メディアグランプリ

人生の大切なことは本に教わったけど、困りごともだいたい本のせいである。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:青梅博子(ライティングライブ東京会場)

あ、間に合わない。
本をめくりながら、ふと壁の時計を見あげて真っ青になった。

今から家を出ても、予定していた新幹線には間に合わない。
またやってしまった。
本が悪い。
そう、本が悪いのだ。

フリーランスでPC一つでどこでも仕事ができる身分になったので、ここ半年ほど、月の半分は自宅ではなく、行ったことのない土地でワーケーションを楽しんでいる。

先々週は一週間屋久島にいて、今は仙台に向かう新幹線でこれを書いている。

はじめは旅慣れず、荷物の梱包や何をもっていくかなど、散々悩んで、結果、必要なものを入れ忘れ、無駄なものを大量に持ち歩くようなことばかりやらかしていた。

しかし、半年もたてばそれなりに慣れて、荷造りもちやっちゃとできるようになってきた。

だが、一つだけどうしても、慣れないことがある。

それが「旅行にもっていく本のセレクト」だ。
一週間もの間、自宅には戻れないので、連れていく面子は厳選しなければならない。
しかして、やっぱりあの本が読みたい、となって、同じ本を二度買いしてしまうのも、馬鹿すぎる。
移動中、仕事の合間、食事中、寝る前と起きた後の、私の幸福、生きる糧。
さて、どの子を連れていくか。
私は、ゴクリと音をたてて唾を飲み込むと、部屋の真ん中の積読(つんどく)タワーに向かい合った。私は収入が入るたびに、財布をもって大型書店へ飛び込んで一万円くらい散在してしまうという悪癖があるので、積読の山は欠かしたことがない。この中からこの一週間のお楽しみをより抜いていくのだ。

セレクトせずとも、電子書籍で買っておけばiPadに何冊でもいれて運べるではないか。そう思うでしょう。そのとおりなのは嫌というほどわかっている。

電子書籍がこの世にあらわれたとき、これで続き物の文庫を常に複数冊持ち歩かなくても良くなり、本の続きも本屋まで走らずともすぐ買えると、その便利さ、素晴らしさに狂喜乱舞したものだった。

本棚のスペースも本の重みで家の床が抜ける心配もなくなると、実家を出て狭い賃貸に住み始めたとき、半分以上の本を電子に置き換え、以降の書籍購入は全て電子にした。おかげで今や4000冊ほどiPadに入ってはいる。しかし、私は電子書籍の致命的な欠点に気が付いたのだ。

電子書籍は貸し借りや転売ができない。

どんなにハズレ駄本を買ってしまっても、古本屋に持って行って、他の人の喜びのために再利用することも新しい本を買うための費用に転換することもできないのである。

今までは、3/1の金額くらいは、手元に戻ってきて、再び新しい本に生まれ変わっていたのだが、電子書籍はただただ、電子データとして蓄積されていくのみ。その上、人に貸すことも借りることもできないのである。

紙の本であれば貸し借りができる、先日も、読みたい本が人気で、図書館で予約待ちでなかなか借りれなかったときに、SNSで泣き言をいうと、その本を買っていた遠方の友人が、もう読み終わったからと送ってきてくれたのだ。それも、最近読んだオススメ本と一緒に詰め合わせてきてくれていた。それは目もくらまんばかりのキラキラのお宝であった。

これぞ、電子書籍では得られない醍醐味である。

実体があるものは、様々な人の手を経て時を重ねることによって、その「もの」に思いが宿り、唯一無二のものに変化していく、本などには特に思いが宿りやすいと思う。ページをめくる指先の感触、徐々に開いた右側が厚くなっていく達成感。左側に重なるページの厚みが少なくなるのを感じるたびに、この本世界からの離脱の時が近くなっているのを感じ、胸に迫る哀切と、クライマックスへの期待。
実体の本を抱きしめているとき、本の所有者は一つの世界を抱きしめているという幸福に胸をばくんばくんと、ときめかせる。

そんな理由で、結局、巻数の増えていきそうな雑誌やコミック、ラノベは電子で買い、あたりかハズレかわからず、手放しそうな予感がする本と、好きすぎて抱きしめたい本は紙で買うようになったのだった。

てなわけで、旅のお供という大役を果たすのは、たいがい紙の本となる。

今回の旅の行く先は東北で、宿のオーナーからくれぐれも防寒装備をと言われているので、トランクの隙間はあまりない。
ここに、厳選書籍をぎちぎちになるまで詰め込むのだ。

キラーンという擬音を伴い、私の選書眼が光を放つ。
あの子と、この子と、と選んでいくが場所はかぎられている。候補が二つ残り、どっちが心惹かれる内容か、購入の際に立ち読みはしているが、再度、もっと深く濃く理解を深めようとし、て、。

本格的にのめりこむように、読み始めちゃったのだった。

そして冒頭に戻る。

新幹線の発車時刻、まにあわないじゃん。と。

あわてて家を飛び出たところで、終電には間に合ったのだが、Wi-Fiが通じる宿に着くのは23時40分。本来なら19時について、悠々と執筆しているはずだったのに。

この投稿は締め切りに間に合うのだろうか。

全てが順調に進む人生において、だいたい私の予定を狂わすのは、本へのちよっと度合いが深すぎる愛なのである。困ったものだ。ホント。

***

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2022-12-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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