メディアグランプリ

30円で学べた伝える技術


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:都宮将太(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「やばい」
「これは非常にやばい」
 
 
今日は大切なお客様との打ち合わせ。今日の打ち合わせで年間ノルマを達成できるかが決まる。
お客様と約束した時間は午後1時。時計の針は12時50分になろうとしている。
急いで向かっても30分はかかる。約束の時間を一時間勘違いしていた。
お客様へ遅刻の連絡をしようにも、今日に限ってスマフォを忘れてしまった……。
 
手帳にお客様の連絡先は記載しているため番号は分かるが、番号だけ分かっても意味がない。
「コンビニに入って電話を貸してもらおうか」
一瞬そう思ったが、トイレを借りるのとは訳が違う。
焦りがピークに達した。口の中はカサカサになり、心臓が大きく跳ねる。
そんなとき、私の目の前に希望の光が映りこんだ。
縦長の電話ボックス、公衆電話だ!
 
12月の真冬日だったが、手袋もつけず、ジャンバーも羽織らず、約50メートル先の公衆電話に向かって走り出した。
慌てて公衆電話の扉を開ける。しかし、ここで問題が生じた。
「これ、どうやって使うんだ?」
約三十年生きてきて、ボックス内に入るのは初めてだった。
一瞬、ドラえもんの道具が頭をよぎったが、すぐに消した。
「10円を入れて電話をする」その程度の知識しかない。
財布の中を確認する。スマフォ決済のアプリや、電子マネーにお金は入っているが、今日はまるで意味がない。
私は祈る気持ちで財布のファスナーを開けた。
そこに入っていた銅の硬貨が輝いて見えた。
 
10円玉を三枚取り出す。お札もあるが、両替に行く余裕などない。
この10円玉三枚で全てが決まる。
私は三枚を硬貨投入口に入れる。そして手帳に書かれている、お客様の電話番号を押す。プッシュ音もなく、繋がったか不安になる。
「頼む……。出てくれ」
祈ること約3秒。
「はい」
どこか不安な声が聞こえた。それはそうだろう。後々知ったが、公衆電話から発信すると、相手には非通知表示になるそうだ。
 
相手が電話に出ると、電話の液晶画面に『⑩⑩⑩』と表示された。
「なんだこれは?」
電話に出た相手に自分の名前を名乗ると、液晶画面に表示された⑩が一つ消えた。
そうか……。これはカウントダウン。全て消えれば、通話は容赦なく切断されるだろう。
若干早口になりながら、私は謝罪した。
「時間を勘違いしていて……」と、普段の私なら言い訳から入っただろうが、今日はそんな時間なんてない。言い訳中に電話が切れたら終わりだ。
結論だけ的確に伝えた。
「申し訳ございません。30分遅れます」と。
「いいよ! 気を付けてね」
「申し訳ござい……」
ここで電話が切れた。
相手はとても寛大に許してくれた。今になって思うと、本当に良かった。もし、電話口で注意されれば、その最中に電話が切れるところだった。
 
公衆電話を出ると、近くに止めたバイクに乗って急いてお客様のもとへ向かった。
運転中、私は思った。相手にこちらの要件や気持ちを伝えるとき、余計な前置き等は必要ないのでは? と!
 
私はお客様との商談が苦手だった。
自分の伝えたいことが、うまく相手に伝えることができないからだ。
ある日、契約をすべて完了した数日後、「こんな内容聞いていない」とクレームを言われたこともある。
何故相手に自分の思いが伝わらないのか。上司にも相談したが、明確な答えは出なかった。
しかし、今日の公衆電話のおかげで分かった気がした。
私は、相手に要件を伝えるとき、全く関係の無い雑談をしたり、とにかく本題に入るまで遅い。さらに本題も遠回しに伝えていたため、相手も自分が何を伝えようとしているか、分からなかっただろう。
 
そんなことを考えながらバイクを走らせると、お客様のもとへ到着した。
大切な商談だったが、私は一つの実験をした。
それは、商談する場所を公衆電話の中とイメージし、頭の中で30円を入れてみた。
脳内には『⑩⑩⑩』と映し出された。
余計なことを話す時間なんてない。無駄話しなんてしていたら、容赦なく電話は切られる。
「遅れて申し訳ございませんでした」
遅れた謝罪を終えると、私は速攻で本題に入った。普段なら天気の話し等をするが、そんな余裕はない。
なぜなら、脳内の液晶は『⑩⑩』と、すでにカウントダウンがはじまっているからだ!
 
商談が終わった。結果は大成功。
遅刻したにも関わらず、大口の契約をいただくことができた。
公衆電話のおかげ。かどうかは分からない。しかし、公衆電話のおかげで伝える技術を学べた。
それ以降の商談でも、私は余計なことは一切話さかった。その方が、スムーズに商談が進み、自分の伝えたいことが、相手に伝わった気がした。
それに伴い、営業成績も伸びていった。
 
 
今まで、ずっと悩んでいた。
相手に自分の気持ちや、言いたいことを伝えるにはどうしたらよいか? それは、遠回しに伝えたり、無駄な話しをせず、要件だけを明確に伝える。
私がたどり着いた答えだ。
 
公衆電話を利用するために使用した30円。この30円で、私は伝える技術を身に着けることができた!
 
 
 
 
***
 
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2023-06-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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