メディアグランプリ

「苦手は克服すべきなのか?」問題に挑む


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:メッツィンガー広美(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「あぁ……。今日もやっぱり来たか」
 
その予感は的中し、声が震える。
そのあとは、それを感じとり伝染するように手足まで震えた。
いつものパターンだ。
 
目の前の人たちは気づいているだろか。
私の心臓は今、外から見ても分かるほど、ドクドクと飛び跳ねているのを。
 
どうか気づかれていませんように……。
 
 
私は人前で話すのが大の苦手だ。
少人数、大人数は関係なく、人前で話すということ自体が苦手なのだ。
 
そういうと、「大なり小なりみんな苦手で、そう見えないだけ」と言われることもあるが、私はそれがまだ素直に受け入れられないほど、私は特別だと思い込んでいる。
 
これまで様々なセミナーに参加してきたが、カンペもなく1時間、2時間と人前で話ができる講師は本当に尊敬するし、何十人、何百人もの前でアドリブさえ入れる余裕には感動すらしてしまう。
 
そんなわけで、できるだけ人前で話すことを避けてきた私にとっては、今、ライティングに出会えたことは非常にラッキーで、ひたすらコツコツと書いてきた。
 
そして、それが認めてもらえる転機が最近訪れた。
マーケティングサポートとしてライティングも請け負っていたパートナー企業から、もっと本腰を入れて会社を支えて欲しいというありがたい要請を受けた。
会社の人たちを教育していく立場にもなるので、必要なスキルを養うセミナーまで揃えてくれるというラブコール。
 
二つ返事で引き受けた。
「はい、喜んで!」
 
が、しかし……
セミナーの一つの内容を知ると、なんと、数十名、いや100名ほどの人の前で発表するという実践があるではないか。
 
む、む、無理でしょ……。
無理だ……。
 
普段いただくタスクについては、できる限りはノーを言わないようにしている。
まずはやってみないと本当にノーであるか分からないから。
 
でも、今回ばかりは言った。
 
「本当に苦手なんです」
 
どうすれば伝わるだろうか。
 
「わ、私はマライアキャリーにはなれないんです」
 
つまり、この「人前が苦手問題」は私の中では生まれ持った才能の問題で、練習をすれば、慣れればどうにかなる、という問題では全くない。なので実践というものは無意味と言っても過言ではないのだ。
 
なんとか伝わっただろうか。
 
すると返ってきた返事は、
 
「ならなくていいよ」
 
と非常にシンプルなものだった。
 
マライアにならなくていい……?
意外なことだが、この簡単な言葉がストンと腑に落ちた。
嫌で嫌で溢れそうになっていたタンクの蛇口がひねられたように、ふーっと心が軽くなったのを感じた。
 
なぜだろうか?
 
その後こんな言葉が続いた。
 
「苦手を克服しに行くのではなくて、受け入れておいでよ」
 
それを聞いて思い出したことがあった。
 
私は高校生の頃、テニス部に所属し、絆創膏の日焼け跡が残るほどずっとテニスコートに立っていた。
私は左利きで、左手のフォアハンドで打った球は回転や方向が右利きプレーヤーとは違うので得だと言われ、「よし!」と思ったのも束の間。私はフォアハンドよりもバックハンドが得意という、何とも利点を生かしきれない状態だった。
それが受け入れられず、私はフォアハンドの練習に明け暮れたが、それでもバックハンドがずっと得意な自分にやきもきしていた。
 
でも、テニスを離れて思うことがある。
もっとバックハンドを極めれば良かったのではないか?
その結果、右利きのフォアハンドと一緒だっていいじゃないか。
極めれば、右利きプレーヤーのフォアハンドよりもっといい球が打ててかもしれない。
 
しかし、当時の若き私は「できない自分」が受け入れられず、執着していたのだ。
 
もしもあの時、フォアハンドが苦手な自分を受け入れてあげられていたら、「できない自分」を責め立て続けることもなく、私は他の練習にも時間を割いて、自分の強みに磨きをかけられていたのではないだろうか。
 
苦手は必ずしも克服することが大事なのではなく、苦手と認め受け入れてあげる方が大事なのだと思った。
 
危なかった。
40代になった今、また同じ轍を踏むところだった。
 
人前で話すのが苦手で、何とか克服しようとネット情報を漁り、それでも改善しない自分が悲しくなる、その繰り返しで、そこから大きな発展無く過ごしてきたではないか。
 
だから、私はセミナーに参加しようと意を決した。
 
「人前で話す問題」を克服しにいくのではない。
受け入れに行くのだ。
その先にまた新しい道が開けるかもしれない。
もしかしたら克服するというおまけが付いてくるかもしれない。
 
もしもどちらでもなかったとしても、そんな自分を受け入れ、他のことに熱中できる自分を愛することができれば、それで十分すぎるほど成功ではないか。
 
そう思うと、苦手に一度向き合ってみることも、少し気分が楽になった。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2023-07-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事