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初めてオカマバーに行ったわたしが感じたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:堀部佳野乃(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
わたしは先日、初めてオカマバーに行った。
厳密に言うと、オカマバーで行われるショーを観に行った。
 
場所は、福岡市中央区。
「あんみつ姫」というオカマバーだ。
 
友達が以前から「めちゃくちゃ良い」としきりに言っており、ずっと気になっていて、今回タイミングが合い、念願のあんみつ姫へ行けることに。
 
あんみつ姫に到着すると、まず外観に驚く。
ネオンの文字や、謎の彫刻が描かれた壁など、外観がいかにも怪しい……とまではいかないが変わっている。
入場料金を払い、開場を待っていると、突然オカマが現れた。
(ここでは、敬意を込めて「オカマ」と呼ばせていただく)
 
「みなさん、こんにちは〜! いよいよ始まるわよ~!」
 
がたいは良いが、仕草や口調は女性らしく、厚化粧をしてセクシーなドレスをまとった、よくテレビで見るようなオカマを初めて生で拝見したわたしは、その強烈な印象に口がポカンと開いたまま塞がらない。
 
そうこうしているうちに、オカマに促され、薄暗い会場に入った。
わたしは、なんと一番前のど真ん中の席が当たった!
オカマとの距離は、わずか数メートル、いや数センチ。
ラッキーなような、そうでもないような……(笑)
 
会場の中には、他にもオカマがいた。
観客が集まってくると、今度はオカマたちがわたしたち観客にどんどん話しかけてくる。
 
「どこから来たの〜? あら、地元じゃな〜い! ご職業はなあに? え、一般職? わたしたちと同じね〜! わたしたちもれっきとした会社員よ~!」
 
こんな調子で、観客ひとりひとりに話しかけ、全員の情報をおもしろおかしく聞き出していく。
 
「あら、あなた今日も来てくれたのね〜! ありがとう!」
 
こうやってひとりひとりの顔を見ながら、ひとりひとりの特徴を覚える時間を大切にしているからこそ、常連客も多いのかなという印象だった。
 
そして、ついにショーが始まった。
 
さっきまでのバラエティー番組で見るような豪快なオカマとは打って変わって、きらびやかな衣装をまとい、とても妖艶な仕草で踊るオカマたちの姿がステージ上に浮かび上がる。
 
しなやかとは言い難いが、程よい筋肉のついた均整の取れた身体は、女のわたしでも憧れるほど美しかった。
 
衣装替えも何度も行い、着物や、華やかなドレス、さらには紅白歌合戦での小林幸子ばりにたくさんの羽がついた巨大な衣装もあった。
 
軽快なダンスを踊っているかと思いきや、オカマを自虐にしたネタを披露するなど、驚いたり、感動したり、爆笑したり……
これでもかというほど、感情を行ったり来たりさせられるショーだった。
 
ショーはとてもおもしろくて、あっという間の時間だった。
「こんな異世界もあるってことを見せてあげるわよ〜」というオカマたちの宣言通り、今振り返ってみても、夢を見ていたのではないかというような感覚である。
 
しかし、確かに「異世界」だったとはいえ、たとえステージの隅のほうにいても、終始笑顔を絶やさず、体力的に厳しそうなダンスを踊っていてもそんなことを一切感じさせない表情でわたしたちを楽しませてくれるオカマたちは、普段わたしたちが目にするアイドルや、演劇などと何ら変わらないように感じた。
 
万人には受け入れられない世界なのかもしれないが、「目の前にいるお客さんを笑顔にしたい」という思いや、目指しているものは同じであり、わたしたちが普段触れるエンターテインメントと根底では繋がっている。
 
ショーの最後に、オカマがこう話していた。
 
「わたくし、こう見えて、一家の長男で後継ぎ息子で〜す!
みなさん、今日はありがとうございました〜!
ショーに出てくれるキャストを随時募集しております〜!
みなさんの周りに変わった方がいらっしゃったら、ぜひぜひお声がけくださ〜い!
みなさんには迷惑な人かもしれませんが、ここではコレ(お金のポーズを指で作りながら)になりますからね~!」
 
いや、すごい……
最後の最後まで、観客の爆笑をかっさらっていく。
どんなに長い話でも、絶対に飽きさせない超絶技巧話術をオカマは持っている。
 
それはそうと、最後の話で気づいたことがあった。
オカマにとって「一家の長男であり、後継ぎをしなければならない」という事実は、もしかしたら相当な重荷であり、葛藤があったのかもしれない。
世間で言う「変わった人」というのは、生きづらさを常に感じているのかもしれない。
 
でも、オカマバーの空間では逆にそれが武器になる。
その話題や個性のおかげで、お客さんが笑顔になってくれる。
 
オカマではなくても、変わっていると言われなくても、わたしにだってコンプレックスや嫌な経験はあるし、失敗も味わっている。
人間はみんなそうだ。
 
だけど、それを逆手にとって笑顔になってくれる人がひとりでもいたら、それはとても幸せなことなのかもしれない。
「あの人なら、このことを一緒に笑い飛ばしてくれるかも」
家族でも、恋人でも、友達でも、血のつながりもない赤の他人であるとしても、一見マイナスに思えることをプラスに変えられるかもしれないと思える原動力を与えてくれる大切な人がいれば、決して孤独ではない。
 
オカマたちにとっては、その大切な人がわたしたち観客なのかなと感じた。
だから世間とは隔絶されているように見える場所にいても、全然寂しそうじゃない。
むしろ隔絶されているどころか、しっかりと繋がっている。
楽しそうだ。
幸せそうだ。
 
新しい世界の扉が開いたような経験ができた「あんみつ姫」のショーを観に行くことができて本当に良かったと思う。
少々刺激は強かったが……(笑)
 
 
 
 
***
 
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2023-05-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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