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肉好きだった友達が完全菜食主義者になった話


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記事:mizu(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
留学へ送り出すとき一緒に焼肉に行った友達が肉を食べられなくなって帰ってきた。私はある日突然、焼肉大好きクラブのメンバーを失った。彼女はビーガンになったのだ。
 
ビーガンとは完全菜食主義者のことで、単に肉・魚を食べないだけでなく卵や牛乳等の動物性食品を一切口にしない。はちみつもダメらしい。花の蜜じゃん、と思うかもしれないが、蜂の労働による産物なのでNGとのこと。ちなみにマックのポテトはラードで揚げている(らしい)ので食べられる。
 
ビーガンになった彼女は高校からの付き合いで同じ部活の仲良し6人組のひとり。帰り道にコンビニに寄ってホットスナックやアイスを買ったり、ご飯に行くときは迷いなく焼肉を選ぶような、食べることが大好きな子だった。彼女との思い出を振り返ると本当によく食べた記憶がある。そんな彼女が、アメリカの留学先でビーガンになってしまった。大学時代の出来事だった。
 
ビーガンになった!と告白されたのはグループラインだったと思う。その前から予兆があったかどうかは覚えていないが、割と突然決まった(?)ことだった気がする。このとき彼女以外にもう一人オーストラリア留学をしている子がいて、この子も同じタイミングでビーガンになった。そう、私は友達にふたりもビーガンがいるのだ。日本に住んでいてこの交友関係は珍しいのではないだろうか。ふたりとも留学先は違えど日本人の少ない田舎を留学先として選んでいたので似た価値観に触れていたのかもしれない。お互いに留学中の情報交換や近況報告をしているうちにビーガンになっていったというわけだ。
 
報告の仕方はかなり軽かったけど、こちらとしては大事件。とてもびっくりした。そもそもビーガンって何? という状態。ベジタリアンと何が違うのかも知らなかった。もう一緒に焼肉行けないんだ……と結構悲しかった。
 
次に来る感情は嫌悪感だった。彼女たちが帰国して、当然6人で集まるのだが何を食べればいいのか分からない。ディズニーランドでアトラクションに並びながら、「食べない」のではなく「感謝」することが重要なのでは? と議論したのも覚えている。でも一緒に同じものを食べられないことが嫌だったというより、もっといじわるな気持ちだったと思う。これだけは守る、という信念があるのが羨ましかったのかもしれない。同じ学校で一緒に成長してきた友達が、世の中を良くしたいという想いのもと動物性食品を食べないというあり得ないほどハードルの高い決断をしたことが心底羨ましく、違うフィールドにいってしまった気がして寂しかった。
 
ビーガンになった彼女たちのことは時間をかけて理解していった。もちろん今も理解できないことは多いし、この先も100%分かり合うことは不可能だろう。だけど私は彼女たちを心から尊敬していて誇りに思っている。
 
一部の過激な菜食主義者によってビーガンという存在は疎まれることもあるが、それが大勢の意見ではないことを私は知っている。少なくとも私の友達は世の中から犠牲になる動物の母数を減らすことを目的としている。自分が肉を食べないことで犠牲になる牛が一頭でも減るといい、というように。私たちがビーガンになるように強要されるどころかおすすめされたこともない。自分たちの行動で少しでも変わればいい、誰かに伝わればいいという想いがあるだけだ。事実、ビーガン食品は案外おいしいということを知って色んなレストランに連れて行ってもらうのを楽しめるようになったし、買い物をするときに少しだけ商品の背景を想像するようになった。
 
彼女たちは着るものや行動にも制限がある。ウールや革製品、ダウンコートを買わないというところまでは想像しやすいが、動物実験に反対しているのでビーガン対応コスメだけを買うとか、薬もできるだけ飲まない。多分動物園に誘っても来ないだろう。やりすぎじゃないかと思うときもあるが、それだけ彼女たちの信念は強くて継続的だ。自分の好きだったものやしたいことを我慢してまで何かを貫き通すことを考えると、私には無理。彼女たちがビーガンになった当初はここまで続くと思っていなかったので正直驚きだ。
 
誰にでも世の中を良くしたいとか周りの人に幸せでいてほしいという想いがあるように、彼女たちも同じ。ビーガンという選択も彼女たちにとって大事な動物たちが尊厳を持って生きられる世界を作るための方法であって、全員にとっての正解だと思っているわけではない。もう一緒に焼肉は食べられないけど、彼女たちがビーガンにならなければ一生食べることがなかったであろう料理を食べられるし、交わることがなかった信念を知ることができた。そして彼女たちも自分の信念と真逆の思考を持つ人々と関わることが辛い場面もあったはずで、それはこれから先も変わらない。彼女たちの真似をすることはできないけど、これを書くことで彼女たちが理解されやすく過ごしやすい環境が広がったらいいと思う。
 
 
 
 
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2023-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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