私は「手渡しの温もり」と「作者とのつながり」だ、と答える。
 
その日、私は何の本を買うかを特に決めずに、ふらっと1人で来場した。入場してしばらくは圧倒されていたが、段々と雰囲気に慣れてきて、特に好きなエッセイのコーナーをぶらぶらと歩く。「一人酒」と書かれた本を見つけて、思わず見てしまう。
 
「お酒は好きですか」と、その本の作者の女性が声をかけてくれた。
 
その方は、あちこちの居酒屋を一人で巡ったエッセイを販売していた。私は、お酒がかなーり好き。最近は控えめにしているが、サワーも日本酒もワインもビールも浴びるように、果てしないほど飲む。そして果てしないほど太るのだ。だから美味しい酒と美味しい食を楽しむマンガ、いわゆる「酒マンガ」も好き。特にラズウェル細木先生の人気作品「酒のほそ道」や、週間SPA!に連載されていた「月夜のグルメ」も好き。
  
つまり、何を言いたいかというと。その本は、私のツボに「ドンピシャ」だったのだ!
その女性からお話を聞くと、私と同じように酒好きだという。その酒への愛が創作意欲をかき立てている模様だった。その場でちらりと立ち読みした内容から、言葉のあちこちから、「酒への情熱」が感じられて嬉しくなった。
 
「これは買おう!」と、私は迷わず小銭を出した。すると、手渡しでそのエッセイを私に渡してくれる。その瞬間、ドキッとする。
 
ああ、これは「託された」のだと思った。「読んでね」という作者からのメッセージをその時、肌で感じた。それは電子書籍をAmazonで買う時とは全く違っていて、まさに対面で「握手」をしたような感覚。作者である相手の顔が見えて、相手の声を聞いて、本を受け取るとなんだか思いが伝わってくる。そして、「早くこの本を読みたい!」と感じさせてくれるものだった。
 
文学フリマには、そんな出会いがいっぱいある。このほかにも、Twitterで気になっていたある男性のエッセイを買ってみた。すると男性は「あの、買ってくれた理由を教えてください」と、率直な質問を投げかけてくれた。私は「Twitterでちらっと見て、すごく面白そうと思って」と緊張しながら答える。「ああ、買ってくれて嬉しいです」とその方は笑ってくれる。なんだか「託された」感じがする、こんな率直な声も聞くことができる。いいことをしたような気持ちになって、嬉しくなる。
  
なんだかもっともっとお金を使いたくなる体験だ、と発見した。アイドルのファンたちが、握手会で握手をするためにお金を使いたくなるのと同じ感覚なのかもしれない。
  
しかし現代は、「本」が壁に直面している。悲しいことだが地域の書店や出版業会などでは「紙の本がなかなか売れなくなった」という社会課題がある。その原因となったのが、「電子書籍」の台頭。私も電子書籍は便利さが大好きだ。いつでもどこでも買えるから便利だし、うまく紙と電子が「共存」していけばいいと思っている。しかし、現状で問題はどんどん深刻になっていて、地域の書店が力尽きている姿が見えてくる。私自身は今も出版関連の会社で働いているので「どうすれば紙の本は残るのか」「どうすれば紙の本が売れるか」ということを、日々ぼんやり考える。
 
ここで、文学フリマが教えてくれたことがある。紙の本の一つの強みは、「手渡し」できることだと思う。作者に会って、手渡しで本を受け取るということは、心を通わせて「握手」をしている感覚に近い。こんなにも嬉しくて楽しいものだ、ということを初めて知った。なぜ各地の書店で本のサイン会をするのか、サイン会にあんなに人が集まるのか、というのが今までよく分からなかったが、今回の体験でその理由が分かった。
 
文学フリマは2023年1月には京都、2月には広島で開催される予定だ。そして次の東京開催は2023年5月。普段、電子書籍ばかりで本を買う人、また普段あまり本を買わない人にこそ、一生に一度はぜひ文学フリマに足を運んでみてほしいと思う。自分の興味のある本にきっと巡り会えるはず。
 
そして、運命の本が見つかったら、作者と「握手」をする気持ちをぜひ味わってみてほしい。
 
 
 
 
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2022-11-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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