メディアグランプリ

5月の灼熱にサウナスーツというハンディ付で挑んでみた

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:堀越ひでき(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
土曜日のお昼に手の届きそうな午前11時半。
サウナスーツを着込み、その上からウインドブレーカーを着て、僕は走り出した。
走り出して、たった5歩で足がなえた僕は、歩く羽目に。
一瞬「マズいか?」とも思ったけど「なんとかなるでしょ」と自分に余裕をぶっこいていたスタート直後の僕。
そんな微妙なスタートを切った僕がゴールと設定していたのは、はるかかなた10キロ先、締切り堤防の上の道路を越えた先にある小さな祠だ。
そこに何があるわけでもなく、ただ家から10キロの地点に、その祠があるということで、走る目標として都合が良かっただけの理由であり、祠サイドからみると、いい迷惑なのかもしれない。
 
5月とはいえ30度に迫る正午の太陽を一身に受け、僕は歩いた。その足取りは、5キロを超えた時点で、ふらついてきた。熱中症になってもいかんので、近くのスーパーに入り500mlのペットボトルを2つ買い、一つはその場でがぶ飲みし、もう一つを歩きながら飲む用に携帯して歩きだした。
灼熱の太陽は、容赦なくサウナスーツを襲う。そしてサウナスーツの性能のいいこと! 熱を余さず閉じ込めてくれている。
少し熱が頭にきている感じがして、木陰を見つけては座って休み、水分補給した。
それを何度か繰り返す。もう暑くて時計を見る気力もない。アスファルトにできる影の傾きから正午は回っていることを推測しながら、締切り堤防の手前の公園までなんとかたどり着いた。ここから先は、炎天下を遮るものがない灼熱地獄の道を行くことなる。だからこの公園のベンチにでも寝っ転がり英気を養おうとした。残り半分を切ってきたペットボトルの飲み物を大切に大切に口の中に入れる。
公園のブランコでは、小さな子供とお母さんが、楽しそうに遊んでいるのが目に入った。僕は、ただただ汗みどろでベンチに横になる怪しいオヤジなので、通報されないよう一番離れた木陰のベンチに横たわって、目を閉じた。
目を閉じると、色々な思考が頭の中で生まれる。
「もう、引き返した方がいいんじゃない? よく頑張ったよ」
「まだいける。ここで休んで、ゆっくり行けば、祠まで行ける」
という、天使と悪魔の自己対話。
「疲れていると、幸せそうに遊んでいる小さい子供やお母さんを見ても、幸せを感じないんじゃね」
なんていう、冷静な自己分析まで!
でも確かにそうだ。普段だと幸せそうな家族を見ると、こっちまで幸せになって、いつまでも見ていたいと感じるものだけど、今はまったく幸せを感じない。
疲れているんだろうけど、こんな時に冷静でいられる僕は、僕に嫌悪感を覚える。
もっと、灼熱地獄と向き合えよ! って、自分に言いたくなる。
そんな余計に体力を消耗しかねない思考とおさらばして、僕は、また前に進んだ。
公園を出て、灼熱のアスファルトの道をただ歩いた。ついに締切り堤防に出た。少し風を感じることができる。水を見たり魚が跳ねる音を聞いたりできるのは、少し救いだ。
ここで思い切って走ってみた。大地というか堤防の上のアスファルトをガツンとける。身体が前進する。前進する。熱い! 50歩で身体が悲鳴を上げた。締切り堤防は1キロ近くあるので、たった50歩走っても、全く締切り堤防の向こう端にある祠に近づいた気はしない。
ペットボトルの飲み物の残りも、さらに少なくなってきている。締切り堤防には当然自販機はない。向こう岸にもないので、往復2キロ以上、新たに買い足すことはできない。だから水分補給も慎重にしないといけないという、新たなリスクをしょい込んでしまったことに気づいた。まったく、無計画なことよと、うつむき加減に首を振って自分にあきれてしまう。
こういう時の思考はグルグル回る。何度目かの、あきれ果てた感にさいなまれた時、やっと締切り堤防を渡ることができた。
渡り切ると祠はすぐ近くだ。そうなるとやはり、元気が出る。祠は小さな岩山の麓にある。民家を回り込むようにして進むと、見えてきた。小さな岩山に茂る木々により日陰になっている祠。気のせいかもしれないけど、祠の周りだけ少し気温が低く感じられ、いるだけで気分がいい。それは目的地に到着した達成感だけなのだろうか?
 
祠の近くの岩場に座った時、靴の中にお湯が流れ込む感覚に襲われた。なんだと思ったら、汗だ。溜まりに溜まった汗が座ったことで靴に流れ込んだようだ。
あぁこれで帰りの靴は濡れてグチュグチュの気持ち悪さとも戦う羽目になった。
でも、太陽も一段と傾いてきていることに勇気をもらい、復路スタート。グチュグチュ……
 
帰りの道も容易ではなかった。往路の反省から、水分不足になることを恐れコンビニやスーパーが見える度に立ち寄ってペットボトルを買うことにしたので、水分補給に陥ることはなかった。
途中の公園のベンチで横になると熟睡してしまい、気づけば、夕暮れ手前。
家にたどり着いたのは、午後5時を回った頃だ。
都合5時間以上かけて、歩いたことになる。
 
それで、何のために歩いたかって?
朝、起きたとき、走りたかったから。
それは、来月に80キロのマラソン大会に出場するので、そろそろ死ぬほど苦しい経験をしておいた方がいいと思ったから。
 
苦しさの先に喜びがあると思う。
喜びの先に感謝の心が芽生えると思う。
感謝の心の内に慈しみが芽生えると思う。
慈しみの先には、愛しさがあると思う。
愛しさの先に愛があると思う。
 
苦しさの先の喜びを目指すのが、人生の醍醐味かもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2023-05-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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