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いつか転機がやってくる

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:コスモス(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「家の中を整理すると心がすっきりします」
いつも誰もが言う整理整頓の効用。
そうかな? いつもそれなりに片づけているのに、いつももやもやしてる、割り切れないなという憤懣や嘆きを持ち、現状を受け入れられないで苦しんでいる私がいる。
 
先だって、私の友人の女性の大工さん、と言っても彼女はれっきとした二級建築士で、なんとTBS収納講師やNHK教育DIY講師・テレビ東京リフォーム講師などをしてきた経歴を持つ。そんな人が我が家の整理整頓を助けてくれた。
 
経歴だけ見るとパワフルないかにも屈強なという感じを抱いてしまうがそうではない。人の気持ちに寄り添えるいかにも優しげな女性であるYさん。
 
「いつか転機がやってくる」というタイトルは、私に起きた、いえ正確に言えばYさんとYさんの娘さんがもたらしてくれた我が家のビフォーアフター物語を語りたくて名付けた。
 
Yさんとは「メロウ倶楽部」で知り合った。「メロウ倶楽部」を説明すると結構ややこしいので、私なりに言うとITを媒介として高齢者が交流する場である。DX時代に対応した老人クラブというところかなって感じ。
 
私はデジタル庁の仕事もなさっておられる若宮正子さんのファン。それで若宮さんの話を聞きたいと若宮さんが副会長を務めておられる「メロウ倶楽部」に入会した。
 
そこで、つき当たったのは会員になっては見たものの、参加者のITスキルが高く、なかなかついていかれないことでした。そこを何くれとなく世話してくれたのが当時役員だったYさんだった。
 
Yさんは建築関係だけでなくドローンを飛ばすなど、ITスキルもめっぽう高い人。わかる人はわからない人間のわからなさを理解できないというのは世の常。ところが彼女はわからないけれど、何とかしたいという気持ちを汲み取り寄り添える人。しばらくして、念願かない若宮さんとオンライン上で話ができた。それ以来、親しくしてもらっている。
 
ある時、私が、家が狭くて、とこぼすと何が問題か見てくれるという。
狭いだけでではない問題が他にもある。他人にはなかなか言えない問題だ。
 
まだ私は仕事もしているし、ライフワークもある。それらができる時間が奪われているということが問題なのだ。夫が要介護状態になっているので手がかかる。それくらいは乗り越えてみせると意気がってはみるものの、体力が落ちてきているので睡眠時間が少なくなるのはひどくこたえる。
 
家を見に来てくれた日は夫がリハビリで留守。娘さんの建築士も一緒に来てくれた。彼女が専門家の視点で診断してくれると、今使っていないものを処分するだけで十分で、リフォームの手を入れる必要はないとのこと。
 
早速、使っていない電動マッサージベッドを処分することになった。家事の動線と自分の居場所を区別すれば、プライベート空間ができ、そこでの仕事が自分だけの時間となるとのことだった。
 
言われてみればその通り、でも実行はね……というところだが、娘さんと2人がかりで家具を動かし、電動ベッドも処分するために運び出してくれた。
 
作業が終わって、お茶していた時に、娘さんが「いつか転機がやってくる」と何気なく言ってくれた。
 
転機って何? 思わず口にしそうになって慌てて言葉を飲み込んだ。確かにそうだ。いつでも事態は動いている。
 
年月とともに人は老い、あれほど頑健だった人が今では私にすべてを負っている。結婚生活で私は何の得もしていないのに、結婚制度の枠の中では介護するのは配偶者だ。損得からしたら割に合わない。私の命が先にまいってしまうかもしれない。それは誰にも分らない。天災が襲ってくるかもしれない。それも予測ができない。
 
転機は生死のことのみではない。状況を打開しようとしてもうまくいかないが、仕事がなくなるということも考えられる。これが転換点になるかもしれない。ライフワークと思い、打ち込んできたことから手を引かなければならないことが来るかもしれない。これも転換点になる。また、今は家族2人だが息子家族との同居もありうるかもしれない。
 
一番考えられる転換点は、いつか私の心のタガが外れて世間並みの介護者ではなくなること。世間並みのという考え方を捨てて、自分の生きたいように生きることなんだろうな。
 
生きたいようにといっても暮らしは付いて回るのだから家事からは逃れられない。家事代行サービスは費用の問題で却下。ならば、最低限の家事で済ます。
幼い子を背負いながら買い物も掃除洗濯もし、常勤職で働いていたあの頃、埃で死なないとばかりに掃除機をかけるのは週に1回、料理はスロークッカーという調理器具に材料を入れておけばいつの間にかできているというアレ。その手があったではないか。
 
電化製品は昔よりもっと進化しているはず。それを取り入れよう。
 
ただ、私の気持ちが問題だ。背負い込まないことに徹しよう。夫は夫の道、夫が自分で作ってしまった歩行困難なのだから私が手助けする必要はない。
 
「いつか転機がやってくる」「いつか転換点ができる」
外から否応なしにやってくる転機・転換点もあるだろう。当然だ。逆らえない。
しかし、心の転機、つまり、心のありようを変えることはいつでもできる。
 
心のありようを変えても事態は必ずしも好転しない。でも、気が軽くなることは確かだ。
 
建築士親娘との交流から得たもの、それはいつでも変えられる自分でいようということ。友人は女性大工のパイオニアであり、その道では勇名をはせたYさん。でも、今はドローンに夢中。
 
そう、なんだっていいじゃないの。私にもいつか転機がやってくる。あれが転換点だったねと自分で思い出す時がやって来るに違いない。
 
 
 
 
***
 
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2023-06-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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