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小学3年の私がF先生から学んだ「お風呂で裸を見られたら」っていう話


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記事:桜井なな(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
旅先で大浴場に行った時などに、ふっと思い出す話がある。
 
その話の発端については、今思い出しても謎だ。
 
私が小学1年から3年まで、F先生という女性の先生が担任だった。
 
そのくらいの年の子供って、大人の年齢を想像しにくいと思うし、そんなことはあまり気にしないと思うのだが、当時の親たちの会話を思い出してみると、F先生の年のころは40代後半ではないか、と推察されていた。
 
F先生は独身で、外見的特徴といえば、いつもパンタロンを履いていて、髪をきつくおだんごに結い上げていた。
 
そのせいかどうか知らないが、目が吊り上がっていて、普通にしていても怖い顔なのだ。高学年の児童からも、親たちからも「F先生は怖い」と評判だったように思う。
 
実際怖いのだ。まあ、今じゃありえないけれど、子供を怒鳴るし、体罰もあった。今だったら絶対に親が乗り込んでくるレベルだ。子供ながらに、びびりまくっていた。
 
低学年を受け持つなら、「さあみんな、歌を歌いましょう!」という感じの、牧歌的なやさしさがあってもよさそうなものだが、そんなことは一切なし、笑った顔すら見たことがないのではないかというくらい、いつも怖い顔をしている先生だった。
 
学校で習うことは役に立たない、なんてよく言うけれど、当然ながらそんなことはない。「役に立つ」という言葉を通り越して普通になってしまっているから、感じられないことの方が多いのではないかと思う。九九にしたって、方程式にしたって、ごく自然に使っちゃっているもんね。漢字なんか、まさにそう。
 
そして「お勉強」以外のこともたくさん、学校という場では習う、学ぶ。特に友達との関係性の中から学ぶことは多いよね。
発言力の大きい子とそうでない子がいるとか、交換日記というものは最初は楽しいがフェイドアウトすることが多いとか、クラスの中でもグループというものができるってこととか、友達と同じ人を好きになると面倒なことになる、とか……
 
それはもう、低学年の時からお勉強もそれ以外も、いろんなことを学んだわけだけど、いかんせん私の場合30年以上前のことなので、しみ込んでいるもの以外は、忘れていることも多い。
 
確かにF先生はインパクトの強い先生ではあったのだが、とはいえ教室内で言われたことの大半はやはり忘れている。が、ひとつだけ、どうしても忘れられない、いや、ふとした時にいまでも時々思い出す、大きな学びがある。
 
それが「風呂場で裸を見られたら、顔を隠せ」ということだ。
 
これが何年生の時の出来事だったか思い出せないのだが、さすがに1年生ではないと思うので、おそらく3年生の時だったんではないかと思う。それにしたって、なぜに9歳の子供たちに向かってF先生はそんなことを言ったのか。前後の具体的な話は思い出せない。
 
でもたしか、大浴場のようなところで間違って男性が入ってきたら、という話だったように思う。多くの人はそういう時に体の方を隠すけど、女性の場合は隠したい場所が上も下もだとすれば、手が足りない。しかも、隠したところでだいたいは、わかる。それに対して顔を隠せば、裸は見られるかもしれないが、誰の裸かわからなければ見たことにならない。だからそういう時は顔を隠すんだ。というような内容だった気がする。
 
それを聞いた小学3年の私は、いやいや、やっぱり体を隠したいでしょ、と思った記憶がある。
 
あなたは、どっち派だろうか?
(どっち派もなにも、考えたことないとは思うけど)
 
経緯は覚えていないものの、なぜかこのF先生の教えは、幼い私の中に強烈に残ったようだ。
 
そして今、大人になった私は圧倒的に、F先生の意見を支持している。
 
自宅のお風呂場で父親が間違ってドアを開けた、という場合はもちろん別だが、大浴場で間違って男性が入ってきた場合で言うなら、断然顔を隠した方がいい。
 
そもそも知らない人ならば、顔すら隠す必要があるのか? と思うかもしれない。それも一理あるけれど、お風呂上りの廊下ですれ違うかもしれないことを考えたら、隠しておきたいのが女心だろう。
 
あっ! と思って、目が合った瞬間には、顔はもちろん、裸もある程度認識されていると思っていいだろう。そういう時の男性のセンサーって、目をそらさなければいけない、と頭では思うものの、本能的に体を見てしまうものだと聞いたことがあるような気もする。お湯が濁っていれば、だいぶ助かるけどね。
 
幸か不幸か、私はまだ、その教えを実践するシチュエーションに遭遇したことはないが、ありえない話でもないと思う。そして多くの人がやはり、タオルや手で体を隠そうとするんじゃないかな、と思うのだ。
 
隠せたとしても、もし目が合っちゃったら、だいぶ気まずいよね……
 
というわけで、小学3年生で鬼のF先生から学んだ一番の学びは「風呂場で裸を見られたら、顔を隠せ」だ。ぜひあなたも、そんなときがやってきたら、この話を思い出して、後ろを向くか、顔を隠していただきたい。
 
でもでもでも。そもそも、見られて問題ない裸だったら、どちらも隠す必要ないのかしらん、と思ったり思わなかったり……
 
まさかF先生も、この話を30年以上も大事にしている生徒がいるとは夢にも思わないだろうな。
F先生、ありがとうございました。私も大人になりました。
 
この学びが、誰かのお役に立てば幸いである。
 
 
 
 
***
 
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2023-07-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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