また搾取されたんですけど。
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:ゆか(ライティング・ゼミ10月コース)
「なんでいつもこうなるの……!」
私は、自分の人生に絶望した。どんなに傷付けられても、彼の全てを受け入れてきたつもりだった。この先どんなことがあっても、彼と一緒に過ごしていく覚悟をしていたからだ。しかし“また”、別れを告げられてしまった。
そう、“また”。私は過去にも、尽くしてきた人から別れを告げられ、深く傷付いた経験があったのだ。なんで私の恋愛はいつもこうなってしまうのだろう――。
彼との出会いは、マッチングアプリだった。整った顔に、細身な体型。趣味はスノーボードで、大会にもチャレンジしているとのこと。さわやかな雰囲気が漂うプロフィール写真と文章に惹かれ、連絡を取るようになった。
アプリでのメッセージのやりとりは順調そのもの。1カ月ほどメッセージのやりとりをした後に、いよいよ直接会うことになった。
マッチングアプリでの出会いにありがちなトラブルの一つに、写真と実物の相違が挙げられる。しかし初めて会った彼は、写真以上のさわやかイケメンだった……! はい、好きです。一目見たときから……いや、メッセージで良い雰囲気になっているときから、私の心は決まっていた。
お互いの仕事や趣味の話など、一通り基本情報を話し終えた後、過去の恋愛の話に。「今まで、どんな恋愛をしてきたんですか?」と私が尋ねたところ、彼はこのように答えたのである。「実はお恥ずかしながら、今まで彼女がいたことがなくて。でももう30歳だし、そろそろ彼女が欲しいと思ってるんだよね」。
30歳のイケメン。さらにいえば、彼は大手IT企業でシステムエンジニアとして勤めており、その収入は相当高いはず。いわゆるハイスペックといえるこの彼に、今まで彼女がいなかっただと……? これは何か理由があるなと不審に感じつつも、私にはもう彼しか見えていなかった。
少しだけ過去の話をさせてもらおう。私は、学生時代に初めて付き合った彼から、付き合う楽しさを教えてもらった。一緒にいればどんなことでも楽しかったし、つらいときには彼が親身になって励ましてくれた。もちろん、けんかすることもあったけれど、それ以上に二人でいることに幸せを感じていた。
だから、この30歳イケメンの彼が多少癖が強い人だったとしても、たとえ別れることになったとしても、「人と付き合うって楽しい」。私との交際を経て、そう思ってもらえたら良いな。そんな思いで、彼と付き合い始めたのである。
そしていざ付き合ってみて分かった彼の正体……。それは、「一人大好き人間」だったのだ!
超が付くほどのマイペースで、人の気持ちに無関心。私たちは電車で10分程度の距離に住んでいたが、会うのは月に1回程度。会っても彼から話題を出すことはほぼなく、私が質問をして彼が一言二言答える程度。何かをテーマに議論を深めるなんてことは一度もなかった。
そんな彼の様子に不安になった私は、あるとき彼に長文のラインを送った。彼からの返信は、「ごめん、よく分からない」の一言。さらには「相手に伝わりやすくするには文章は短い方が良いよ」なんてことを言われる始末。
確かに、簡潔に伝えることは大事。でも、それにしても……彼とコミュニケーションを取るのが難しすぎるんですけど~~! と悩みに悩む日々だった。しかし、どんな人とも価値観の違いはあるのだから、私が彼に寄り添い、なんとかやっていこう。そうして自分の気持ちを押し殺しながら付き合い始めて2年が経とうとしていた頃、彼から別れを告げられてしまったのである。
彼を理解しようと寄り添い続けた2年間。あまりにも苦しい日々だったが、「一人大好き人間の彼が、恋愛の楽しさを感じてくれたら……」。そんな期待をしていたが、彼はついに変わらなかった。私はまた、搾取されるだけの無駄の時間を過ごしてしまったようだ。
別れることが決まったその日、私たちは最後のやりとりをしていた。だらだらとラインが続かないよう、時間制限を設けた。「17時になったらラインをブロックするね」と私。すると彼は時間終了間際に、こんなことを言ったのである。
「初めて付き合ったのが、あなたで良かった。おかげで人と向き合うこと、相手を想って言葉を選ぶ大切さを学んだよ。ありがとう」。
私の2年間は、無駄ではなかった――。
私が彼に与えた愛情を、彼から返してもらうことはできなかった。しかし、彼がまた他の誰かに、彼なりの愛情を与えてくれればそれで良い。私は、心からそう思った。
今思い返しても、なんともしんどい恋愛だった。しかし彼から学んだ多くのことが、私の人生の肥やしになっている。
***
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