踊りと清流に誘われて、伝統と進化が融合する街へ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:鈴木 洋子(ライティング・ゼミ4月コース)
「次の曲は、姉妹都市、郡上八幡市の郡上踊り、『かわさき』です」
司会者の紹介があり、曲が流れる。
郡上踊りの曲の唄い出しを聴くと、体が疼き出す。
子どものころ、町内の盆踊りで、毎年かかっていた曲である。
私の住んでいる愛知県稲沢市の姉妹都市、岐阜県の郡上八幡市では、毎年夏休みが始まるころ、7月後半から9月前半にかけての31夜、「郡上踊り」という盆踊りが毎日のように行われている。お盆の4日間には、「徹夜踊り」と言って、道路が歩行者天国ならぬ、踊り天国となって、夜通し盆踊りが行われる。
私は、子どものころ、町内の盆踊りが好きだった。
浴衣を着る楽しみ、夏休みの夜に出かけて遊ぶというワクワク感、そして、老若男女が集まり、やぐらのまわりを囲んで踊るという一体感がおもしろかった。
年に1度のことなので、毎年踊り方を忘れて、始めはぎこちないが、まわりの人の見よう見まねで踊っていると、1周したころには踊れるようになっている。
踊りの教室に通っているような、浴衣を着こなしたベテランさんの手の所作にあこがれた。なめらかな手の動き、足の運びを見て、私もきれいに、かっこよく踊れるようになりたいと思った。
浴衣を着ることも好きである。今年も夏が来たなと思う。
子どものころは、母に着付けてもらっていたが、自分でも着られるようになりたいと思った。
大人になって、着付け教室に通い、自分で着られるようになった。
社会人になって出会った職場の同僚に着物好きの人がいて、意気投合した。着物以外にも、お出かけ好き、アウトドア好き、音楽好き、本好き、と共通の趣味が多く、いつしか、同僚から、私にとっては親友と呼べる存在になった。
夏の時期になると、一緒に浴衣を着て、隣の市の花火大会に出かけた。
着物と帯の色と柄の組み合わせを色々考えながら着るのも、和服のおもしろさである。彼女と私は色の好みや似合う色が全然違うが、鏡を見て体に合わせながら、それぞれに合った組み合わせを選んで着てみるとしっくりくる。
また、あるとき、岐阜の長良川おんぱく(温泉博覧会)というイベントの冊子を見つけた。長良川周辺で、アウトドア体験や、手作り体験などができる100ぐらいのコースがあった。その中で、長良川鉄道の「郡上八幡駅」から「みなみ子宝温泉駅」までの7区間を長良川沿いに下ってサイクリングをするコースに目が留まった。自然好き、アウトドア好きの私たちにぴったりのコースである。彼女を誘ってみると、ぜひ行こう! ということになった。
まず、行きは長良川鉄道に乗って北上する。長良川の下流から上流に向かって並行するように走っていて、電車からも川がきらきら輝いて見える。山の緑と川の透き通った色が、心の中もきれいにしてくれる。
家から郡上八幡までは、電車を乗り継いで約2時間。小旅行にちょうど良い距離感である。
郡上八幡駅に着くと、サイクリングの集合場所に向かった。インストラクターさんの案内で、長良川沿いを自転車で下っていく。下りなので、自転車を漕ぐのはそれほどきつくなく、坂道を流れるように進んでいける。
途中、和菓子屋さんで休憩したり、神社に寄ったり、河原に降りて川の水を触ったり、五感を使って、全身で気持ち良さを浴びることができる。
ゴールのみなみ子宝温泉駅は、駅に温泉が併設されている。温泉につかり、疲れた体をほぐしてくつろいだ。
温泉から出ると、休憩所に郡上おどりのパンフレットがあった。いつか郡上踊りに行きたいね、という話になった。徹夜踊りの日はすごく混んでいるそうで、宿は1年前から予約しないと取れないらしい。
夜通し踊るのは体力がもたなさそうだし、31夜あるうちの、徹夜踊り以外の日で行ければいいかなと私は思っていた。
サイクリングに行った翌年の夏、行くなら宿をはやめに予約しようと、彼女が宿に電話をかけてくれた。ちょうどお盆の徹夜踊りの日に1室キャンセルが出て、宿が取れることになった。一度徹夜踊りに参加すると、はまってしまって毎年行きたくなる人がたくさんいる、という話をよく聞く。私も徹夜踊りが気になってきて、体験してみたくなった。
徹夜踊り当日、現地に着いて古い町並みを散策したり、路地裏で新しい店を発見したりした。午後、一旦宿に戻り、徹夜踊りに備えて仮眠をとった。
夕方に起きて、浴衣に着替え、踊り会場に向かった。踊りの唄のお囃子や太鼓の音が聞こえてくる。子どものころ、地元の盆踊りで聞いていた、あの唄である。郡上踊りの曲は、全部で10曲あるそうである。子どものころ聞いていた曲は1曲だけで、他の9曲は初めて聞いた。
夜12時を過ぎ、いよいよ未知の世界、徹夜踊りの幕が開けた。お揃いの浴衣を着た現地の踊りチームのような団体は、はやい回転の列で、颯爽と踊って進んでいく。私たちのような新参者は、ゆっくりの列だが、周りの人も踊りを教えてくれたりして、下駄を鳴らして踊る踊り方もコツがつかめてきた。
10曲、ひと通り終えると、やっぱり疲れてきて、目もしょぼしょぼしてきた。列から離れて、特別に徹夜営業をしている喫茶店で休憩をした。最後の1曲、踊り納めをし、朝4時、みんなで拍手をして徹夜踊りが幕を閉じた。
現地で徹夜踊りを体験して、踊りの熱気に包まれた一夜だった。
徹夜踊りに参加した後、日本の47都道府県を巡った旅エッセイの本をよく本屋で見るようになった。岐阜県のページには、郡上八幡を取り上げたものが意外に多いことに気がついた。
静岡県出身の「ちびまる子ちゃん」の作者、さくらももこさんも郡上八幡を気に入っていて、毎年訪れていたことを知った。私は子どものころからちびまる子ちゃんの漫画が好きで、単行本を集めている。さくらももこさんのエッセイも好きで、数冊読んでいる。エッセイの中で、郡上八幡のことについて語られている。「GJ8マン(ジージェーエイトマン)」というキャラクターを依頼されていないのに自発的に作り、ホームページ上でアニメ化したり、テーマソングまで作ったとのことだった。
色々な人から愛される郡上八幡。伝統を大切にしながら、さらに新しい街に発展している。また数年後に行ったらどんな進化をしているか楽しみである。
***
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