メディアグランプリ

お味噌知る。


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記事:工藤洋子(ライティング4月コース)
 
 
NHKきょうの料理にキューピー3分クッキング。
 
番組名を思い浮かべただけで脳内にテーマソングが流れ出すほど、子どもの頃から料理番組には親しんでいた。料理好きだった母が毎回見てはレシピノートにメモしていたからだ。
 
昨年、書店で見つけた『お味噌知る。』(世界文化社)は昔よく顔を見ていた土井勝さんの次男、土井善晴さんが娘の光さんと共著で出された本だった。
 
「お味噌……しる?」
 
タイトルのセンスがいい。
副題の「料理は命をみがくこと」というのも気になった。
 
元々、今テレビで見る土井善晴さんの様子やレシピには共感することが多いので、ちょっと変わった装丁のこの本をすぐ手に取って買って帰ることにした。
 
お味噌汁って、まあ日本食の基本だよなぁ。お味噌は醤油と並んで日本の発酵食のスター選手と言ってもいいだろう。でもまあ、基本ってフツーだよね、と思いながら、
 
「さて、どんなレシピが書いてあるのかな?」
 
とページをめくってみた。
 
最初の方には基本の味噌汁の作り方が載っている。つづいて、自立の味噌汁、家族の味噌汁、組み合わせる味噌汁、季節の味噌汁、そして味噌料理、スペシャルな味噌汁と続く。掲載してあるレシピの数は50に近い。たかが味噌汁だけですごいボリュームだ。
 
中には、「これは味噌汁?」と思うようなものもある。
 
特に洋風仕立てのものにはソーセージが入ってまるでポトフか何かのようだ。味噌汁にソーセージ……考えてみると、味噌のコクとソーセージの旨みが合わさったら、イケるかもしれない。料理の組み合わせって本当に無限大だな、と思った。
 
特に私が気に入ったのは、「揚げ卵の味噌汁」だ。
 
そもそも揚げ卵ってどういうこと??
落とし卵やないん?
 
私の頭の中はハテナでいっぱいだ。
急いで続きを読み進める。
 
なるほど、普通に野菜などを煮て作った味噌汁に別のフライパンで焼いた卵を入れるわけだ。プレーンオムレツを味噌汁に放り込むようなものだな。
 
味噌汁は野菜を煮ることが多いと思う。
私が毎日家で作るものといえば、ネギタマネギなどの香味野菜に大根や菜っ葉など季節の素材を合わせて煮込んだものが多い。たいていワカメなどの海藻も入れるかな。季節ごとに味噌を変えたり、といった工夫はするけど、基本的に単調な味になっていると思う。
 
毎日の食、というのは、やはり奇をてらったものではなく、淡々と続いていくもの、という面があるだろう。
 
でも考えてみて欲しい。
その、例えば昨日の残った味噌汁にちょっとこの揚げ卵を入れちゃったら。味噌汁が一気に別人に変身してしまう。まるで中国雑技団の早変わりの芸のように入れた瞬間に別物だ。
 
これはありがたい。
毎日の食卓を預かる者としては、簡単に味変ができる、というのはとても重要なポイントだ。いかに労力をかけず、なおかつ家族の目を引く料理を提供することは結構難しい。覚えるのはいくつかの基本の型で、それから派生するバリエーションが複数ある、というのが、一番使い勝手がいい。
 
さすがはお父様の代から家庭料理を追求されている方だ。
そうなんだよ、簡単に作れて美味しい、ってとても大切。
  
だけどこの『お味噌知る。』という本はただのレシピ本ではなかった。
 
「お料理は人間の創造の始まりです」
  
このように書いてあった。
 
私が常日頃から思っているのは、「生きることは食べること」ということだ。人間が生きていく上で食べるということは生きていく上で欠かせないこと。その食を自分で作るのが「料理」ということになる。その意味で料理は人間の根幹を成すものだ、と思っている。
 
根幹、とは土台だ。
 
人間が料理するときのすべての過程、つまり食材を見つけ五感を使い、段取りを考え食事の献立を構想する、という行為は、経験の蓄積として脳だけではなく、身体中の神経に記憶する。その記憶のマップが人間の土台になる、と土井善晴さんも本の中で書いている。
 
そうそう、その通りだ。
と思わず大きく首を振りながら頷いていた。
 
どんな味噌汁を作ろうか。
作りたいものを頭でイメージできるようになると、経験という土台があれば実際に作ることができる。それは自分が将来どんなふうになりたいか想像することにも近い、という。
 
料理を作ること、たとえそれが一杯の味噌汁を作ることだけでも、それだけの創造性を刺激するのだから、料理をしない、という選択肢はないと思う。
 
私は確かに料理好きな母に育てられて自分も料理がそもそも好きだけど、料理が苦手、という人でも食べることが苦手、な人は多くはないのではないだろうか。変わった料理、豪華な料理を作ることが料理ではない。毎日の自分の食、家族の食の大切さを考えると、簡単なものでいいから、料理ができるに越したことはない。
 
この本は
 
「料理はちょっと苦手で……」という方に是非読んでもらいたい、と思った。
 
 
 
 
***
 
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2023-05-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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