坊主憎けりゃ存在まで憎くなるらしい
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:Maki (ライティング・ゼミ4月コース)
ことの始まりは年度末に行われた人事考課。
一人のスタッフから人事部長である私のところに長文メッセージがチャットで送られてきた。思わず心の中で「巻物かよ……」と悪態をつきたくなるそれは、もはや「チャット」ではなかった。
話の便宜上、このスタッフをC君とする。C君によると、何でも自分に対する上司からの評価がフェアではなく撤回してほしいとのこと。確かに彼の話を聞いている分には上司側に非があるように聞こえる。しかし人事の人間である以上、片方だけの言い分を聞くわけにはいかない。早速件の上司に声をかけた。
もちろんクレームが上がってるとは言わない。C君に対する評価はどのような意図があったのかを詳細に聞いていく。すると、たしかにC君にもう少し丁寧なコミュニケーションをするべきだったと反省の弁が漏れた。ここの評価は変えられないけど、ここの部分については譲歩の余地があると思うので再度話し合いを持つとのこと。
そこで上司、C君、私の3人で和解に向けたミーティングを設定。一部とは言え上司がC君の言い分を認めて譲歩することになっていたから、それを伝えてC君が「分かりました。変更してくれてありがとうございます」といって終わるプランだ。だから15分もすれば終わるだろうと思っていたミーティングは、何と1時間半におよんだ。
ミーティングはこんな構成だった。少なくても予定では。
1. 私から現状説明と今日のミーティングの目的確認
2. C君上司がC君の言い分への理解表明および、非についてのお詫び
3. C君上司からの譲歩箇所提示と合意形成
4. 2人で和解
ステップ1は問題なかった。雑談もはさみながら和やかにミーティングが始まった。ひとまず安心。そして何か起きるのであればココだろうと考えていたステップ2。C君上司が少し緊張気味に口を開いた。「君の言うことは理解できた。Xについては僕が悪かったと思う。だけどYについては実際にこのような事実があったので撤回することはできないから、そこは分かってもらいたい」そしてここで戦いの火蓋が切られた。ここからはC君の言葉、ツッコミ付き。
● そもそもこのようなネガティブフィードバックをするのであれば、年度末の人事考課を待たずに都度コミュニケーションをするべきではないか(おっしゃるとおり)
● それをマネジメント層全員が見る評価表が作成される段階になって突然こんな内容を送りつけてくるなんてフェアではない(まあ、そう言いたくなる気持ちは分かる)
● あなたは自分のボーナスの取り分を多くしたいから、人を貶めることで自分の相対評価をあげているんだろう(ん……?)
● ボクのことをプロジェクトマネジャーとして失格だと公言するなんてあなたこそ上司として最低だ(失格って言ってなーい!)
皆さんも「誰もそんなこと言ってないから!」「どこからその解釈をしたんだ?」というような状況に陥ったことはないだろうか。このC君の場合も、C君上司は上記に紹介したセリフを言っただけなのだ。だから「ボーナスを横取り」しようともしてないし、ましてや「プロジェクトマネジャー失格」なんて一言も言ってないのだ。(話題になってる評価表にも記載されていない)要するに彼は自分が捉えたいように話を変換してしまっているのだ。C君の脳みその中でのみ起こっているストーリーなのだ。C君の場合も同様だ。
● 自分にネガティブコメントをされた
● 傷ついた
● 原因を外に求める
というステップがあり、この「外」の格好の的にC君上司が選ばれたのだ。
● 上司は自分の評価をあげたいと考えている
● ボーナスを少しでも多く自分に振り分けようとしている
● 部下の自分をプロジェクトマネジャー失格というセンセーショナルな言葉で貶めた
というストーリーが作られ、上司=自分を積極的に失墜させようとしている悪魔のような存在と捉え、それを補完する情報のみを集めてくる確証性バイアスを始動させる。1度いやなことをされると「あの人はこういう人」と無意識に判断され、そしてそれを補完する情報を収集してくるそれだ。
人にはそれぞれ一人ずつの価値観があり、そのフィルターをとおして物事を捉えている。だから100%伝わるコミュニケーションなんて存在しないと言っても過言ではない。では正しく捉えることは不可能なのかといえばそうでもない。攻撃的に思える発言に対して一旦反応するのを遅らせよう。その上で「今こう言ったけど、本当にそうなのかな」や、そもそもその前提を疑ってみることをオススメする。
そうすると自分たちが意外と優しい世界に住んでいることに気づくことができる。ちょっといつもと違うメガネをかけて言葉を見つめてみてはどうだろうか。
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