囲碁に突きつけられる自由のリスク
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記事:村人F (ライティング実践教室)
「囲碁は自由だ!」
名古屋天狼院の囲碁教室の先生である現役プロ、柳澤理志六段はそう熱く語っていた。
例えば将棋の場合、駒の動きは全て決まっている。
「歩」は1マス前、「飛車」は上下左右にしか動けない。
だからそのルールからはみ出すと反則負けになる。
先生はその縛りが嫌だったそうだ。
その点、囲碁は自由だ。
石の色さえ正しければどこに置いてもいい。
端も真ん中も全てOK。
だから大好きなんだと熱弁をふるっていた。
なるほど、確かに素晴らしい。
しかしその理論で行くと私は今、自由だから苦しみを味わっていることになる。
なぜなら初心者は「自由に打っていい」と言われても困るからである。
特に大変なのは序盤だ。
「1、 2手目は端から3番目くらいに打つとよい」というアドバイスはあるが、次からもう大海原へ放流されてしまう。
そんなことをされても、どこに置けばいいか皆目見当がつかないのだ。
思い出してほしい。
友達に「料理、何を作ればいい?」と聞いた時のことを。
これで一番イラッとする回答は「なんでもいい」ではないだろうか?
それが思いつかないから聞いているのに「自由にしろ」なんて最悪の返しだ。
つまり私は囲碁でこの状況を味わっているわけである。
そしてイライラしながら打ち続けていると、中盤に差し掛かった段階ですでに致命傷を負っている。
なにが「自由に打っていい」じゃ!
全然そんなことないではないか!
今もこう叫びながら最弱AIと戦い続けている。
しかし、これは自由であるがゆえのリスクを示しているように見えた。
そういえば私たちは知らないうちに自由は素晴らしい部分しかないような刷り込みをされている。
だが実際はどんな事柄にもメリットとデメリットがあるのだ。
ゆえに無思考で「自由最高」と言っているようでは、私のように自由な囲碁でボコボコにされるわけである。
だからこそ良い側面を得るために背負った代償について理解する必要があるだろう。
それは「どんな手も選べてしまう」ということだ。
これは「常に素晴らしい道を選べる」と考えるから、良いこと尽くめに聞こえる。
だが、実際はそうではない。
大悪手を選ぶ可能性もあるわけだ。
現に初心者の私が囲碁で打つ手は、ほぼ全て駄目である。
だから最弱AI相手でも全然勝てない。
このように自由には良い面がある一方で、そのために被る痛みもある。
つまりそれを意識して行動しない限り、メリットを感じないどころかデメリットにひたすら苦しめられることもあり得るのだ。
そう考えると囲碁教室に通えている今がとても幸運に思える。
なぜなら柳澤先生が言うように、自由が売りのゲームだからである。
つまりこの勉強をすることで、自由との正しい付き合い方も同時に学べるのだ。
そしてこの観点で講座を聞き囲碁を打ち、わかってきたことがある。
それは選択する根拠をどれだけ強く持てるかが大事ということだ。
目の前にはたくさんの道が広がっている。
例えば囲碁の盤には19×19本の線が書かれているから、石を置く場所にもそれだけの分岐があるわけだ。
しかし選べるのは、たったの1つである。
だからこそ、その道に進む理由を徹底的に考える必要があるのだ。
それが後悔、失敗を避ける手段になる。
この技術こそ囲碁で学べる真髄だろう。
例えば、打った後の状況を想像する。
「この石は取れるけれど、その後相手はどう打ってくるか」
そういうことを深く読み進めていくわけだ。
すると目先の餌に食いついたせいでサンドバッグのようにメッタ打ちを食らう可能性に気づけるわけだ。
他にも基本的な手筋を徹底的に覚えまくるのも必要だ。
これらこそ先人たちが編み出した成功する方法だからである。
そのため勉強すればするだけ強くなるのだ。
また自分だけでなく相手も納得できる言葉で選択の根拠を説明することも重要である。
このレベルで理由を持てれば、後悔も少なくなるし失敗の解析もスムーズに行うことができるからだ。
おそらく、これらの過程を気の遠くなるほど繰り返した先にあるのがプロの世界なのだろう。
実際、柳澤先生の説明は素人にもわかりやすい。
この手は3手後にカウンターパンチを食らうからダメ。
そこに打つと相手の狙いを潰すことができる。
このように局面の急所を言語化してくれるから、初心者でも納得できるわけだ。
そしてそんな芸当ができるのも生まれてから何千、いや何万局も囲碁を打ってきたからである。
この先生から直々に教えていただけるのは、本当に素晴らしいことだと思う。
これこそが最善手と胸を張れる選択である。
自由な囲碁での振る舞いは、初心者の私にはまだわからない。
それゆえ意味不明な場所に置いてボコボコにされる場面や、目の前の黄金を無視して泥沼にダイブすることもあるだろう。
しかし失敗から学び、次に生かせることこそが自由の素晴らしさである。
それを最大限に味わうための手法を、天狼院書店の囲碁教室で学んでいきたい。
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