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私と店主との戦いに、コミュ力高い系女子が示した解決策

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:くろねこ(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
会社の近くに人気の街中華がある。
昼時ともなれば、雨の日も晴天の日も寒い日も暑い日も30人ほどの企業戦士の行列が出来ている。
安い、早い、うまいの3秒師揃った人気店。当然にして私もたまに行列に加わる。
 
ただ私と店主の間では、毎回静かな攻防が繰り広げられている。
ごはんをどうしても食べさせたい店主と、ごはんは食べたくない私の戦いだ。
ごはん、とは正確にはお米のこと。
 
この人気店はとにかく回転が早く、席について注文するとものの1分ほどで熱々の料理が運ばれてくる。メイン料理にごはん、中華スープ、お漬物の4点セットだ。
壁掛け時計のサイズのお皿にメイン料理がこれでもかと乗っており、ごはんは丼サイズ。中華スープだけは手のひらにすっぽり収まるサイズだが、総じてボリューミな定食だ。
 
それを高速で食べきって次の人に席を譲っていくスタイルで、お客さん全体でその店の秩序が保たれているような空間だ。お食事後にスマホをみたり、ゆっくりお茶を飲んだりする人はいない。(そもそもお茶は出てこない)
 
私は食べるスピードには自信があるものの、周囲の戦士と同等の量を食べきることは出来ない。しかしこの店を訪れた以上、人気店の秩序を保つ一員としての役割がある。すぐに次の戦士に席を明け渡さなければならないのだ。
 
初回で量が多いことは把握したので、私の取った作戦は「ごはん少なめ」だった。
お店のお姉さんは、はーい! 少なめ了解! と元気に返事をしてくれたので、安心して待っていたのだが。
 
私の目の前に置かれたごはんの量にびっくりした。
……全然少なくなってない。それどころか前回と同じ量では。
一瞬迷ったが、出されたものは食べるしかない。必死に口の中に押し込んでみたものの、結局残してしまった。不覚。ごはんをよそっているのは、この店の店主だ。なにかの手違いかなと思い、その後に訪れるたびに「少なめ」コールを2回ほど実施してみたがやっぱりごはんはいつも大盛りだ。
 
私も悪かったかも知れない。店主側の立場になって考えてみれば、少なめという表現はとてもわかりにくい。少なくしすぎてこんなに減らされるなんて! ついては30円値引きして欲しい、など言われたら対応が面倒だろう。もっとわかりやすい表現を採用すべきだ。
 
次なる作戦は「ごはん半分」だ。
半分ならば明確でわかりやすい表現だ。きっと伝わるだろう。
 
注文の1分後、注文した定食が届いた。
そのごはんの量は……減っている!
半分というよりは、私の目視によると8割くらいなんじゃないかと思うが、確かにごはんの量は減っていた。追い打ちでお姉さんが机に料理を置く前に「ごはんその半分に減らして欲しいです」と伝えてみたところ、残していいから! と返されてしまった。
 
米どころ新潟出身の祖父母を持つ私は1粒のおこめに7人の神様、と言われて育った。残す前提でお店には入れない。もしかしたらこの人気店に私はふさわしく無いのではないか、お客がお店を選べるようにお店側だってお客を選ぶことが出来るはずだ。そんなことを考えて、しばらく足が遠ざかっていたある日のこと、お店の扉に張り出された「本日のメニュー」を見て足が止まった。
 
なんと生姜焼きだ。この人気店の生姜焼きは豚肉がジューシーで柔らかく、甘辛い生姜風味のソースとマヨネーズの絶妙なマッチングが楽しめる。ソースを絡めた豚肉でキャベツとマヨネーズをぐるっと巻いて頬張ると、口の中は天国だ。間違いなく、会社近辺ランチ四天王の1つといえる。
 
あの味を想像してふらーっとお店に引き寄せられたタイミングで声をかけられた。
会社の後輩だ。彼女はいつもきれいに身なりを整えた女優・山本美月似の女性だ。ほんわかとした見た目と裏腹に交渉事はきっちりまとめてくる出来る営業だった。美月ちゃんも生姜焼きが好きらしく、一緒に入店することになった。
 
席について生姜焼きを注文する。その直後、美月ちゃんはお店のお姉さんに一言付け加えた。
「スープの器にごはんをお願いします♡」
 
え、え、え。そんなことが出来るの?
お姉さんに視線を移すと、はーい、了解! という返事。慌てて私もそれで。と伝えた。
 
そして届いた食事を見ると、注文どおり中華スープの器にごはんが盛られているではないか。
盛り方は漫画のような山盛りだが、そもそもの器が手のひらにすっぽり収まるサイズなので、食べきる事ができた。美月ちゃん、すごい。
 
どうやってこの方法にたどり着いたのか聞いてみると、ピークタイムを外してランチに行った際にお店のお姉さんと相談したとのこと。店主であるお父さんはお腹いっぱい食べて欲しい、という思いからどうしても大盛りになってしまうくせがある、ということを聞き出し、それなら大盛りになっても食べ切れるサイズならいいよね、となり中華スープの器が選ばれたらしい。そんな解決法思いつかなかった。
 
私は一方的にメッセージを発して相手の反応を見ながら仮説を立てていたが、見事に失敗した。美月ちゃんは相手にヒアリングして、より精度の高い解決策を導き出した。コミュニケーション、つまり情報の双方向のやり取りを正しく行っていたということになる。仕事ならいざ知らず、ランチのごはんの量なんて、大したことではないかもしれない。ただそんなよくある日常の出来事に対してもさらっとやってのけてしまうのは、積み重ねた行動習慣の賜物なのだろう。
美月ちゃんのコミュ力、見習いたい。まずは自分から一歩踏み出して尋ねることが大事そうだ。
 
 
 
 
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2023-06-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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