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宿のママさんが教えてくれた子育てに大事なこと

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:赤羽かなえ(ライティング実践教室)
 
 
夕方に事件は起こった。
 
と言っても、正直大したことではない。
子どもにどうでもいいことで嘘をつかれたことに腹がたった、という、ただそれだけのことだ。
 
我が家の娘2人の部屋に用事があって入った時に、彼女たちがなんだか不審な動きをしたのが気になった。隠し事をしているな、と思った。2人の口が不自然に閉じていたけれど、末っ子の口が何かの拍子にモゴモゴと動いたのだ。おやつを部屋で食べている? いや、さっきおやつはテーブルで座って食べていたのに、なんであんなに口を動かしているんだ……。
 
よくよく近づいてみると、どうやらガムを噛んでいるらしい。
 
「どうして、おやつを食べたのに、またガムを食べているわけ?」
 
私がとがめると、娘たちは気まずそうに顔を見合わせた。どうにかこの場を切り抜けたいと、必死に知恵を巡らせている、そんな様子が、きょろきょろさせた目線からうかがえる。
 
「だって、にいにの方が、ズルイんだよ。ガムだってもう一箱も食べちゃったんだから」
 
「ちょっと待って、にいにがガムを一箱食べたことが本当だったとしても、おやつ食べ終わってから部屋でガムを食べていいっていう理由には、ならないよね?」
 
兄を売ったのに逆効果だったと気づいたようだ。2人は顔を見合わせて下を向き、
 
「ごめんなさい」
 
と謝った。
 
その次に、兄に事実確認をしに行った。とばっちりではあるが、聞いてしまったからには確かめないといけない。「にいにがやっているから、自分達もやっていい」という、意識はおかしいけれど、長男というのは、良くも悪くもお手本になるから、約束は守ってもらわないと困る。
 
当の本人は、あっさりと、ガムを食べたことを白状した。そして、ヘラヘラと笑いながら、
 
「いやー、いつになったら気づくのかなーと思いつつ、全然気づかなかったから逆に驚いたっていうか」
 
と笑いながら言ったのである。
 
話を総合すると、私が買ったガムを2箱、私が目を離したすきに3人で食べ尽くしたわけだ。そして最後の最後に、私にバレたというわけ。
 
ここで、私の心のゴングが鳴った。
 
「っていうか、そんなこと、なんでヘラヘラ笑って言えるわけ?」
 
私の声が一段低くなったことに、長男が気づいた。それでも、まだ「ごめんて」といいながら笑っている。
 
「3人とも集まんなさい!!」
 
そこから小一時間ほど、私の怒りのボルテージはあがりっぱなしだった。途中で娘2人が「にいにが一番食べてる」とか「にいにがやってたからいいと思った」とかいうものだから、私の怒りに拍車がかかる。
 
「あんたたちになんか、二度と甘いおやつはやらん! 明日からはずっとおむすびじゃ!」
 
3人はここまできて、ようやく、私がかなり怒っていることに気づいたようだ。しょんぼりとした仕草を見せたけれど、私の心は収まらなかった。
 
たかだか、ガムの一箱や二箱と思う方もいるだろう。私も怒りながら、心のどこかではそう思って冷静に見ている部分もあった。
 
けれど、それ以上にショックだったのは、3人とも「バレなければいい嘘」を平気でつかれたことだった。嘘も方便だとはわかっているし、私だって親に散々嘘をついてきた。それを指摘されれば何も言えない。ガムごときでそんなに怒り散らかすから、嘘をつくようになるんだよ、って言われればぐうの音もでない。
 
それでも、今、目の前で信じていたのに裏切られ、私の心が傷ついたという事実に変わりはない。
 
その気まずい状態で、私達親子は春休みの旅行に出かけた。
 
旅先に出ても、何かお菓子を買ってほしいと彼らの要求を無視し続けた。なんで、そんな意地悪をするんだ……3人がうんざりしたような目で私を見てくる。なんだか自分のほうが悪者になったような感覚になる。折れてもよかったけれど、まるで私が悪いような雰囲気になってしまうと、こちらもますます意地になってしまう。
 
そんな自分にうんざりしていた時に、宿のママさんと話す機会があった。その宿は家族ぐるみで経営していて、とても居心地のいい宿なので年に1回ペースでお世話になっている。オープン当初はオーナーが娘さんで彼女を親のママさんやパパさんが支えて3人で経営していたのだけれど、娘さんが結婚したり、娘さんのお姉さん夫婦まで移住してきたりと訪れる度に家族が増えていく。みんなで一致団結して経営しているのが素敵だなと思っていた。
 
「この宿はすごいよねえ。家族が集まってみんなで宿盛り上げて」
 
「ホント、いつの間にかなー。ありがたいよなあ」
 
ママさんはいつも明るく笑っていて太陽のようだ。
 
「家族を見て、もっとこうしたらいいのにとか思わないの?」
 
「そうやなあ。まあ、色々あるで。でもな、見ざる、言わざる、聞かざるでやりすごすことも重要やで。向こうも大人やからな」
 
「でもさ、親って『子どもはいつまでも子どもだ』とか言って、いつまでも子ども扱いしている人もいるよ」
 
「そうやなー。背中を見せるっていうことも、必要やと思うで」
 
「背中を見せる……」
 
「あれやれ、これやれ、あれがダメ、これがダメって言うんじゃなくてな、自分が働いている背中を見せるんやで。洗濯は私が担当なんだけど、量も多いし、干すところが遠いから結構大変な仕事でな。でも、前に具合が悪かった時に、娘が替わってくれてな。そうしたらエライ量で干すところも遠いから、こりゃ大変やって、すぐ周りに言って助けてくれて。ありがたかった」
 
「そうかあ」
 
自然と助け合いの和が広がっていくのは、ママさんやパパさんが自分の仕事をちゃんと全うしているからなんだなあ。
 
「そりゃあ、時々、言いたいことはあるよ。でもな、家族がみんなそばにいてくれて、自分も元気で働けていて、ホントに幸せなんだから。幸せな自分の言いたいことなんて大したことないやろ?」
 
私の意地になっていて心をママさんの言葉が溶かしていくようだった。
 
確かに、私も今めちゃめちゃ不幸なわけでもない。でも、嘘をつかれたというただそれだけで、ここ数日、不愉快な気持ちで過ごしている。旅行のウキウキした気分をぶち壊しているのは、ほかならぬ自分だったのだ。
 
子育てって、本当に思い通りにならない。嘘をついたことを指摘しても、全然反省してもらえないし、あんなに怒ったところで「お母さんが怖い」で終わってしまったりもする。それだったら、あえて「見ざる、言わざる、聞かざる」でやり過ごしてみるのもありだったのかもしれない。
 
今回の件、どうするべきだったのかなんて結局、結論はでないけれど、できれば、私もママさんみたいに、幸せな自分の言いたいことなんて大したことないんだって笑い飛ばしたい。
 
とりあえずは、おやつはずっとおむすび宣言を撤回することから始めましょうか。
 
ママさんと話しながらそう決意して窓の外を見ると、海がキラキラと輝いていた。
 
 
 
 
***
 
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2023-04-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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