ポケモンカード捨てなければよかった。いや、捨ててよかったかもしれない
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:都宮将太(ライティング・ゼミ4月コース)
「20年前の自分に何を伝えたい?」
「過去をやり直せるなら何をしたい?」
このような言葉はよく聞く。
多くの自己啓発本に書いてあるだろうし、講演会に行けば誰かしら言ってそうだ。
私なら何を伝えるだろうか……。
いや、迷う余地なんてなかった。
もし、20年前に戻れるのなら、私は当時の自分にこの言葉を伝える。
「そのポケモンカードで遊ぶな! 傷や折り目など一切つけず、丁寧にケースに入れて保管しろ!」
最近、私はメルカリに登録した。
そこには、ポケモンカードを出品している人が大勢いた。最近のキャラクターの名前は分からないが、昔のキャラクターカードも多く出品されており、非情に懐かしい気持ちで眺めていた。
しかし、画面をスライドさせていく中で、懐かしいなんて気持ちは無くなっていた。
あの時のカードが、今では海外旅行に行けるほどの値段で売られている。
あの時、マクドナルドのハッピーセットのおまけとして付いていたカードは、スターバックスのコーヒーが200杯以上は注文できるほどの値段で売られている。
しかも、全て売却済みだった。
まさか、あの時遊んでいたポケモンカードが、ここまで高騰するとは思ってもいなかった。
当時小学生だった私は、そんな高価なポケモンカードをアスファルトに並べて友人とカードゲームをして遊んだり、メンコのように地面に叩きつけたり、さらには、手裏剣の真似事をして投げ飛ばしたりしていた。
非情に恐ろしい……。
私は次の休日、実家に帰った。
何故か? ポケモンカードを探すためだ。
「ポケモンカード保管しとる?」
実家に帰るなり、母親にそう言ったが、とても困惑していた。
当然といえば当然だ。
私が理由を話すと、母親も一緒になり、実家のタンスをひっくり返した。
そこで昔遊んだポケモンカードが発見された。
発掘隊が恐竜の化石を発見したときなど、こんな気持ちなのか。そんなことを考えていた。
「あった!」
嬉しくなり、母親と二人、テンションが上がった。
しかし……。小学生の頃に遊んだカード。綺麗な状態で保管されているはずもない。
薄々勘づいてはいたが、考えないようにしていた。
ほとんどのカードは既に処分されており、発見されたカードも折曲がり、角が破れているのもある。
おまけにマジックで名前が書かれているカードもあった。
私は落胆した。
メルカリで販売している高額カードと全く同じだが、状態はとてもひどかった。
だが驚くことに、状態が悪くても全く値が付かないわけではない。
予想以上に高値で売れ、福沢諭吉さんを一人、迎え入れることができた。
私はポケモンカードを売ったお金で母親とランチに行った。
「ご飯行くのも久々やね」
食事中、目の前の母親が言った。
確かにそうだ。就職してからというもの、一人暮らしを始めたこともあり、家族と過ごす時間がかなり少なくなった。
こうして、しかも母親と二人で食事をするなんて何年振りだろうか。
そう考えたら嬉しくなった。
少しお酒が入っていた我々親子の会話は以外にも盛り上がった。
「まだ結婚しないのか? 孫の顔が見たいよ!」
といった苦言や、
「たまには帰って来なさい。寂しいやない」
といったしんみりする会話もあった。
さらには、
弟が就職先の人間関係で悩んでいたこと。
父親が定年退職の準備を着々と進めていること。
今まで疎遠だった母親の妹(私の叔母)と、最近になって連絡を取り合っていること。
など、
驚きの事実も知った。同時に今まで何も知らない自分を恥じた。
「ポケモンカードはボロボロやったけど、豪華なランチに行けてよかったやん!」
母親が言った。確かにそうだ。
もし、ポケモンカードが何十万円で売れていたらどうだろうか。
こうして母親と食事に行っていただろうか?
いや、おそらく行っていない。
むしろ、他にカードがあるのでは? と思い血眼になってポケモンカードを発掘していたに違いない。
仕事も疎かにし、フリマサイトのアプリ中心の生活になっていたかもしれない。
今話題の転売ヤーになっていた可能性だってある。
そう考えると非常に恐ろしい。
「ポケモンカード捨てなければよかった」
と後悔していたが、それは違った。
捨ててよかったのだ!
そのおかげでこうして母親と二人で、何年かぶりに食事に行けた。
知らなかった家族の近況も知ることができた。
ポケモンカードを高額で売ることはできなかったが、それ以上に大切なことが学べた一日だった。
ちなみに、母親と食事して以降、積極的に家族と会話をする機会を増やした。
そこで分かった、
人間関係で悩んでいた弟は既に転職先を決めており、今では活き活きと仕事をしている。
父親は、定年後の趣味を見つけるため、今までよりも休日の行動量が増えている。一緒にゴルフの打ちっぱなしにも行き、そのあと二人で飲みにも行った。
父親がこれまでにどんな仕事をしていたか、どんな役職だったのか。そういったことも初めて知った。
母親から、「定年後ずっと家におられたら迷惑!」と言われ、必死に趣味を探しているという事実も……。
疎遠だった叔母とも若干の壁を感じつつも定期的に会っている。昔のように笑顔で話せる日も近いだろう。
ポケモンカードがもし高額で売れていたら、家族と過ごす時間を、カード発掘や転売のために使っていたかもしれない。
そう思うと恐ろしい……。
本当に思う。
ポケモンカード、捨ててよかった!
***
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