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答えがない時代と仏教的解釈


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記事:上海太郎(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
2023.05.15
 
「答えなんてないんや」
 
ここ数年、会社の会議で、経営トップからよく出てくる言葉だ。
「加速度的に変化する世の中では、1+1=2のように、成功するための答えなんてない」、
などとも言われる。
 
この言葉を聞く度に、僕は分かるような分からないような中途半端な気持ちでいた。
 
ある日、中国の寧波のお寺で、
この言葉を理解するためのヒントを得た。
 
お寺の中に入ると、無数の仏像が置いてあり、
「なんやねんこれ……」
と僕は度肝を抜かれた。
 
「右手だけむちゃくちゃ長い仏像」「ヒゲが足元まで伸びている仏像」「むちゃくちゃ笑っている仏像」「カワイイ動物のような仏像」など、日本では見たことがない仏像ばかりだった。
 
思わず僕は、
「なんでもありやな」と独り言を呟いていた。
そして、1つの仮説を思いついた。
 
「仏像を彫った人は、伝えたい何か(What)があり、それを伝える手段(How)の1つとして、
仏像を作ったに過ぎないのではないか」
 
つまり、仏教の本質的な概念は抽象的で理解しにくいため、具体的に分かりやすく表現しようとしたものが、仏像なのではないか。また、仏像だけでなく、経典に出てくる例え話なども同じような位置付けなのではないか。
 
だからこそ、今、目の前に見えているさまざまな形の仏像の違いに捉われすぎず、
それぞれの仏像を通じて伝えたいことは何なのか、を考えることが大事なのではないか。
つまり、抽象化した本質的な概念さえ理解すれば、無限の解釈ができるのではないか。
 
そんなことを考えながら、お寺の外に出た。
大きな空が見えた。
「空を見ること」の解釈は無限にあるのではないか、と思った。
 
例えば、
夕焼けを見て、きれいだなあと感じる人
夕焼けを見て、悲しい色だなあと感じる人
大きな空を見て、自分はちっぽけだなあと思う人
大きな空を見て、自分の可能性はまだまだこれから無限に広がっていくんだと思う人
雲の形がヒツジやウシに見えて、笑っている人
雲の形がハート型に見えて、ウキウキしている人
恋人と夕日を見て、ロマンチックな気分になっている人
夕日を見ることをエサに、恋人と仲良くなろうとしている人
雨の空を見て、自分の心と同じだと思っている人
遠距離恋愛で恋人と離れていても、同じ時間を生きていることを感じる人
今見えている空を超えて、宇宙に行きたいとワクワクしている人
安全飛行のために、天候と戦う決意をしている出発前のパイロット
戦争が起こっているまちで、平和を願って空を見ている人
など
 
この考え方は、新サービスや新商品の企画に応用できるではないか。
例えば、僕が衣類メーカーで、服の新商品企画をすることになっても、アイディアは無限に考えられる。
 
いきなりアイディア(How)を考えるのではなく、
まず何を提供したいのか(What)を考える。
 
例えば、
寒さを凌ぐためのもの
異性にモテるためのもの
デキる男と思われるためのもの
健康になるためのもの
スマホを入れるポケット付きなど機能的なもの
気分を切り替えるためのもの
周りの人との個性の違いをアピールするためのもの
自分らしさの自己暗示をかけるためのもの
流行に取り残されていないアピールをするためのもの
信頼感を出すためのもの
良いパパであることをアピールするためのもの
奥さんが買ってくれたから着ているもの
昔の恋人からもらって、思い出を大事にしたいから着ているもの
憧れの人の真似をして着ているもの
など
 
そんなことを考えていると、学生時代の友達のミュージシャンの1フレーズを思い出した。
「世界中で僕しか知らないことだってあるよ」
 
この歌詞を初めて聞いたとき、僕はワクワク感と羨ましさが入り混じった気持ちになった。
今、その意味がようやく分かった。
 
そうか。
「答えなんてないってことは、
周りを気にせず自分だけの自由で楽しい解釈でいいんだ」と思った。
 
また、大きな空を見上げた。
仏教では「空(くう)」という概念を大事にすることを思い出した。
 
「空(くう)」の考え方は以下である。
この世にあるものは全て実体がない。
未来永劫変化しない絶対的なものはない。
この世の全ては空であり、仮の姿である。
 
一見「羨ましい」と思っても、一部分だけを切り取って、絶対視しているだけ。
例えば、人気アイドルでも20年後は、おばさんになっている。
例えば、高級なブランドバッグを持っている人でも、実は借金をしているかもしれない。
 
世の中、良いことがあれば、悪いこともある。
幸せの次の瞬間は不幸になるかもしれない。
不幸の次の瞬間は幸せになるかもしれない。
 
とはいえ、人間だから、
良いことはずっと続いてほしいし、悪いことは早く終わってほしい。
でも、良いことばかりは続かない。
 
だから、空の概念に基づけば、
良いことがあったら有頂天にならず油断しないで身を引き締める。
悪いことがあったら悪いことは続かないと気持ちを切り替える。
過去でも未来でもなく、「今この瞬間の連続」がキーワードになる。
 
以上のことから、
答えがない時代に生き抜くためには、
「どうせ答えなんてないから、
周りを気にせず自分だけの自由で楽しい解釈を、瞬間瞬間で生み出し続けること」
という仮説を持った。
 
僕が大好きな日本海軍の秋山真之が、日露戦争でバルチック艦隊を打ち破った後に
残した言葉。
「古人曰く、勝って兜の緒を締めよと」
 
自分勝手な妄想だが、
秋山真之も同じ仮説を持っていたとしたら、嬉しい。
 
 
 
 
***
 
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2023-05-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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