メディアグランプリ

藤波晋太郎のように打たれ強く


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:柏原健太郎(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「ボール! フォアボール」
 
私が少年野球チームに入ったのは小学校2年生の時だった。
3年生になり、本格的に試合に出るようになった。
対戦相手はだいたい年上だったので、ボコボコにされた。
打たれて負けるのであれば、納得いく部分もあっただろう。
しかし、私はピッチャーとして出て、フォアボールを出して自滅してしまうのだ。
 
コントロールが定まらないから自滅を繰り返す。
小学校低学年には、安定的にストライクを投げれるコントロールはまだ身についていない。
 
最近だと低学年の場合は、腰の高さくらいのティーにボールを乗せて、ティーボールという形で試合をしている。しかし、私が子供の頃はそのようなティーは無かった。だから、ピッチャーはボールを投げて、バッターがそのボールを打つ本来の野球の姿で少年野球をやった。
 
スタンダードな少年野球であるが、ピッチャーマウンドからホームペースまで約16m距離がある。安定的にストライクゾーンに投げることはかなり難しい。
 
当時の私はチームメイトの中では身長は高い方で、スピードボールを投げることができたので、多少の期待されていた。1年後のために今の勝敗を犠牲にして経験を積ませてくれていたのだろう。
 
プロ野球選手に成り切ってマウンドに上がる。
しかし、投げても投げてもストライクが入らない。
泣きそうになりながら投げては、ボールをコールされて、フォアボールを連発した。
 
子ども同士の遊びの野球の場合には、フォアボール無しでやるケースが大半だったので、フォアボール無しにすれば良いのにと思いながらも、少年野球チームの試合では無しにはならなかった。
 
フォアボールを出すと、1塁ランナーは盗塁する。
プロ野球を見ると、盗塁する場合、リードをしっかりと取り、ピッチャーが投げると同時にスタートを切り2塁ベースへ走る。投球をキャッチャーが捕球してすばやく2塁へ送球、ギリギリセーフになるか、アウトになるかくらいのタイミングになる。足が速い走者で、良いスタートが切れなければ、盗塁は成功できないのがスタンダードだ。
しかし、少年野球、特に低学年の野球になると、キャッチャーが2塁ベース上にいいボールを投げられることはほぼ無いので、盗塁をすると、99%成功することができる。
たくさん点を取られ、また、たくさん点数を取ることができるのが、低学年の少年野球だ。
 
泣きそうになりながら、フォアボールを出し、盗塁をされ、点数を取られるの繰り返し。
本当に泣きそうになりながら投げ続けた。
 
このような経験は記憶の奥底にしまわれていて、30年以上思い出すことは無かったのだが、最近、藤波晋太郎投手を見て思い出す。
昨年まで阪神タイガースに在籍していたが、今年からメジャーリーグに挑戦している。メジャーリーグに行き、投げてはストライクが入らずで、最大で防御率が14.40にまでなった。
オークランド・アスレチックスという球団に入団し、ストライクが入らず自滅するケースが多く、ファンやマスコミ、専門家から厳しいコメントが飛び交っていた。
ストレートは、160km/hオーバーを連発できるポテンシャルを持っている。
全力で投げては、ストライクは入らなかったが、とにかく投げ続けた。
投げては自滅しての繰り返し。
それでも、投げ続けることで、良い結果が出し始めている。
コントロールは以前に比べて安定してきてはいる。防御率も8点台にまで回復している。2023年7月24日時点で、36試合に登板して、5勝8敗3セーブ。
 
最近になって、期待値が上がり、トップを走るボルチモア・オリオールズへトレードされ入団した。
 
ストレートで立ち向かっていく。
四死球を出し、ホームランを打たれて、批判されても、気持ちで向かっていく。
しかし、撃沈される。
それでも、マウンドに上がる。
日焼けで真っ黒になりながら、汗が滴り、打たれてもめげない姿が何とカッコ良いことか。
どんな状況でも、真っ向勝負でストレートを全力で汗をちび散らかしながら投げる。
 
私とは桁違いにレベルが違う選手ではなるが、私と重ねることで心の支えになってくれている。
 
藤波晋太郎とこの頃の自分の経験を重ね合わせて、今、私が全力を出せているだろうか? 何か壁があっても、乗り越えようと努力できているだろうか? 前に進むことができているだろうか?
 
私が今、全力で投げ込んでいるものの一つが、ライティング・ゼミの課題だ。
この文章が16回目、最後の課題となる。
「最後から4回の課題提出で、3回合格できるようになることを目指してください」と先生から言われていたので、私は今回の課題に賭けている。
過去3回の課題のうち、2回の合格なのだ。
ギリギリの状態だ。
また、過去、16回、大半が何書いて良いのかわからない状況からスタートして、ギリギリのところで、書き終えて提出している。
文章を書いて完成させるという行為は、自分をギリギリの状態に追い込むことができないと、完成できないものなのだろうかと考えてしまう。
 
今、この限界ギリギリの状況で、ギリギリの立場を彷徨い続けて、ギリギリ目標を達成させることで、ライティングの何かのキッカケを掴み、成長できるのだと思う。
苦しいということは、成長できる可能性があるということだ。
 
泣きそうになりながら、ライティングする。
藤波晋太郎を見て、小学校時代を思い出す。
 
ピッチャーは、1球ずつしか投げることはできない。
1球ずつ、何百球も投げて、失敗し続けることで、誰も助けてくれないことを学び、自分がどうにかしなければ、敵を抑えることはできないし、試合は終わらないことを理解する。次回以降のマウンドにも上がれなくなることを悟る。
 
文字も1文字ずつしか書けない。1文字ずつ書いて、1文字の重みをかみしめる。
ライティングはとにかく書く。書き続ける。失敗し続ける。
その先に、目の前にある壁が見えてくる。
全力で壁に向かってボールを投げて、いずれこの壁を壊すのだ。
 
今回の課題で壊せる壁など薄っぺらいだろうが、厚い壁をぶち抜けるようなストレートを投げてみせる。
 
最後の一球を全力で投げた。
 
 
 
 
***
 
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2023-07-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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