あなたも言ってみませんか? ラッシュ時でもスムーズに電車から降りられる魔法の言葉
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:小城朝子(ライティング・ゼミ6月コース)
私は免許を持っていない。
最近の若い人は車に興味がないと聞くが、私は、なんてったってバブル世代。
免許を持っていないなんて、人に非ずということで、友人から天然記念物に指定されている。
ゆえに私の愛車は電車である。愛車の名前は中央線。
都内の人なら誰もが知っている、混雑と遅延で悪名を欲しいままにしているオレンジ色のニクイ車両だ。
中央線は東京駅から新宿を抜け、西東京のベッドタウンを超え、特急列車でもないのに、なんと山梨県の大月まで連れて行ってくれる長距離路線だ。なので、通勤時間の混雑ぶりは相当なものである。
さらに、中央線といえば、都心を走るJRの中でも遅延率が異様に高い。
車両点検に始まり、車内トラブル、ホーム上の接触事故に、はたまた人身事故までアラカルトに富んでいる。おまけに強風や雪にも弱く、何かにつけて遅延する。
なので、本当は寝坊して遅刻したとしても「中央線が遅れちゃって」と言えば、
「中央線じゃしょうがないよね」と相手は黙るしかない。
まさに、遅刻の理由にはもってこいの路線なのだ。
そんな、遅延常習犯の中央線は、朝のラッシュ時は乗客が乗り切れないほど混雑する。どこの駅のホームも、これでもかという人・人・人のミルフィーユ現象。
当然、車内はカオスとなり、ランバダ状態で朝からチークタイムが繰り広げられる(若い方には解らないだろうが)。
そんな混雑の中、私は思う。
隣の乗客を指名できたなら、どんなに幸せなことかと……。
なぜ、私の隣はいつも脂ギッシュなオジサマなのだろう。たまには、向こうの爽やかな若者にチェンジしてくれないかと密かに願う。
と、そこで、名案を思い付く。そうだ、JRにお願いすればいいのだ。
「イケメン車両を作って欲しい」と陳情だ。どんなに混んでいても、周囲がイケメン揃いであれば、苦痛のラッシュがパラダイスに大変身。
喜んで東京・大月間の定期を購入するので、JRにも利益が生まれること間違いなしだ。
と、アホな妄想をしながらラッシュに耐える。
さらに、小柄な私には魔法がかかる。
周りに「腹だけ横綱」のオジサマに囲まれると、あら不思議。床から足が離れ、引田天功の如く宙を浮いたまま次の駅にイルュージョン(これまた、若い方には解らないだろうが)。
嘘のような話だが、私の貧相な体はオジサマ方の立派なお腹に挟まれて、本当に体が浮いてしまうのだ。
浮いた瞬間は楽しいが、これが続くと大変だ。身体はねじ曲がり、服はグシャグシャ。態勢を立て直すにも、足が床についていないので直せない。
そうだ、これもJRにお願いだ。
イケメン車両を陳情する際、顔だけでなく、身体もスリムな細マッチョとリクエストすればよい。もちろん、料金は割増しで。
これまたJRともウィン・ウィン。と、更なる妄想を続けるうちに勤務先の駅にご到着。
しかし、である。ここからが一大事。
目的地で降りることが、とにもかくにも大変なのだ。車内の奥の奥に押し込まれると、そこは迷宮、ラビリンス。
出口が見えない、降りられない。まごまごしていると、更なる乗客が押し寄せ、降りられないまま次の駅へLet’s Go!
そんな事態を避けるため、多くの人々は「降りま~す」「すいませ~ん」と声を上げ、必死の思いで降りていく。
はたまた「どけよ!」と声を張り上げ、力業で降りるツワモノもいる。
私もご多分にもれず、小声で「すいません」と言いながら降りているが、電車を降りるだけなのに、なぜか罪悪感にさいなまれる。さらには、電車を降りるだけなのに、なぜ謝らねばならないのかと怒りもよぎる。
かたや、電車から降りない人の様子といえば、ヤレヤレといった、いかにも面倒臭そうな、しかめ面ばかり。更には舌打ちをする人もいる。
中には、せっかくドアに寄りかかれるベストポジションを確保したのに、このポジションを渡してなるものかと、頑として動かない、素晴らしく意思の固い人もいる。
電車を降りるだけなのに空気が殺気だってくる。
朝から気分が悪くなるのは誰もが嫌なはず。それも、電車の乗降ごときでストレスを感じるなんてアホである。
そんな悩ましいラッシュ地獄の真っ最中。突然、私は神からの啓示を受けた。
なんと、電車からスムーズに降りるための、魔法の言葉が降りてきたのである。
いつものように、会社の駅にご到着。
いつものように、降りるのに一苦労。
そこで、早速、神からのギフトの言葉を使ってみた。
すると、いきなり私の前に空間ができる。
モーゼの十戒の如く、私の前に道が開けるではないか。私は、貴婦人の如くシャナリシャナリと気持ち良く電車から降りる。
その魔法の言葉とは……
「お譲りいただけますか」
その一言で、周囲の人々はさっと空間を提供してくれる。
大きな声で言う必要ない。そっと、囁くだけで、誰もがスッと譲ってくれるのである。
中には「どうぞ、どうぞ」と笑顔で声まで掛けてくれる人もいる。
とはいえ、「お譲りいただけますか」は気取っていて、こっぱずかしさも否めない。
そこで別のフレーズはないものかと頭をひねり、こんな言葉で試してみた。
「恐れ入ります」
なんということ。これまた、同じような効果があるではないか。周囲の人々は、気持ちよく空間を作ってくれる。
しかし、「お譲りいただけますか」の方が、目の前の空間は俄然広い。
皇室の方々が使うような言葉に、どうやら人は弱いらしいという、これまた新発見である。
ノーベル賞間違いないと、一人ニヤケて、ほくそ笑む。
譲ってもらったら、もちろん「ありがとうございます」は忘れない。
すると、車内のラビリンスの中でも
「お譲りいただけますか」
「ありがとうございます」
「恐れ入いります」
「ありがとうございます」
と、2・3回ほど繰り返せば、スムーズかつ気持ち良く電車を降りることができるのだ。
もし、あなたが、ラッシュの中、目的地で必死の形相で降りているなら言ってみて欲しい。
「お譲りいただけますか」
恥ずかしい人は「恐れ入ります」で、是非、お試しあれ!
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168
■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」
〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325