オンラインでは気づかなかったリアル講座の効能
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:串間ひとみ(ライティング・ライブ福岡会場)
「やらかした……」
博多阪急のドンクの店頭に並んだガレット・デ・ロワを見て、とっさにそう思った。
『ガレット・デ・ロワ』というのは、フランスの伝統菓子で1月6日のエピファニー、日本語で公現祭と言われるキリスト教のお祝いに食べる。パイ生地の中にアーモンドクリームを詰めて焼いたものなのだが、その中にフェーブという陶器でできた人形が入っている。切り分けられたお菓子にフェーブが入っていた人は、その1年幸せに過ごせるという。ちなみにフェーブは間違って食べてしまうと危ないので、代わりにアーモンドなどで代用してあることが多い。
このお菓子は季節ものなので、有名なお店では年末に予約を終えて1月6に向けて発送されてくる。私はこのお菓子が大好きなので、できれば毎年違うところのものを予約して食べようと思っているのだが、おろかにもその予約を忘れていたのだ。
見てしまったからには食べたいので、クルミを入れて作ることにした。このお菓子の醍醐味はフェーブなので、せっかくなら誰かと切り分けて食べたい。ということで、思いついたのがライティング講座後の懇親会。何人来るかも分からなかったが、そこに持っていくことにした。
この日は最終回。ライティング講座の受講は3回目なのに、いまだにイマイチつかみきれていない。受講者からの質問に、これまでの講義をふまえて答えていく三浦さんの話す内容に、初めて聞いたかのように驚く自分に対して残念な気持ちになっていた。
これまでもそれなりに課題を出してきたのに、合格するときとそうでないときの違いが分からない。自分の手応え感と、フィードバックの間には結構な隔たりがあるように感じる。それらは書く量がまだまだ足りてからなのだと、今回初めてリアル授業を受けて理解できた。これまでも聞いてきたはずのことなのに、自分に落とし込むのにいい機会だった。自分にとってのオンラインとリアルでは同じ内容でも全然入り方が違うことを実感した。
懇親会では、食事をしながらざっくばらんに話をすることができる。その中で、私が壁にぶつかっていることを他の受講生も感じているということを知ることができた。むしろ、自分が何につまずいているのさえ、上手く認識できていなかったことを、他の人の質問で明確ができた。すぐに形にできなくても、理解できていないことが分かったというのは、これまでにない感覚だった。
その場の会話の中で、私が話していることの続きを、自分の口から出てないのに音として認識するという面白いことがあった。4ケ月一緒に講義を受ける中で、同じようなことを考えるようになっているのだろうか。私が言う前に、私の口から出るはずだった言葉を隣の人が言っていた。自然すぎて一瞬、自分が言ったのかと思ったほどだった。
そして意外とみなさんが他の人の作品を結構読んでいることを知った。私も全てではないが、目を通している。自分が読むことはあっても、人に読まれているという感覚はなかった。なので、
「餃子の話よかったですよ」
などと言われて、驚いてしまった。それと同時に、私の文章を読んでくれている人がいることが、とても嬉しかった。今まで自分の文章を人に読んでもらうという感覚が足りなかったことにも気づいた。
私は自分が食べたいものを、自分のために作る。料理をすることが好きなので、その過程がとても楽しいのだ。料理の仕事から離れてからその頻度が減ってしまったこともあり、たまに作る特別な料理などは特に楽しい。文章もどちらかと言えば、自分が書いていて楽しいと思うことを書いていたように思う。
懇親会の最後に、私の作ったガレット・デ・ロワが出てきた。私は作った本人なので(とはいっても、どこにクルミが入っているかは、私自身にも分かっていない)、最後に残ったものいただいた。
「誰かクルミ入ってました?」
私が最後に残ったピースに手を伸ばす前に聞いてみた。全員その時点では存在には気づいていないようだ。
「気づかずに食べてしまっている可能性もありますよ」
そう言いながら、私が口にしたガレット・デ・ロワの中に濃い茶色の物体はあった。フェーブならぬクルミを引き当てたのは私だった。
自分が自分のためにと作った料理はおいしい。だけど食べてくれる人がいるということは嬉しい。文章も、誰かが読んでくれて完成するのだと、分かっていたようで、分かっていなかったことを、リアル講座を通して知った。
これから少しずつ文章が上手くなる1年になる気がする。
***
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