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雨上がりの空のように


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記事:メイプル・シュガー (ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
私たちは生きている中で、たくさんの人と出会い、別れる。別れといっても、様々な種類の別れがある。特に、大切な人との別れは、胸が痛む。それが事前に分かっていたとしても手がつけられないほど、悲しみがおそってくることがある。できれば、大切な人とは別れずにずっと一緒にいたい。だけど、定期的にやってくる別れがある。そう、3月の別れだ。日本では、学校や企業など多くの場合、年度が4月に始まり3月に終わりを迎える。だから3月は、別れの季節なのだ。
 
私は小学校で働いているので、子どもたちとの別れは毎年毎年やってくる。4月に出会ったときに、目の前の子どもたちと「どんな1年を過ごし」「どう別れるか」を想定しながら、その1年を過ごす。
 
あまりにも楽しい時間だと「このまま、一緒にいられたらいいのに」「ずっと、別れがこなれればいいのに」と思う。それでも、1日1日を過ごしているうちに、いつのまにか季節はめぐり、別れがやってくる。
 
別れることが分かっているのに、いざ別れの時期になると寂しさでいっぱいになる。「もっと、できることがあったかもしれない」「あのとき、ああ言えばよかった」なんて後悔することも出てくる。満足いく別れができたことなんて、40年近く生きてきた中で、一度もない。
 
それでも、いくつもの別れを経験しているうちに見えるようになったことがある。それは、別れる瞬間に、わきでてくる感情だ。この瞬間でしか味わうことができない、最後の特別な時間。
 
別れ際には、自分の中でさまざまな感情がかけめぐる。それは、その人に思い描いていた自分を初めて知る瞬間でもある。
 
「こんなにあの人のことを大切だと思っていたんだ」「泣いてくれるほど、思ってくれていたんだ」別れるからこそ、もう一度新しい自分やこれまで気づかなかったあの人の思いと出会うのだ。
 
これは、何とも不思議な体験だ。その人と積み上げてきた時間の中では、気づけなかったことを、最後の時間を迎えるからこそ、見えてくるものがある。2人の間にそっと春風が吹き抜けるように、その人との間に優しく、あたたかな時間が流れるのだ。
 
3月の別れが、他の別れと違うのは、これが「新しい道」に進むためのステップだということだ。進級や進学、就職……。それは、次のステージに進んでいくための「希望の別れ」だ。雨が降って地面が固まり、空に虹がかかっていくように、別れた後でも、いつか晴れて、朝がくる。
 
4年前の新型コロナウイルスが世界中に広がったとき、学校は突然休校になった。宣言が出されてから残された時間は、たった1日。あまりにも急すぎる別れ。子どもたちに、十分なお別れも言えないまま別れることになった。それでも最後に「ありがとう」「元気でね」と言えたことに、救われた。世の中には「さようなら」さえ満足に言えない別れもあるのだ。大きな災害や事故が起きた時には、お別れができない人がいる。だからこそ、大切な人と最後のお別れができるということは、もしかしたらすごく尊い時間なのかもしれない。その人との終わりの時間を、味わうことができたのなら、ちゃんと別れることができたのなら、その別れは、いつかきっと背中をおしてくれる。これからの人生においてきっとパワーを与えてくれる。時が経って、特別な思い出に変わっていくのだ。
 
今、心のどこきに誰かと別れたさみしさがまだ残っている人がいるかもしれない。もしかしたら、そのさみしさはしばらく消えずに、心のどこかに居続けるかもしれない。だけど、そのチクリと突き刺す胸の痛みは、それだけその人を大切に思えた証。その人とつながって関係を築けた証。そう思わせてくれたあの人に「ありがとう」と言いたくなる。たとえそれが一瞬の出来事であったとしても、そしてその人との関係が「後悔ない」と言い切れないとしても、そう思える相手がこの広い世界の中で1人でもいたってことは、奇跡だ。
 
大切な誰かを失ったり、信頼している人と離れ離れになってしまったりと、生きていく中で、たくさんの別れがある。いくつもの別れを乗り越えて、今日を過ごしたあなたに最大のエールを贈る。別れを経て、あなたは、これからどんな人や場所、自然や景色と出会うのだろう。出会うから、別れがある。別れは、時につらく、さみしいのだ。でも、きっと大丈夫。そのさみしさを胸にだいて、顔を上げて歩いていこう。夏の空が待っている。
 
 
 
 
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2023-07-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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