アル中の私が、とりあえず15か月間、断酒に成功している話
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:小城朝子(ライティング・ゼミ6月コース)
私はアル中である。いや、正確に言えば、アル中だった。
アル中は言ってみれば、世間をにぎわす不倫と同じである。
こんな関係は止めなければならないと頭の中では分かっていても、心が言うことを聞いてくれない。今日こそは別れを告げようと思っていても、会うと本能に負けてズルズルと付き合い続ける。
いや、まだ不倫の方がマシかもしれない。
不倫の場合は、いつか相手と一緒になれる日が来るかもしれないという、わずかながらの希望があるが、アルコールの場合は夢も希望も未来もない。
ただただ肝臓を酷使し続け、肝炎、肝硬変、肝臓癌と「肝臓」三段活用を経て、死に至る。だが、それが分かっていても止められない。それがアルコールの怖さである。
私がアルコールと泥沼不倫関係になったのは、今から8年前の頃。嫁ぎ先の会社を経営していたのだが、寝ても覚めても会社の事が頭から離れない。精神が病みつつあることは分かっていたのだが、私はメンタルクリニックの扉を叩かずに、脳内アルコール消毒という暴挙に走ってしまったのである。
若かりし頃は、お酒というよりお酒の雰囲気が好きで、よく飲んでいた。しかし、30代で司会や研修講師の仕事に就いてからは、お酒とはキッパリ縁を切った。
結婚式の司会などは何があっても穴を空けられない。台風・大雪なんのその。新郎新婦と事前打ち合わせをしているのは私しかいない。何があろうと、私がマイクの前に立たねば式は始まらない。
なので、健康管理が人生の最優先事項となり、お酒は一滴も飲まない日々だった。
そして、会社を経営するようになっても、その習慣は変わらぬままお酒を口にすることはなかった。
しかし、経営にストレスは付きもの。いつしか、とてつもないストレスと重責がストーカーのごとく、私にまとわりついてくる。会社のことを考えたくない。その一心で、現実逃避のため、8年前のある日、遂にワインを口にしたのだ。
ワインを選んだのは、若いころはワインが苦手だったからだ。ワインを飲むと、眠くなるか、トイレとお友達状態になるかの2択だった。
ならば今こそ、大チャンス。お酒に別れを告げてから15年。肝臓は限りなく新品状態、お酒の免疫力の有効期限は切れているはずだ。
このタイミングで苦手なワインを飲めば、すぐに目の前は回りだし、頭の中はメリーゴーランド。会社のことを忘れ、いわゆる「キマッタ」状態になるに違いない。
そんな大きな夢と希望を抱きながら、ワインを飲み込んだ。
が、何かが違う。
なぜかワインを飲んでも一向に酔わない。眠くもならなければ、具合が悪くなることもない。素直に美味しいと感じ、1杯が2杯、2杯が3杯……。
遂にはワインの資格まで取ってしまうほどワインにのめり込む。
そして、ほどなくして、ボトルを4分の3空ければ酔えることが立証され、ワインは私にとって酸素よりも必要なものとなった。
休みの日は顔を洗う前にちょっと一杯。
平日は定時の5時半になると、ちょっと一杯。
その後、仕事を続け、また一杯。
時には、朝、その日の仕事のプランを考え会社に着くと、既に仕事が終わっているという、グリム童話の「小人の靴屋」のようなこともあった。
酔った勢いで仕事をし、仕事をしたことさえ忘れるほど、更に酔っていたという、何とも情けない話である。
時には、酔っぱらった帰り道、歩道橋の最後の3段を踏み外し、骨折して半年間、松葉杖生活ということもあった。
インフルエンザで39度の高熱を出しても「身体の中からアルコール消毒だ」と、ワインで解熱剤を飲んでいた。
とても社員には言えない、数々の武勇伝満載の経営者なのである。
そんな生活を続けて、はや7年。
「何をやっとるんだ」と神の啓示か仏の情けか。
昨年の4月のある日、自宅でワインを飲んでいる最中に「お酒をやめよう」と突然、決意した。
実は、その頃、離婚の話が進み、会社を今年の7月31日で辞めることが決まっていた。
なので、最後ぐらいお酒に逃げず、正々堂々と正面から経営と向き合おうと思い直したのである。
とにかく、会社を辞めるその日まで、お酒は一滴も口にしない、そう決めた。
そして、飲みかけのボトルを一気に飲み干し、自宅にあるワインは全てクローゼットの奥底にしまい込む。
決意が鈍らないうちに、ユーチューブで断酒・禁酒に関する番組を見まくった。いかにお酒が身体に害をなすかという初心者向けの話から、芸能人のお酒にまつわる恐るべき武勇伝、アル中病棟の実態、末期の肝臓がんの画像まで、今、お酒を辞めないと身を持ち崩すと、心の底から恐怖を味わえる動画を3日にわたって見続けたのである。
特に、厚生労働省が発表している「アルコールを大量摂取すると脳が委縮する」という話には背筋が寒くなった。当然、認知症になる率も一気に爆上がり。ただでさえ、小さい脳みそが、これ以上小さくなってはたまらない。このままでは、近い将来、私は国からお墨付きの認知症患者になってしまう。
お酒の恐ろしさを頭と心に叩き込み、更に周囲にも協力してもらうために、社員や友人、飲み仲間に断酒の話をした。すると、皆、驚く驚く!!
驚かれると同時に、私はこんなにも酒飲みというイメージが染みついていたのかと深く反省する。
当然、周囲からは「一杯ぐらい、いいじゃない」と勧められるが、一杯が二杯、二杯が三杯、三杯が一本になる私。
「たしなむ」という美しい日本語が私には似つかわしくないようだ。「一杯ぐらい……」という甘美な誘いを丁重に断りながら、私の断酒生活はスタートした。
それから、時は流れ15カ月。1年以上、1滴も飲まずに何とかここまできた。断酒期間はあと20日と少し。7月31日の午後5時半に解禁予定である。
もちろん、お酒に逃げたい時も山ほどあった。でも、ここで飲んだら女がすたる。女に二言はないと、気持ちはサムライ。
最初は私に断酒などできるわけがないと、試すようにお酒を進めてきた友人も、いまや驚きの声を上げるだけ。しかし、一緒に断酒するという人は誰もいない。
それどころか、皆、「8月からは飲めるんだよね」と、8月以降の飲み会のオファーが後を絶たない、売れっ子状態だ。
そんな今、ある鮮明な画像が頭に浮かぶ。
気づけば天狼院カフェで、ワインを片手に三浦先生の講義を受けている。
しまいには、ワインをチェイサーにウィスキーをロックで飲みながら、三浦先生に抱き付いている。
そんな、恐ろしいような、嬉しいような絵が浮かんでは、今から冷や汗をかいている。
そんな、断酒解禁前の今日この頃である。
***
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