ご神託のようなおじさんの一言がきっかけで、うちの子になった「にゃんこ」の話
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記事:森野はるか(ライティング・ゼミ10月コース)
うちには猫がいる。
12歳メス、サバトラ。
性格:慎重・こわがり・人見知り。
私は特別、猫好きでもないし、猫を飼う人生になるなんて思ってもいなかった。
夫もしかり。
だからうちで猫と10年以上一緒に過ごしてきたのは、ただただ運命としか言いようがない。
そして、それを決定付けたのは見知らぬおじさんのご神託のような一言だった。
12年前の初夏、ベビーカーに乗った娘と幼稚園の説明会に行った帰り道だった。
どこからか、ミャーミャーと弱々しい鳴き声が聞こえてきた。
なになに?と見たら、民家のガレージの入口にとてもちいさな子猫がいた。
座り込んで、細い声でただただミャーミャーと鳴いていた。
民家のガレージとはいっても、すぐ目の前にガードレールがあり、そのすぐ先をスピードを出した車がバンバン走っている。子猫のいる場所からたった2メートル先だ。
ここに置いたままにしたらひかれちゃう、と手のひらに乗せて見ると、怪我でもしたのか、片目は開かず、片耳も傷だらけ。
毛もボサボサ、なんだか貧相で、お世辞にも可愛いとは言い難い様子。
ひとまずその民家や、周辺の家にピンポンして周り、子猫が逃げてないですかと聞いたけど、
どの家も、ウチじゃないと言うし、近所で子猫が生まれた家ありませんか?と聞いても、
「近所付き合いないから分からない」と。
どうしようか困っていた時、犬を連れたおじさんが歩いてきたので、近所のペット情報に詳しいかもと淡い期待で声をかけた。
「この子猫、ここにいたのですが、どこの猫かご存知ないですか?」
おじさんは子猫をじいっと覗き込んで、
「知らないねぇ」と言いつつ、二言三言話した後、
猫の頭をなでながら、おごそかに
「いい人に拾われてよかったね。幸せになるんだよ」
と言い残して立ち去った。
私はその言葉を聞くまで、ここに置いていったら車にひかれちゃう、と心配しつつも、
自分が飼うなんて全く念頭になかったので、
ポカンとして聞いていた。
いい人って私のこと? 私が猫飼うの? むりむりむり!と。
ひとまず里親を見つけてあげようと思い、その日はそのまま連れて帰った。
抱っこされて温かかったからか、電車やバスの中で子猫は大人しかった。
手のひらに乗るくらい小さかったので、ぬいぐるみに見えるのか、
ときどき「わ、本物!」「動いた!」と周囲の人がびっくりしていた。
獣医さんに連れて行ったら、生後およそ3週間。
ダニやノミの駆除や、ワクチン接種してもらいながら、基本的な猫の飼い方や里親探しの方法もレクチャーしてもらった。
そして、里親募集のポスターを作ったのだが……。
時折、頭をよぎったのは、おじさんの言葉。
「いい人に拾われてよかったね。幸せになるんだよ」
子猫は、餌をしっかり食べてしっかり眠れたのが良かったのか、
開かなかった片目は開き、怪我してボロボロに見えた耳はきれいに治り、毛艶も良くなった。
そうなると……子猫はとても可愛い。
乳幼児だった子どもたちと猫と、2人と1匹でよく遊んでいた。
どっちが遊んでるか分からないくらい、一緒になって転げ回っているようすを見ると、里子に出す気持ちがだんだんしぼみ、時間はどんどん過ぎていく。
結局3ヶ月経ったところで里子に出すのをあきらめ、ウチで飼うことになった。
おじさんの言っていた通りになってしまった。
ただ困ったのが、名前だ。
最初は里子に出すから、下手に名前を付けないほうがいいだろうと「にゃんこ」と呼んでいた。
でもうちの子になるなら、ちゃんと名前を付けてあげようと、家族で考えた。
そして決めた名前が「ルル」。
ところがだ。
たった3ヶ月家族みんなで、にゃんこ、にゃんこ、と呼びかけていたことにすっかり馴染んでしまったのか、
「きみは今日からルルよ」と伝えても分からないらしい。
「ルル」と何度呼んでも振り向かないのに、「にゃんこ」と呼ぶと振り返る。
自分の名前が「にゃんこ」だとしっかり認識していた。
数日間「ルル」とだけ呼ぶ、えさをあげる時に「ルル」と声をかけ続ける、など試してみたけれど、どうしても覚えてくれない。
最初の「にゃんこ」はすぐに覚えたのに。
という訳で、とうとう根負けし、子猫の名前は「にゃんこ」になった。
ウチに遊びに来た方が、猫いるの!と気付いて次に聞くのがだいたい「名前は?」。
名前がにゃんこ、と聞いて笑わなかった人はいないけど、それもこんな理由なのだ。
まぁ仕方ない。
これから猫を飼う人には、ちゃんと最初から名前つけてあげたほうがいいよ、とお伝えすることにしている。
そんなこんなでわが家の一員になってからもう12年、にゃんこは人見知りで、お客さんが来るとどこかの部屋に逃げ込んで隠れてしまうのに、夫や私の上には平気な顔で乗ってくる。
ベランダに出て猫草を食べるのが好きで、隙あらば出ようとする。
寝ている夫に飛び乗り、ふとんに潜り込むのが日課。
ふと見ると、家の中でいちばん日当たりの良い場所で寝ている。
夕飯の後はソファに座る私の膝に乗ってくるし、来ないと鳴いて呼ぶ。
そうやって気ままに家の中でくつろぐ姿は、羨ましいくらい自由で、そしてとても愛しい。
おじさんの一言で開けた猫との暮らし。
長生きしてほしいなぁと思っている。
***
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