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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
19歳のときでした。
専門学校を卒業し、就職先に見習いとして入社して、4月から正式に社員として働くことになっていたくらいだったと思います。土曜日。お墓参りの帰りです。
私の家は埼玉ですが、お墓は千葉にあるため、長時間の車移動でくたくたになっていたところでした。
本当にたまたまで、そんな予定もないことで。
帰り道にとあるペットショップがあり、「戌年フェアー」と書かれた看板を見て、皆で寄ってみようということになりました。
「戌年フェアー?」に対して疑問があったからかもしれません。
もちろん、何か動物を飼おうという気持ちで寄ったわけではありません。
私自身、動物は好きですが、友達の飼っている犬に触るなど全く出来ないくらいビビリなところがありました。突然噛まれたらどうしようなどと思って手が出せなかったのです。
そのペットショップで、何匹かの小さな可愛い犬たちがケージに入っており、チラチラと見ていたところ、一匹の子犬に出会いました。
その子犬は、こちらを見ていました。
ポメラニアンという犬種です。
たぬき顔で、まん丸のフォルムのその子犬はとても可愛らしく、愛らしかった。
 
友達の犬ですら触るのが怖いと感じる私が、初めてペットショップの店員さんに
「触っていてもいいですか?」
と聞いたのです。
自分でもなぜその子犬に反応したのかは分かりませんでした。
ただ、抱っこしてみたいと思ったのはその子犬だけでした。
 
店員さんにお願いし、ケージから出たその子犬はちょっとビクビクしながら私の手の中に納まりました。
「緊張しているんですね〜」
店員さんはそう言ったのをよく覚えています。
そして家族と話しながら、私はこう口にしました。
 
「お金半分出すから、この子を飼いたい」
 
ここで私の性格を話すと、あまり自己主張はしない、割ともの静かな性格です。
誰かに何かをお願いするなど、なかなか出来ない性格でした。
そんな私が、家族に犬が欲しいとお願いしました。
家族も驚いていたと思います。
しかし、家族はそんな私の提案を受け入れてくれました。
 
そこから何週間かして、手続きは終わり、我が家に子犬を迎えることになりました。
初めて家にやってきた姿は今でも忘れることはありません。
 
ペットショップにいたままのその子犬が家の中で大はしゃぎしていました。
あんなに緊張して物静かだった子犬が、大はしゃぎです。
私には歳の近い妹と弟がいますが、二人ともその子犬に夢中になりました。
母もメロメロです。
父は動物があまり得意ではなかったのですが、その子犬が来てから、しつけ役になってくれ、父のおかげで子犬はお座りやお手を覚えました。
 
名前は、「ぽん太」に決まりました。
男の子で、たぬき顔だったからです。
しかしぽん太は成長していくにつれ、たぬき顔ではなくきつね顔になりました。
あまりポメラニアンの特徴を知らなかったので、全然顔が違う! となりましたが、それでも可愛い可愛い我が家のアイドルになりました。
 
私は仕事を始めていて、とても忙しかったので、普段のお世話は母がやってくれることになりましたが、休みの日はよく散歩に連れて行きました。
散歩も1時間歩くことは当たり前になっていて、突然の豪雨で慌ててぽん太を抱き上げて走って帰ったこともありました。
 
ぽん太は本当にいい子で、時々悪さもしましたが、家族をつないでくれる、大事に私の家族でした。
家族で大喧嘩になった時もぽん太はそわそわ慌てて、「どうした!?」という反応で皆の目を引き、誰かが悲しい気持ちで帰ってきた時も顔を舐めてくれる、優しい子でした。
家族もそうですが、私もぽん太に支えられていると、強く思っていました。
 
そして17年のときが経ちました。
ぽん太も17歳、超高齢犬です。
1年前くらいから足も悪くなり、立っている時もフラフラしてしまうくらい弱ってしまいました。
支えられた分、ぽん太に返して行かなきゃ。
そう思っていたので、常に一緒にはいられないけど、一緒にいる時はいろいろな補助をしていました。病院へ連れていくと肝臓などの数値はだいぶ悪くなっていることが分かりました。
小さい頃から皮膚が弱かったので、その薬と一緒に肝臓の薬も増えました。
肝臓なので食べるものも制限がかかりました。
そんな状態でも、ぽん太は私たちを癒してくれていました。
 
その日は、やはり突然でした。
覚悟はしていたつもりです。
 
仕事前の朝、母から電話がかかってきました。
 
「ぽんちゃんが息してないの!」
 
そう言われて頭が混乱しましたが、必死にぽん太に呼びかける母の声を聞いて私も涙が止まらなくなりました。
 
ぽん太は死んでしまいました。
 
17年間という長い時間を私たち家族のために生きてくれて、ぽん太は天国に行きました。
2022年の9月の終わり、とても良く晴れた、清々しい日でした。
 
前日は普通にご飯を食べ、ちょっとヨタヨタしているけれど、最近ではいつも通りのぽん太だったので、本当に突然でした。
今までほとんど迷惑という迷惑などかけていないのだから、介護くらいさせて欲しかった、どうして死ぬ時まで迷惑をかけないの… 母はそう言っていました。
本当にその通りです。
いつも帰ると一番に迎えてくれる存在。いるだけ良かった。
 
本当に悲しかった。
 
この話自体、書くことを躊躇っていました。
最近ではSNSで愛犬の死顔を収めてアップしているこ方に嫌悪感すらありました。
 
しかし、文章として残しておく。半年経ち、とても素敵なワンコがいたことを残しておきたい。幸せだったよと、伝えたい。
そんな感情になりました。
何の縁もなかった犬と家族が、繋がり、とても幸せな17年を過ごしたことを誰かに知ってほしい、そう思い、文章にしました。
どうか、犬だけでなく、動物を飼われている方、今のとても幸せな時間を存分に感じてほしい、そう願っています。
 
ありがとう、ぽん太。
 
 
 
 
***
 
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2023-03-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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