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自己分析が大嫌いな私がうっかり自己分析していた話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:kana (ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「就活なんて大っ嫌い」
タタタタッと軽くスマホに打ち込んで、ため息をついた。
青い鳥のアプリというものは、打ち込んだ言葉は連れ去ってくれるけど、重苦しい気持ちは持っていってくれない。
リクルートスーツ姿で息も絶え絶えになりながら、面接終わりにカフェに沈み込む。
 
「200文字で私のことなんてわかるわけないよね」
沸いてくる虚しさを誤魔化しながら、エントリーシートの枠を埋めていく。
そして面接に呼ばれたなら、顔に貼り付けたとっておきの笑顔に載せて、覚えてきたテンプレートを放送する。
 
中でもいっとう嫌いなのは、「自己分析」だ。
自己肯定感がそれなりに低いからか、自分と向き合うことがとにかくしんどい。
自分のパーソナリティなんて、薄っぺらくて剥いても何かが出てくる気がしない。
 
「とりあえず目の前のことを精一杯こなしてたら、二十歳超えてただけ」
「もっと目標を持って頑張っていたみたいなエピソード欲しいけど、無いんだよな」
「仲間と呼べる関係性も、そこまで構築できてきたかわからないな……」
 
自己分析の本の質問に答えていると湧いてくる、やり場のない気持ち。
どこにも辿り着かない深い森を彷徨っているみたいな気分になる。
 
そんな鬱々とした就活の中で心の拠り所にしていたのが、お気に入りのカフェに行くことだ。
木製のナチュラルな家具に、ひと癖ある雑貨。
ふっと窓の方に目をやると、鈍い色の金属でできたカエルの置物と目が合う。
なんとも間抜けな顔だ。
注文した焼きたてのスコーンとロイヤルミルクティーが待ちきれない。
ここへ来ると、まるで時間の流れ方がゆっくりになったように感じる。
自ら設計した就活ロボットになって面接を受けてきたあとで、人間に戻る場所がここだ。
 
ここのカフェは絵本や漫画を含むいろんなジャンルの本も置いてあって、自由に読める。
私はここの本棚の前に立つのも大好きだ。
 
そんなある日ふと手に取ったのが、「誕生日占い」の本。
中学生の頃、こういう占いが好きで、「当たってるー!」と騒ぎながら友達と家族とよく眺めていたものだった。
懐かしいな、と少し郷愁に浸りながら、その年季の入った分厚い本を開く。
自分の誕生日のページを探して性格の部分を読んでいくと、あれ、と思った。
中学生の頃とは違って、ちょっと複雑な感情になったのだ。
なんだろうなとしばらく考えてみると、性格占いで列挙されている項目の中には、嬉しく感じる内容と、ふーんと流せる内容、モヤッとする内容があるのだった。
 
例えば私の場合、以下の三つの項目が書いてあった。
・ 職人気質
・ 何かと比較しながら自分を理解していく
・ 楽しくないとサボってしまう癖がある
 
このうち、一つ目は嬉しく感じる内容だ。
私は昔から、何かを突き詰めていくことに憧れを感じる性質だった。
幼少期、父が観ていた「プロフェッショナル 〜仕事の流儀〜」を横目で観てかっこいい! と思っていたものだった。
 
二つ目が、ふーんと流せる内容だ。
確かに私は、何かと比較しながら客観的かつ分析的な思考をしがちかもしれない。
ま、そうでしょうね、といったところだ。
 
三つ目がモヤッとする内容だった。
「いや、私、ストイックなところあるよ?」と思ってしまった。
そもそも一つ目の「職人気質」という項目と矛盾してないか?
当たってないと感じる理由を目まぐるしく考えてみたりなどしたけど、モヤモヤするため、友人にLINEで聞いてみることにした。
 
「私って、楽しくないとサボる癖あると思う?」
 
「わかんないけど、中学生の頃、やりたがってたスポーツ大会実行委員になった時はめっちゃ働いてたけど、押し付けられた保健委員の仕事はサボってたよ?」
 
「そうだったんだ……」
 
自分では、どっちの仕事もそれなりにこなしていたと記憶していた。
でも、友人からすると仕事のモチベーションによっては、サボってたように見えてたらしい。
やりたいことは夢中で一生懸命やるし、突き詰めていくことも厭わない。しかし楽しくないと感じると、打って変わって少し手を抜いてしまうらしい。
一つ目の「職人気質」とも矛盾していなかったし、当たっていたとは。
 
「ひょっとして、モヤっとした項目って、自分からは見えてないけど他人から見えてる性質だったりするのかな……?」
 
記憶の彼方から、大学の授業で習った「ジョハリの窓」を思い出した。
これは自分の性質を以下の4種類に分類して理解する、という自己分析のモデルだ。
① 自分と他人が共に把握している自分の性質
② 自分は気付いていないが、他人は知っている性質
③ 他人は気づいていないが自分は知っている性質
④ 自分と他人が共に知らない性質
 
友人に聞いてみたことで、「② 自分は気付いていないが、他人は知っている性質」に、ひとつ気がついてしまったのだった。
 
ぐるぐると考えていたら頭が疲れてきた。
甘いロイヤルミルクティーを飲んで一息いれたその時、私は気づいてしまった。
 
「あれ、私、わりと楽しく自己分析してない?」
 
就活に向けて買った、自己分析の本を片手にウンウン唸っていたわたしはどこへやら。
カフェでふと手に取った性格占いの本で、するする自己分析が進むと思わなかったし、なんなら、「ジョハリの窓」もできてしまった。
 
この「性格占いを使って自己分析」は、自己分析をしようと思うと構えてしまう人にぜひやってみて欲しい。
① 簡単な生年月日の性格占いで占う。(ネットにはお金をかけなくても、お試しで占えるサイトがたくさんあります。本格的な占い師さんとかじゃなくてOK)
② そこに書かれている内容を、列挙する。
③ 各項目について、当たってると思うか否か、それは何故か、を考えてみる。
④ 家族や友人に性格占いの内容を共有し、当たってる? と意見を聞いてみる。
 
たかが性格占い、と思うけれどこれをきっかけに、私は自分の知らなかった自分に出会えた。
性格占いの本なんて、と軽んじている人も多いだろうし、男性はそもそも手に取ったことがない方も多いのかもしれない。
しかし、占いそのものではなく、「そこに書かれていることに対する自分の心の動き」の観察に重きを置いてみてはどうだろうか。
そう、性格占いはまるで「心のリトマス試験紙」のように使えるのだ。
 
そして社会人になった今、天狼院のゼミのため、2000字の文章をウンウン唸りながら書いている。
「あの時どう思った?」と自分に問いかけて、深掘りしながら文章を書いていく。
これまた、知らぬ間に自己分析をしているのだった。
 
就活に苦しんでいた自分へ。
どうやら、私は自己分析が好きだったようです。
 
 
 
 
***
 
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2023-07-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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