What a big knee!
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:中村亜紗子(ライティング・ゼミ京都会場)
大きな膝。
と聞いて何を思うだろうか?
「大きな瞳」とか「胸が大きい」のように、「大きな」という形容詞と体のパーツを組み合わせただけの言葉なのに、瞳や胸のようにポジティブさがなく、どちらかといえば健やかさを感じない。大きなかぶ、のような若干のシュールさを感じてしまうのが「大きな膝」という言葉ではないだろうか。
ウェストやヒップサイズを気にすることはあれど、膝のサイズ感など気にしたことのなかった20代。あの子の脚、細くて綺麗だなあと脚全体のフォルムを見て羨んだことは多々あれど、「膝」のサイズを友人同士で比べたことなどないし、比較する目線で自分や周りの膝を見たことだってなかった。
わたしの膝、大きくなってない?
ふと、そう気付いたのは数年前、40代に入ってからだった。ここ数年、膝下丈のスカートが流行していることもあり、膝を出す機会などめっきり減っていた。夏休みの旅行で海に行く前、旅先ならばと久しぶりに出してきたショートパンツを試着して鏡の前に立ったとき、自分の膝の様子に目がくぎ付けになった。わたしの記憶の中にある膝より、どろんと間延びした様相の自分の膝。どういうことだ、なぜ君は知らぬ間にそんなに緊張感のない表情になっているのだ?と話しかけたくなるほど、誰にも見られないからいいわよねー、と気の抜いた様子が膝全体を覆っていた。
実は数年前まで、ヨガと整体の知識を組み合わせて「美脚塾」というプログラムを提供していたことがある。長らく自分自身が脚にコンプレックスを持っていたからこそ、綺麗な脚を作っていくことへの情熱はひと一倍、いや三倍ほどは持っていた自負があるから出来たプログラムだった。そんなプログラムを提供していたからこそ分かる、脚は、というか体全般に言えることだけれど、目や手をかければかけた分だけ応えてくれる。逆に言えば、目や手をかけず気を抜いた途端ソッポを向きはじめるものだということを。今のわたしの膝はまさに、誰の目にも触れないから、と気を抜き、手をかけてもらえないから、と拗ねている様子そのものだった。
これは、ヤバい。そこから膝回りを触る習慣を復活させた。
そうして日々膝を触るようになると、さまざまなことが見えてくる。左膝に比べて右膝のほうが若干大きい。特に、膝裏を左右同じ圧で押してみると右膝のほうが少し腫れてような感覚、押したときの刺激も大きい。そういえば膝を床につくヨガのポーズをしたとき、右膝だけがときどき針を刺したような痛みが走ることを思い出す。あの膝の痛みの原因を見出したような気持ちになって心中ガッツポーズをする。ここで膝裏マッサージを丁寧にしていくのだけど、決してこのコリめ!と攻撃的になってはいけない。このコリが出来てしまった経緯を膝裏と対話するような心持ちで、これまでを労わるように解いていくほうが、ずっと効果的だ。頑張りすぎてしんどくなって泣いているのに、なんで泣いているんだ!と叩かれたらたまったもんじゃないのは、人だって膝だって同じなのだから。
続いて、肝心の膝の前側もほぐしていく。まずは、膝を左右の手で覆うように持ち、くるくる左右に回すように触っていく。膝の中にある骨を筒に見立て、その周りについている脂肪や筋肉、皮膚を手で動かすようなつもりで回してみると、手の動きに連動して動いてくれる場所と、ベッタリくっついて動いてくれない場所、膝回りの癒着っぷりが手を通して見えてくる。実はこの骨や脂肪、筋肉や皮膚、それぞれの癒着が大きな膝の原因のひとつ。「癒着」、政治の世界でもやってはいけないネガティブワードのひとつだけど、これは体の世界にも通じる。本来はつかず離れずのいい具合の距離感で付き合うべき体のパーツがベットリとくっついてしまうといいことなど決してない。本来はいい具合の隙間を通り抜け流れるはずだった老廃物や脂肪が、そこで滞り溜まり、体のサイズ感を上げていくことは想像に難くない。だから、動かしにくい箇所を丁寧に剥がしていくのだけど、これはなかなか痛い。長いことくっついていた組織たちが体の中で急に行われる改革に驚き慌てているのが手に取るように分かる。そんな妄想をして自分の痛点を収めたくなるような痛みが広がるのだけれど、少し剥がしてあげると膝の曲げ伸ばしが一段と軽くなるのが分かる。膝の痛みや大きさに悩む方にはぜひ試してほしい。
そうして自分の膝を触るようになって数ヵ月、コロナ禍以前より休止していたヨガの対面レッスンを再開することになった。長らく運動をしていない、と話してくれた同年代の参加者の方と話をしていても、昔より膝が大きくなったことを悩んでいた。ふた回りほど年上の参加者の方は、膝が痛くて正座が出来ないという。それを聞いたら放ってはおけない。レッスン時間は膝のケアを含めて体の各パーツを整えることに費やしてなかなかヨガをするまでに至っていない不思議な「ヨガレッスン」枠になっている。でも、肩、腰と並んで年齢を重ねるほどに悩みが増えるのが膝。毎日否応なく酷使している場所をケアしてまずは今の、そして将来のQOLを上げていくのが慣れないヨガポーズを取ることよりも大事だと、わたしは思うのだ。自分の健やかな足で歩いて、好きな場所に行けるっていうのが一番の幸福だから。
まずは、以前と比べて膝が大きくなっていないか?
大きな膝にお悩みの方は、ぜひご相談ください。
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